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67話 冒険者ギルド

 ぼんやりした思考のまま、気づけば次の街『デイヴス』に到着していた。

 この街は通称『魔具の街』と呼ばれ、ダール国随一の魔具製造で知られている。


 目に入る建物の多くが魔具の仕組みを活かしており、電灯や家具、さらには看板までもが魔具で動いているらしい。魔具への知識はそれほどないが、その街並みには思わず感嘆の声が漏れる。


 ボーダの街とは打って変わり、デイヴスは賑わいを見せていた。人通りが多く、特に冒険者らしき人々の姿が目立つ。

 どうしてこんなに冒険者が多いのか気になったが、深く考える余裕もなく、俺は雑貨屋を目指して歩き始めた。


 道中、親切な地元民に教えてもらいながら辿り着いた雑貨屋は、活気に溢れていた。


 棚にはポーションや地図、各種の冒険用品が綺麗に陳列されている。

 品揃えも良く、価格もリーズナブルだ。


 俺は細部まで描き込まれた新しい地図といくつかの回復ポーションを購入することにした。これらで銀貨7枚。ボーダで購入した埃を被った解毒ポーションが頭をよぎり、つい「ぼったくりやがったな」と口を滑らせてしまった。


 雑貨屋を出るとちょうど小腹が空いてきた。

 腹を満たしつつ情報収集も兼ねるべく、この街の冒険者ギルドに向かうことにした。


 ギルドに到着すると、入口の前には多くの冒険者が行き交っている。中に入るとさらに活気は増し、笑い声や話し声が飛び交い、酒や料理の匂いが鼻をつく。その賑やかさに一瞬気圧されそうになるが、意を決して扉を開いた。


 ガヤガヤと賑わっていた室内が、扉を開けた瞬間だけ静寂に包まれた。視線が一斉に俺に向けられる。だが、それも一瞬のことで、すぐに冒険者たちはまた自分たちの話や飲みに戻った。


 俺はギルド内を見渡し、孤立していて、なおかつそこまで強そうには見えない冒険者に目をつけた。薄い金髪を後ろで束ねた長髪の男が、一人でカウンターの隅に座っている。


 俺はその男の席へ向かい、声をかけた。


「すみません、ちょっとお聞きしたいことが……」


 男は顔を上げ、怪訝そうな表情を浮かべた。


「あん? ガキが俺に何の用だ?」


 俺が尋ねようとすると、男は面倒くさそうにあしらう。だが、俺は昔冒険者をしていた父から聞いた『冒険者との会話術』を思い出し、少し微笑んでこう言った。


「まぁまぁ……すみません! この人に酒を!」


 俺が酒を奢ると、男の態度は一変。


「気が利くじゃねぇか!」


 豪快に笑う男に、俺は豆のスープを飲みながら首都への道を尋ねた。


「俺、ノワラから来て…首都に行きたいんですけど、足がなくて……この街で馬車を貸してくれる場所はありますか?」


 男は木製グラスを置き、少し首をかしげながら答えた。


「その前に、お前さんギルドカード持ってんのか?」


「いえ、持ってません。」


 男は呆れたように笑いながら酒を飲み干す。


「残念だが、ギルドカードがないと首都の門は越えられねぇぜ。あそこは身分が分からねぇ奴は通さねぇからな。」


「でも、ギルドカードってここで作れるんですよね?」


 俺が楽観的に言うと、男はまた笑い出した。


「甘ぇな。お前みたいなガキがカード作れるほど、ギルドは優しくねぇよ。」


 そうだった。俺はまだ12歳。世間一般では冒険者としてやっていける年齢には見えないだろう。


「……ちょっと試しに聞いてきます。」


 俺は男に軽く礼を言い、カウンターに銅貨5枚を置いて席を立った。


「頑張れよ~!まぁ無理だと思うがな!」


 男は豪快に笑いながら手を振る。その背中を振り返りつつ、俺はギルドの受付に向かった。



 俺は受付に立っていた若い女性に話しかけた。


「すみません、ギルドカードを発行してもらいたいのですが」


 俺の言葉に、女性は一瞬驚いた表情を見せたあと、まるで迷子の子どもを相手にするような笑みを浮かべた。


「子どもがこんなおっさん臭いところに来ちゃダメよ~。お母さんはどこ?」


 女性は俺を迷子だと思い込んでいるらしい。その時、背後から声が飛んできた。


「おいおい、そりゃひでぇだろ! 誰がおっさん臭ぇだよ!」


 酒を煽っていた冒険者の一人が豪快に笑いながら叫び、それに場の全員が大声で笑い出した。


 俺はその賑やかさを無視して、受付の女性に向き直り、真剣な表情で言う。


「あの、本当にギルドカードが欲しいんですけど」


 その言葉に女性の表情は少しだけ硬くなった。彼女は気まずそうに目を伏せ、申し訳なさそうに答えた。


「ごめんなさいね……君みたいな子どもにはカードは発行できないの。冒険者になるのは危険すぎるから」


 その言葉が俺を心配してのものだというのは分かった。それでも、引き下がるわけにはいかない。俺は少し肩を落としながらも食い下がることにした。


「でも、ギルドカードがないと首都に行けないんです!どうしても必要なんです!」


 俺の真剣な眼差しに、女性は一瞬だけ困ったような表情を浮かべた。だが、すぐに首を横に振る。


「気持ちは分かるけど、規則なの。ギルドカードは簡単に発行できるものじゃないし、試験だって必要よ。それに、未成年の場合は保護者の同意書が――」


 説明を遮るように、先ほど俺が酒を奢った冒険者の男が酒を片手にカウンターへと近づいてきた。


「おい、受付嬢! この坊主、ただのガキじゃねぇぞ!」


 男は俺の肩に手を置き、俺を庇うように言葉を続ける。


「見た目はともかく、このガキは一人でノワラ国からここまで来たんだ。ノワラっていえば今は荒くれ者が多い国だろ? そいつを無事に抜けてきたんだ、ちょっとは見直してやれよ!」


 受付の女性は俺と男を交互に見たあと、少しだけ眉を寄せて考え込むような顔をした。


「……特別な事情があるなら、一度ギルマスに相談してみるといいかもしれないわ」


「ギルマス?」


俺は思わず聞き返す。


「そう。このギルドの責任者よ。本当はギルドマスターって言うの。あの人なら特例を認めるかどうか判断できるわ。普通なら門前払いだけど……君のその真剣な目を見ていると、何か事情があるような気がするから」


 受付の女性は小さく微笑んでそう言うと、ギルドの奥を指差した。


「今ちょうど執務室にいるはずよ。話だけでも聞いてもらったら?」


 俺は軽く頭を下げて礼を言い、ギルドマスターのもとへ向かうことにした。

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