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1 最期のとき、貴方は。
ーーーーー あぁ、どうしてこんなことに。
人並みの幸せだけを願っていたのに。
貴方以外は要らなかった。
貴方を心から敬愛し、慈しみ、気にかけ、
一人の異性として愛していたのに。
誰よりも貴方に好かれる自分でありたかったのに。
言い訳じみた言葉しか出ない、嘆くことしかできない。
まだ薄暗い教会の中、
ぐちゃり、ぐちゃ。じゅる、じゅる。
ぐちゃぐちゃり。
液体の音だけがむなしく響く。
今はただ、貴方の首筋から滴り落ちる深紅の血から
ひとときも目が離せない。
もうじき朝になってしまう。
「あぁ、もういいんだっけ…」
自暴自棄になったまま、もう動かない"物"と化した
最愛の人を抱きしめた。
朝日が、昇る。