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創作能楽小説『黒椿』 翁付き五番立て  作者: 堀吉 蔵人


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狂言・其の三 化け猫


〔次第〕


(ふる)軒端(のきば)に ()(ふた)つ、

 ()けて(ひさ)しき ものぐさ(ねこ)


〔地〕


 依頼。「空き家に、化け猫が出る。危ないから、祓ってくれ」と。

 行ってみる。縁側で、年寄りの三毛が、腹を出して、寝てた。尻尾が、きれいに、二股。猫又だ。


 「斬るのかい」猫が、薄目を開けて、言った。「まあ、その前に、煮干しでも」

 食えない爺猫だ。百年は、生きてる。化けたのも、長生きしすぎた、それだけ。誰も襲わない。ただ、寝て、食って、たまに、化ける。


 隣で、真壁センセが、震えてた。

 「尾が、二つ……江戸の随筆の、記録、そのまんまだ……」目つきが、完全に、いっちゃってる。ノートに、すごい勢いで、書いてる。

 「センセ、よだれ」

 「ぼくが! 引き取ります! 研究の、ために!」

 猫又が、にやり、とした。——してやったり、の顔。


 あたしは、刀を、納めた。無害だし、金にも、ならない。なにより、この爺を斬ったら、センセに、一生、恨まれる。

 「飼い主、決まったってさ。よかったね」

 「にゃあ」と、猫又。煮干しは、結局、センセが、買いに行かされた。


〔締めの都々逸〕


 尾は二つでも

 爪は研がずに

 化けて極めし

 昼寝かな

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