無題詩9
芥川は睡眠薬で死んだ。
太宰は入水で逝った。
三島は日本刀で腹を割いた。
ヘミングウェイはライフルで脳を破壊した。
僕はどうやって自殺するのだろう?
屍になればそこにあるのはカラスの群れ。
啄む死肉はおいしいか。こっちの死肉は甘いぞ。
繰り返される自殺と転生。
輪廻に従いクルクル廻れ。
それが原罪、そこが現在。
機械少女はどうやっても自殺はできない。
それは悲しいことか、嬉しいことか。
夢見た現世はこんなにも苦しく狂っていた。
規則に服してクルクル目を回せ。
まるで地獄絵図のようだ。
ゴブラン織りが悲鳴をあげて、
ビロード織りが裂帛為い為い暴れだす。
「ハレルヤ」「ハレルヤ」「ハレルヤ」と、
いくら叫んでも天から天使は降りてこない。
畸形の太陽が異形の月と交わって、
地球そのものが自殺する。
生き残った者は悪の華。
そこにあるのは肉体の悪魔か。
アンドロギュヌスに支配され、
だれもが衒学趣味に走る。
そのような社会で生き残るのは、
硝子の人形とゴミの王。
だから僕はこの名もない詩を叙するのだ。
だから僕はこの意味もない死を包むのだ。
けれど僕は自殺はできない。
けれど僕は自害はできない。
それだから代わりに僕は優しく心を殺した。
首を絞めるようにじわじわゆっくり殺した。
それが救い。それだけが救い。
嗚呼! これでようやく救われる。