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自由は、いつも用意されていた  作者: 阪井秋


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桐原涼真の選択肢

桐原涼真きりはら・りょうまは、

 自分が「面倒見のいい人間」だと思われていることを知っている。


 昔からそうだった。


 気が利く。

 察しがいい。

 相手が何を求めているか、先に分かる。


 それだけの話だ。


 志音が何も言わずに立ち止まっているとき、

 どちらに進みたいかを聞く必要はなかった。


 彼女が困らないほう。

 選んで後悔しないほう。


 その二択に絞って、

 残りを差し出せばいい。


 ――それを、親切と呼ぶ人もいる。


 志音は、昔からそういう子だった。


 自分から強く主張しない。

 欲しいものがあっても、

 「別に、どっちでもいい」と言う。


 その言葉を、

 本気で受け取る人間は多い。


 涼真は、違った。


 どっちでもいい、というのは、

 どちらかを選びたいけれど、

 決める理由が見つからない、という意味だ。


 理由を用意してやればいい。


 そうすれば、

 志音は安心して選ぶ。


 高校に入ってからも、

 その関係は変わらなかった。


 進路の話。

 仕事の話。

 将来の話。


 志音は、

 「どう思う?」とは聞かない。


 ただ、黙って話を聞く。


 涼真は、

 可能性を並べる。


 メリットとデメリット。

 現実的な線。

 無理のない選択。


 どれも間違っていない。


 だから、

 彼女は迷わない。


 涼真は、

 志音に何かを強要したことは一度もない。


 選ばせている。


 いつも。


 それが重要だった。


 選択肢の中に、

 「自分がいなくなる未来」を

 含めなければいいだけの話だ。


 無理に消す必要はない。


 最初から置かなければいい。


 それを、

 卑怯だと思う人もいるかもしれない。


 でも涼真は、

 そうは思わなかった。


 危険な目に遭わせない。

 余計な不安を与えない。

 失敗しない道を歩かせる。


 それは、

 守っているということだ。


 志音は、

 守られることに慣れている。


 だから、

 拒まない。


 最近、

 志音の周囲が少し騒がしい。


 視線が増えた。

 噂も増えた。


 モデルの仕事が増えれば、

 当然の流れだ。


 中には、

 行き過ぎた関心を向ける人間も出てくる。


 それも、

 想定内だった。


 起きるかもしれないことは、

 起きる前に考えておく。


 それだけだ。


 涼真は、

 志音の横に並ぶ。


 一歩前に出ることはしない。

 一歩後ろにも下がらない。


 隣。


 それが、

 一番自然な距離だ。


 誰も疑わない。

 誰も止めない。


 志音は、

 自分で選んでいると思っている。


 その感覚を、

 奪うつもりはなかった。


 自由だと思えること。

 安心できること。


 それが、

 彼女にとっての幸せだ。


 少なくとも、

 今は。


 涼真は、

 次の予定を頭の中で整理する。


 撮影の日程。

 移動手段。

 帰る時間。


 志音が、

 迷わなくて済むように。


 考える必要がないように。


 選択肢は、

 もう用意してある。


 ――あとは、

 彼女が選ぶだけだ。


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