表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/621

43話 迷宮のヌシ

 迷宮内を歩き続けて10分ほどが経過した頃、ふとフェンリが思い出したように口を開いた。


「そういえば、僕たちはこの迷宮内で何をすればいいんでしょうか?」


 その言葉に全員が足を止めた。ライガが肩をすくめながら答える。


「ただ闇雲に迷宮を探索するのが授業内容じゃあねえよな。」


 ノアが何かに気づいたように声を上げる。


「これって……。」


 俺はその続きを予測して小さくため息をついた。


「フリークス先生、絶対に伝え忘れてますよね……。」


 担任の説明不足を疑わない俺たちの表情が同じように曇る。そもそも、この授業で何をすればいいのか、俺たちは教えられていなかった。


「なら一度戻るのか?」


 俺の後ろを歩いていたガムシルが立ち止まり、面倒そうに言った。


(今から戻るとなると、入口まで結構な時間が掛かってしまうが、仕方ないか……。)


 俺はカリーナに相談しようと振り返ったが、その前にカリーナが淡々とした声でガムシルの問いに答えた。


「あぁ、授業内容は私が知ってるから戻らなくていいわよ。」


 全員がその一言に驚きの表情を見せた。


「知ってるなら早く言ってくださいよ!」


 思わず声を上げてしまったが、俺は続きを聞く。


「それで、その内容はなんですか?」


 カリーナは自信たっぷりに胸を張りながら答える。


「迷宮の“ヌシ”の討伐よ。」


「え?」


 俺が驚くと同時にライガがガクッと肩を落とし、体を曲げる。


「マジかよ。」


 ノアとフェンリも一瞬驚きを見せたが、意外にもガムシルだけが楽しそうに声を上げた。


「あのカリーナ先輩の班なんだ、そう来なくっちゃな!こなくっちゃね!」


「呑気すぎない?」


 ノアが呆れたように呟くが、カリーナは気にする様子もなくニヤリと笑った。


「初心者向けの迷宮だからって油断しないで。ヌシだって迷宮を仕切ってる存在よ。それなりに手強いのは間違いないわ。」


「具体的にはどんな魔物なんですか?」


 ノアが真剣な顔で尋ねると、カリーナは少し考え込む。


「確か、豚頭(オーク)型の魔物で、動きが鈍いけど防御力が高いって聞いたわ。ただし、弱点があるはずよ。それを見つけるのがこの授業のポイントってところね。」


「つまり、戦略を練る必要があるわけですね。」


 フェンリが冷静に分析しながら頷く。カリーナは満足そうに手を叩いて言った。


「そういうこと!ただ突っ込むだけじゃなくて、みんなで考えて対処する。実践で学ぶには最適な機会だと思うわ。」


「まぁ、やるしかないですね……。」


 俺が覚悟を決めるように呟いた瞬間、遠くから微かな咆哮が聞こえた。全員が身構える。


「今の音……ヌシか?」


 ライガが武器を構えながら問いかけると、カリーナが微笑んだ。


「ええ、そうみたいね。他の班が先に戦ってるみたいね。いいわ、その方向に進みましょう。準備はいい?」


 カリーナの言葉に全員が頷き、それぞれの武器や道具を確認する。


「カイル、僕たちもやれることをやりましょう。」


 フェンリが静かな決意を込めて俺に言った。


「はい、もちろんです。」


 ノアが勢いよく拳を握りしめた。


「どんな敵だって、みんなで力を合わせれば怖くないよね!」


 こうして、俺たちは迷宮の奥深くへと足を進めることにした。


 さらに数十分歩き続けると、小さな広場に出た。そこには制服や装備がボロボロになり、疲弊しきった数人の生徒たちが座り込んでいた。


「何があったの!?」


 その生徒たちの一人にカリーナが一目散に駆け寄る。それはエイミーだった。エイミーは左肩を押さえながらも、座り込む仲間たちに治癒魔法を施していた。


「エイミー!」


 カリーナの声に気づいたエイミーは、疲れた様子ながらも笑顔で答える。


「カリーナ!やっと来たわね!アンタたちが最後の班よ!まったく、何してたのよ!」


 エイミーの元気な言葉に安堵しつつも、カリーナは彼女の肩の傷に目を向けた。


「その肩、どうしたの?」


「あ―これね、この先のヌシに一撃もらっちゃってね。でも見た目より酷くないから、治癒は後回しにしてたの。」


 それを聞いてカリーナは深くため息をついた。


「心配したんだから、もう……。今治癒してあげるわ。」


「ありがと。」


 カリーナの治癒魔法でエイミーの肩はみるみるうちに回復していった。治癒が終わると、カリーナは真剣な表情で現況を尋ねた。


「つまり、この先にいるヌシに、他の班が全員で攻撃を仕掛けたけど、あっけなく負けたってことね。」


「そんなにストレートに言わなくても!まあ、事実だけど!」


「それで、他の班は?」


「私たちの班が最初に攻撃されて撤退したから、残りはまだ戦ってると思う。」


「わかった。」


 カリーナは一度頷くと、俺たちの方を振り向き、鋭い目で言った。


「このすぐ先にヌシがいるみたいだけど、行く?」


 エイミーの班のやられ具合を見る限り、俺たちが役に立つとは到底思えない。それでも――。


「俺は行きたいです。」


 俺がそう答えると、フェンリやノアもそれに続いた。ライガも迷わず頷き、ガムシルは不敵な笑みを浮かべて拳を鳴らした。


「分かったわ。それじゃあ、ここに無駄な荷物を置いて準備して。5分後に出発するわよ。」


 俺たちは荷物を最小限にまとめ、武器の点検や魔具の確認を急いで行った。広場に漂う緊張感は、次第に全員を無言にさせる。


 エイミーが少し心配そうな声をかけた。


「カリーナ、気をつけてね。ここのヌシ、ただの強さだけじゃないのよ。」


「ただの強さだけじゃない?」


「うん。なんていうか、動きが早くて予測不能で……。うちの班もそれで崩れたの。」


 エイミーの言葉に、俺たちはさらに気を引き締めた。カリーナも一瞬だけ考え込むような表情を見せたが、すぐに力強い声で指示を出した。


「よし、作戦を立てるわ。このヌシを倒して、私たちの力を証明する。みんな、しっかりついてきて!」


 彼女の言葉に全員が頷き、覚悟を決める。


「さあ、行くわよ!」


 カリーナを先頭に、俺たちは広場を後にし、ヌシが待つ迷宮の奥へと歩を進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ