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84話 亡霊撃破…?

 国王はその不気味にほほ笑む骸骨に近寄り、声を潜めて呟いた。


「ヴァルティエル…君はまさか、100年前の…」


 しかし、骸骨はその言葉を遮るかのように、軽い調子で返した。


「さっ!この女性、どうしましょうか?」


 骸骨は震える女盗賊を見下ろし、近くに落ちていた縄を手に取ると、手際よく縛り上げた。

 女は声も出せず、怯えた表情で骸骨を見上げている。その様子を気にするそぶりもなく、骸骨は縛り終わった女を担ぎ上げると、国王の方に向き直り静かに告げた。


「一度、王宮へ戻りましょう、国王様。私…いや、お…僕が案内しますよ!」


 骸骨のいつもの調子に戻った言葉と笑みは、先ほどの死神のような姿を見た後だからか、より不気味さを感じさせた。国王は微かに眉をひそめたが、それに応えるように骸骨が振り返る。


「カイル君も!早く!」


 しかし、俺は首を振って拒否した。


「いや…まだ一人残っています。この死体の中にスキンヘッドの男がいない。つまり、部下を戦わせて自分だけ逃げたんです。俺はあの男を追います。あなたは国王を無事に王宮へ届けたら、そのまま待機してください。またいつ国王が狙われるかわかりません。」


 骸骨はしばらく骨を鳴らし、腕を組んで考え込むような仕草をした。


「一人で大丈夫なの?僕の予想だと、あのハゲおじさんはかなり強いよ。今の君以上にね。」


 俺はその言葉を軽くいなすように、短く答えた。


「大丈夫です。」


 骸骨は肩をすくめて笑った。


「まぁ、君が頑なに隠している『魔法』を使えばどうなるかは分からないけどね!」


 その言葉に一瞬驚愕したものの、表情に出さずに答えなかった。そして、俺たちはその言葉を最後に二手に分かれることとなった。国王は眠る王女を抱え、骸骨は捉えた女盗賊を引きずりながら王宮へと向かう。


「さて…あのハゲちゃびんはどこに行ったかな…」


 死体が散乱する部屋を見回しながら、俺は手始めに木箱を覆っている布を剥ぎ取った。中には赤い鉱石が大量に詰められている。触れてみると鉱石は熱を帯びており、まるで静かに脈動しているかのようだった。直感的に、これに火をつければ爆発することを確信する。


 他の木箱を調べると、武器や防具、保存食、採掘道具などが詰め込まれていた。周到な準備が整えられているのに、骸骨というイレギュラーによって全てが台無しにされた盗賊団が、少しだけ哀れに思えた。しかし、その感情もすぐに消えた。


 探索を続けると、またしても木箱の下に隠し通路を見つけた。


「好きだな…隠し通路。」


 苦笑いを浮かべつつ、通路へ降りる。そこは暗く、天井を支える支柱もない大雑把な横穴が続いていた。屈みながら進むと、次第に小さな明かりが見え始める。その光が徐々に大きくなり、ついに穴を抜けると、全てが木造の暖かみのある部屋にたどり着いた。


 だが、それ以上に目を引いたのは、ちょうどその部屋の扉を開けて出ようとしているスキンヘッドの男だった。


「ちっ!」


 男は俺を見るや否や、勢いよく扉を閉めて逃げ出した。


「待て!」


 俺は男を追いかけるべく扉に飛びついた。しかし、扉を開けた瞬間——


「カチッ」


 小さな音が聞こえ、直後に扉の付近で爆発が起きた。


「うわっ!」


 咄嗟に魔法で水の膜を生成し、爆風を防いだものの、勢いで部屋の後方に吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。座り込んだ俺の頭に何かの破片が落ちてきた。


「痛てっ…なんだ?」


 拾い上げると、それは赤く熱を帯びた鉱石の破片だった。先ほど木箱で見つけたものと同じだった。


「まさか本当に爆発するなんて…やっぱりこれが大聖堂を爆破した鉱石だな。」


 立ち上がり、埃を払いながら再び男を追う。逃げる男は魔法を放ちながらも、その精度は低く、壁に当たるだけだった。


「待て!お前たちはもう終わりだ!大人しく捕まるんだ!」


 俺が叫ぶが、スキンヘッドの男は振り返りもせず笑いながら叫び返す。


「へっ!ガキ一匹で何ができる!俺にはまだ『アレ』があるんだよ!」


 意味不明なことを口走りながら逃げ続ける男。その背中を追いながら、俺は静かに気を引き締めた。


 俺はしばらくスキンヘッドの男を追い続けていたが、気づけば道幅が広がり、大きな広場に出ていた。広場の中央には奇妙な文様が描かれており、空間全体に不気味な気配が漂っている。


「ここは…!」


 俺が警戒しながら周囲を見渡していると、スキンヘッドの男は広場の壁際にあるレバーに手をかけ、勢いよく引いた。


「へへへ!これでお前は死ぬ!肉片一つも残らねえ!」


 男は叫ぶと、不気味な笑みを浮かべたまま逃げ出した。その瞬間、広場全体に響き渡る轟音とともに地面が激しく揺れる。俺が男を追おうと一歩を踏み出したその時、視界の外から何かが飛び込んできて、俺の足元に突き刺さった。金属が石を貫く音が耳に残る。


「…鎌?」


 俺が足元の大きな鎌を見下ろしていると、どこからか何かを引きずる音と重々しい足音が聞こえてきた。その音には聞き覚えがある。骸骨と初めて会ったあの廊下で聞いた不気味な音だ。


 後を振り向くと、そこにはいつ現れたのか、大きな檻が出現しさらにその檻の扉の前には黒いローブをまとった巨大な存在が立っていた。


 その体格はガイコツよりも遥かに大きく、全身を覆うローブの隙間からは白い骨がところどころ覗いている。だが、その動きにはガイコツのような軽妙さや人間らしさは全く感じられなかった。代わりに、ひたすら冷酷で機械的な『殺意』を漂わせている。


「亡霊…!」


 骸骨が言っていた『意思も記憶も持たない殺戮者』――それが目の前にいる存在だと直感で理解した。


 亡霊はゆっくりとした動作で腕を上げる。その腕は異様に長く、指先はまるで刃物のように鋭い。すると、俺の足元に突き刺さっていた鎌が一瞬で姿を消し、次の瞬間には亡霊の手に握られていた。


「なんだ…!」


 俺がその異常な現象に驚いていると、遠くからスキンヘッドの男の声が響く。


「そいつを倒せるもんなら倒してみろ!俺はその間におさらばさせてもらうぜ!」


 男は高笑いを残し、広場の奥に続く暗闇へと消えていった。俺は亡霊から目を離すことができない。一歩ずつ、ゆっくりと、しかし確実に近づいてくるその姿は圧倒的な威圧感を放っている。


「こいつ…強すぎる。けど…やるしかない!」


 俺は杖を構え、瞬時に魔力を込めた。


氷弾(フリーズ・ショット)!」


 氷の弾丸を亡霊の足元に向けて次々と放つ。氷の弾丸は亡霊の足を包み込み、瞬時に地面と一体化させた。亡霊は動きを止め、ゆっくりとこちらを見つめるように首を傾ける。


「今だ…!」


 俺は次の魔法を準備し、詠唱を終える。


炎爆(フレイム・バースト)!」


 巨大な炎が亡霊を直撃し、広場全体が爆発の光と熱に包まれた。衝撃で俺は後ろに吹き飛ばされ、壁際でようやく踏みとどまる。煙が立ち込める中、俺は杖を握る手に力を込めながら、慎重に様子をうかがった。


「倒せた…のか?」


 爆心地を見つめながら呟く。しかし、その疑問はすぐに確信へと変わった。亡霊の体は粉々に砕けて散らばっている。だが――


「まだ動いている…!」


 散らばった骨の破片が小さく脈打ち、不気味な光を放ちながら微かに動いている。それは再生の兆しではなく、ただ存在を維持しているだけのようだった。しかし、それだけでも十分に異常だ。


 俺は破片の一つを拾い上げ、目を凝らす。その表面には奇妙な文様が浮かび上がっていた。まるで何かの封印のようにも見える。


(こいつを完全に止める方法があるはずだ…!)


 俺は次の手を考えながら、亡霊の残骸に囲まれる広場の中央で立ち尽くしていた。



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