60話 魔力測定
謁見を終えた俺たちは、大きな食事場へと案内された。
天井が高く、巨大なシャンデリアが輝くその場所はまるで物語の中の宴会場のようだった。
時刻は昼過ぎ、どうやら昼食が用意されているらしい。
席に案内されると、豪華な食事が次々と運ばれてきた。柔らかな肉に、香ばしいパン、色鮮やかなスープに加え、デザートまで用意されている。どれも最高の一品で、俺は心の中で感動しながら一つ一つ味わった。
「すごいなこれ!ここで作ってるのか?」
「料理人がこれだけ手間をかけて作ったんだろ!」
周りの生徒たちも豪華な料理に舌鼓を打ちながら話し合っている。ノアも目を輝かせながら笑顔で次々と料理を平らげていた。
昼食を終えた俺たちは、次に修練場へと案内された。
学園でも何度か見たことがあるような場所だったが、ここは規模も設備も一線を画していた。
周囲の訓練用の人形や色々な装置が並ぶ中、場の中央に目を引く巨大な赤い石がそびえ立っている。その中心には大きな半円形のメーターのようなものがはめ込まれていた。おそらく、あの石が魔力測定器だ。エルドリックの所に居た時、同じようなものを見たことがある。
「只今からここで皆様の魔力測定および適正魔法の検査を行います」
一人のメイドが説明を始める。その言葉に、俺の胸は期待と緊張で高鳴った。
(やった!ようやく俺の適正魔法が分かるんだ!)
順番に名前が呼ばれ、生徒たちは測定器の前で自分の魔力量を測っていく。測定の結果が出るたびに歓声や驚きの声が上がる。
「メーターの針が半分を超えたぞ!」
ちなみに、王城の魔力測定器は市販されている測定器とは魔力を計る精度が異なっているらしく、市販品の測定器と王城の測定器の単位は、同じ1単位でも天と地ほどの差があるのだとか。
市販品の物で計ったときにメーターの針が半分を超えても、この王城にしかに測定器ならば針はビクともしないだろう。と、先程の謁見で国王が言っていた。
(分かりずらいな……)
すると、前の方で歓声が上がった。
「は、針がマックスまで到達した…!?」
測定係の兵士が驚きの声を上げたのはノアの番だった。周囲がざわめく中、ノアは嬉しそうに笑顔を浮かべている。
「えへへ!カイル!私すごいでしょ!カイルより魔力量多いんじゃない?」
自慢げな表情で俺に向かって話しかけるノア。
「すごいですね!ノアならきっとすごい魔法使いになれますよ!」
俺も素直に褒めつつ、自分の番が近づいてくるのを感じていた。
(魔法を習い始めてちょうど6年。俺はどのくらい成長できているだろうか……)
そんなことを考えながら、ついに俺の名前が呼ばれる。緊張しながら測定石の前に歩き出した。
「この石に手を置くんだ。」
測定係の指示に従い、俺は目の前の赤い石に手を置いた。触れた瞬間、石が眩い光を放ち、不気味な機械音が周囲に響き渡る。
その瞬間、金属が折れる音が響いた。
「……?なんの音だ?」
その音の出どころを探す測定係だが、何も見つからない様子だ。測定係は首を傾げる。
「なんなんだ?」
しばらくして、測定係は諦めたように別の測定係に叫ぶ。
「おい、測定結果はどうだ?」
――しかし、答えがない。
測定器の後ろでメーターの見ているはずの測定係は、目を見開いたまま動かない。
「おい!一体どうした?」
もう一人の測定係が、怒号に近い声で叫ぶと、メーターの前に居た測定係は、正気を取り戻したように叫んだ。
「そ、測定不能!測定不能です!!針がメーターを超え……破損しました!」
その言葉に、その場にいた全員が驚愕した。もちろん俺も例に漏れず、急いで測定器の後ろのメーターを見に行く。
すると、メーターの針は先ほどまでの真っ直ぐな縦線でなく、まるで強大な力に捻られたように、歪に歪んでいた。
「な…!これは!?」
俺が驚きを隠せないでいると、いつの間にかエレーナ王女が測定器付近に立っていた。
「どうしたのですか?」
「エレーナ王女!!」
一人の兵士がエレーナ王女に駆け寄り、何かを話している。
兵士が話を終えると、エレーナ王女は少し笑みを浮かべ、周囲を見渡して声を上げた。
「このエレーナ・ノワラが断言します。今、測定器の針が破損したのは、彼……カイル・ブラックウッドの魔力量が膨大ゆえ、この測定器では測定できず、針が一周してしまったのでしょう。」
その言葉に場が一瞬静まり返り、次第にざわつき始める。
「測定不能な魔力量だというのか…?」
「そんなことあり得るのか?」
「いや、10年前にも同じことがあったとか…」
「いや、あれは古い測定器を使ったからだったろ?」
様々な声が飛び交う中、遠くから国王が騒ぎを聞きつけて姿を現した。
「なんの騒ぎだ?」
エレーナ王女が国王に詳細を説明する。その内容を聞いた国王は驚きつつも興味深そうに俺を見つめた。
「ふむ…これが誠ならば、特別な検査を行う必要がある。」
国王は兵士たちに向き直り、「適正魔法の検査を即座に準備しろ」と命じた後、俺に優しく声をかけた。
「カイル・ブラックウッド。君は私と共に来なさい。」
国王は手招きをする仕草を見せた。俺は少し戸惑いつつも素直に従うことにした。
「ノアたちは他の検査を頑張ってくださいね!」
「分かった!なんだか分からないけどカイルも頑張ってね!」
そして、俺は国王の背中を追った。
国王に導かれるまま、俺は豪華な絨毯が敷かれた廊下を進んだ。高い天井には壮麗なシャンデリアが輝き、壁には歴代の王たちの肖像画が並ぶ。その威圧感に押されそうになりながらも、俺は何とか平静を保っていた。
やがて国王は豪奢な一室へと俺を案内し、椅子に腰掛けるよう促した。
「カイル君、君には何か特別な秘密があるのかのしれない。その理由を私と共に探ってみようではないか」
俺が頷くと、国王は真剣な表情で続けた。
「君の魔力量が膨大すぎて測定不能だったという事実。これはただの偶然ではない気がする。君は生まれながらにして何かを宿しているのではないか?」
国王のその真意を突くかのような言葉に俺は息を呑む。(まさか転生者だとは言えない…でも、この力の秘密は自分でも分からない。)
しかし、俺の中には一つの可能性が生まれていた。俺の中にある3つの魂のことだ。
国王は俺の表情をじっと見つめると、柔らかい口調で言った。
「焦る必要はない。だが、この国にとって…君の存在は重要な意味を持つかもしれない。これから君には特別な検査を受けてもらう。」
「特別な検査…ですか?」
「そうだ。私の信頼する宮廷魔法使いたちが君の力を測る。そして君も知らない君の秘密を知ろうというわけだよ。」
こうして俺は、予想外の形で国王から特別な検査を受けることになった。




