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獣のテュラノス  作者: sajiro
トロントの森/飛燕の王のテュラノス編
59/147

true parrots、crow

「さ、三年って!」

 驚愕した新野の頭の中で高速に三年間が流れる。

 トロントの森を散策し、満喫して楽しい日々を送る。

「って絶対そんなわけねえー……」

 青い顔をして現実を思う、妄想は予想に変わり、そこでは邪龍王に殺される自分の姿。

「あ、あのそれなんとかなりませんかね。一応こいつ龍王だし、俺達狼王の紹介で来てんですよ」

「リュウオウ? 狼王といえばサルドゥ首都のナワバリヌシ様でいらっしゃいますね、それはそれは……」

 受付嬢は聞きなれない龍王という単語には首をひねるが、狼王と聞いて再び頭を下げた。

 それに神子も新野もほっと胸をなで下ろし――

「ですが申し訳ございません。決まりは決まりですので」

かけたが、受付嬢の完璧スマイルはそれを許さなかった。

 それから必死にくらいついてみたが鉄壁はいかなる攻撃も寄せ付けず微笑みを崩すことは無かった。

「くそ、どうする……」

「ご、ごめん。私が案内するはずだったのに」

 狼狽する新野と小声でごにょごにょと謝る神子にはさまれて、龍王は少し考える。

「じゃあ、会いに行くしかないな」

 その視線は森を突き抜けて青い空へと向いていた。


◆◆◆


 所変わって森の中心、遊園地フロアでは、

「ぶわー! めちゃっくちゃ面白っ! もう一回乗ってくる!」

走り出した兄弟の首根っこをブラウはすんででつかみ上げた。

「だ・め・だ! てめえなにしに来たんだ、新野たちと合流しねえとカラスの王に会えねえじゃねえか!」

「あー、そっかそれで来たんだっけ?」

「目的忘れんな! もう俺一人で行くぞ、はぐれたら一生の別れになりそうだけどな」

「あ? なんだこれ」

「ヒトの話を聞け!」

 般若の表情で振り返ると、ロットの頭には青と黄色が散らばった毛色のセキセイインコがとまっていた。

「お……」

「オイテメエラドコノシマノモンダ?」

「はあ?」

 無表情なインコから機械的に発せられた台詞に兄弟は訝しむ。

「コタエニヨッチャ、タタジャスマネエゼ」

「へえ」

 嬉しそうにロットは目を細める。

「どこにでもいんだな、こうゆうのって。ザルドゥを出て退屈になりそうだったけど、こりゃいいや」

 数分前にジェットコースターに大はしゃぎしてただろ、と内心つっこみつつブラウはインコに返答する。

「今この馬鹿が言ったように俺達はザルドゥ首都から来たが、てめえこそ何者だ?」

 低い声を受けてもインコの表情は崩れない。

「…………」

 というより、まるで聞いていないように嘴で羽の手入れを始めた。

「…………」

 いくら待ってもインコはもう話すことがなく、

「…………あれ?」

 風が不意に吹いた時、思い立ったようにインコは飛び去っていった。

 残された二人は完全に空気を読み間違えた気まずさだけ残されて、立ち尽くしていた。


◆◆◆


 青色と黄色の迷彩柄のインコは、窓から入室し黒い頭髪に着地した。

「お、どうだった?」

「言われたように言ってきてやったわよ」

「それで?」

 頭上のインコに黒い頭髪の主の男は問い返す。

 インコの口からは少女の声が流れる。それは無理矢理人語を話す時よりも随分と流暢だった。

 鳥の言語で会話をしながら、男は破顔する。

「インコのお前に大真面目にそいつら話しかけたってことか。ヒャハ、やべえな!」

「なんか臭ったし、ただの人間じゃないんじゃないの?」

「そうだろうな、龍王の連れなんだから」

「なによ、元はとれてんじゃない。じゃあなんでワタシにいかせたわけ?」

「ヒヒ、挨拶だよ挨拶」

 豪華な椅子に腰かけた男は、部屋の薄暗がりの中にいいっと笑った。

 劇場の幕のようなビロードを羽織った男の前髪は、一部が白い。


◆◆◆


「てことで、あんたたち、カラスの王がどこにいるか吐きなさい!」

 宙で翼を広げた神子の前には黒い群体がいた。

 警備に散っていたカラスを半ば無理矢理かき集めた。

 その様子を冷や冷やと新野は地上から見上げている。

 カラスたちはいかにも不満げで、なのに神子は高圧的な態度なので、喧嘩になるのではないか。

 新野の隣ではのんびりと龍王が草原に座っている。

「おい嬢ちゃんよ、急になにかと思ってそれかよ」

「そうよ」

「ったく、職務妨害だぜこれは。あとでどやされたらどうしてくれる」

「そうだそうだ!」

「おとなしく三年待てよ!」

 カラスたちのさわぎたてる声を一身に受ける神子は、腕を組んだ。

 鎖骨の間に光が灯る。逆巻く風のしるしが顕現する。

「ツバクラメ」

 翼は光の粒となって形を崩し、それらは少女を囲むように高速で宙に散らばる。

四十スーシー! 像台风一样刮起来シャンタイフェンイーヤングアチライ!」

 振り上げた彼女の細い腕と呼応して、光りは渦となって少女とカラスの群体を包囲した。

 まるで台風のように飛来するその輝きに照らされながら、おののくカラスたちに飛燕の王のテュラノスはくすりと微笑む。

「無駄なこと言ってないで、さっさと答えてよね」

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