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52話 モード

「ガキが…あまり調子に乗るなよ。」


 男が怒りに満ちた声で叫ぶ。


 そしてこれまでの動きとは明らかに違う行動を見せた。剣先に青白い光が渦巻き始め、次第にその輝きが異様なほど大きく膨れ上がっていく。


(なんだ…!?何をしている!?)


 俺はその光の異様さに息を呑む。それは単なる魔力の光ではなく、何か生物的な、いや、禍々しい生命を持っているかのようだった。


 男は笑みを浮かべながら剣を掲げる。


「この“形態(モード)”はな…あまりコントロールが効かねぇ。だからどうなるかは、俺にも分からねぇんだ。」


「モード?」


 俺が問い返すと、男はニヤリと笑う。


「お前に教える義理はねぇ。…だが、一つだけ忠告しといてやる。この剣を喰らったら、どんな魔法だろうが跡形も残らねぇぞ。」


 言葉の最後に合わせるように、剣先から奇妙な音が響き始める。まるで空間そのものが引き裂かれるかのような、不協和音じみた音だ。


「吸収…してる?」


 俺は目の前の現象に困惑するが、すぐに気を取り直す。やるべきことは一つ――攻撃を止めることだ。


炎弾(フレイム・ショット)!!」


 杖から放たれた巨大な炎が、一直線に男へと向かって飛んでいく。

 その炎は俺がこれまで放ったどの魔法よりも強力で、灼熱の熱気が周囲に広がった。


 しかし、男は微動だにしない。避ける様子もなく、むしろ剣を突き出し、炎をその剣先で受け止めた。


 ――ズズッ…。


「なっ…!?」


 俺の放った炎が、剣に吸い込まれていく。まるで水が砂漠に染み込むように、炎のエネルギーが跡形もなく消えていくのだ。


「驚いたか?」


 男の目が怪しく光る。


「この剣は、魔力を喰らう。炎だろうが雷だろうが、俺を倒すためのエサにしかならねぇんだよ!」


「くっ…!」


 俺は一瞬、思考が止まった。俺の魔法は男にとって無力どころか、逆に強化してしまうだけなのか…?


「さて、そろそろ終わりにしようぜ。」


 男が剣を振り上げる。剣先からさらに青白い光が放たれ、地面を揺るがすような衝撃が走った。


「この一撃で、全部消し飛ばしてやるよ!」


 俺は反射的にカリーナの方を振り返る。まだ意識は戻らない。ジャンガも他の仲間も、重傷で動けない。



 ――俺しかいない。ここで何とかしなければ、全滅だ。


「やれることをやるしかない…!」


 俺は冷静さを保ちながら、瞬時に作戦を立てる。


 真正面からでは勝ち目がない。だが、奴の剣の“魔力吸収”に限界があるとしたら――それを超える量をぶつければどうなる?


「いくか…!」


 俺は杖を構え、魔力を最大限に練り上げる。


「これで…勝負だ!」



 ―――。



「くっそ!」


 俺は、現状撃てる最高威力の魔法の準備を進めたいが、目の前の男が待ってくれるはずもない。剣先に青白い光をまとったまま、一直線に俺へ向かって突っ込んでくる。その動きは鋭く、魔法でカウンターを狙う余裕すらない。


「炎弾!」


 俺は反射的に放つが、それはまたもや剣に吸収され、むしろ剣の輝きを強化させてしまう。


「もっと燃えろよォ!」


 男は狂気じみた笑みを浮かべながら迫りくる。俺の攻撃は通じず、防御もままならない。このままでは一生勝てない…!


「何か、何か打開策を…!」


 必死に考えを巡らせるが、冷や汗ばかりが流れ、良い案が浮かばない。


 その時だった。

 剣先がとうとう俺の頬を掠めた。鋭い痛みと共に、温かい血が頬を伝う。背後の壁には深々と刻まれた傷跡が残り、俺は完全に逃げ場のない壁際へと追い詰められていた。


「これで終いだ。ガキにしちゃあ結構楽しめたぜ。」


 男は薄ら笑いを浮かべながら、腰に吊るしてあった酒瓶を手に取り、無造作に一気飲みする。その仕草すら、俺にとっては敗北感を深めるものだった。


「お前みたいなガキを殺すのは――」


 その言葉の途中で、唐突に閃光が走った。


 ――ズガン!


 男の足元の地面が爆ぜるように吹き飛んだのだ。


「何だ!?」


 俺も男も、瞬間的に視線を向けた。そこには、血まみれのカリーナが震える手で杖を構えて立ち上がっていた。


「……まだ終わらせないわよ……!」


 カリーナの声は震えているが、その目には強い意志が宿っていた。


「カリーナさん!」


 俺は驚きながらも、彼女がまだ戦える力を残していたことに救われた気持ちになった。


「てめぇ……まだ動けるのかよ?」


 男が忌々しそうにカリーナを睨む。その剣の輝きは依然として恐ろしいが、カリーナは一歩も引かない。


「カイル……私が時間を稼ぐ。その間に、あなたの最高の魔法を完成させなさい!」


「でもカリーナさん、それじゃ――!」


「いいから!」


 彼女の叫びは、俺の迷いを断ち切った。その背中から伝わる覚悟に、俺はただ応えるしかなかった。


「分かりました……必ず決めます!」


 俺は懐から、館の倉庫から拝借していた魔力結晶を取り出し、それを杖に注ぎ込み始める。これで時間を稼げれば――。


「行くわよ!」


 カリーナが前に出る。男は笑みを浮かべながら再び剣を構えた。


「いいぜ、相手してやる。せいぜい足掻くんだな!」


 カリーナと男の激突が始まり、俺はその間に魔力を高める。


(耐えてくれ、カリーナ。絶対にこれで決めてみせる!)

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