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34話 一瞬の決着

「それじゃあ……せーの、で放ちましょう。」


 フェンリがそう言うと、俺たちは互いに杖と魔具を構え直す。ここからは誰にも邪魔させない。勝敗は俺たち自身で決める。


「せーの――!」


 その声を合図に、俺とフェンリは同時に魔力を解放した。


「行けぇえ!」


 俺の頭上で純白に輝く炎の球体が砕け、灼熱の白炎柱となって前方に放たれる。周囲の空気が焼き尽くされるような熱量と、目に見えないほどの速さで襲いかかる純粋な破壊の塊だ。


 対するフェンリも負けじと叫び声を上げた。


「吹き飛べ!」


 深緑の球体が砕け散り、烈風の刃嵐となって怒涛の勢いで俺の白炎にぶつかる。風の刃一つ一つが研ぎ澄まされた剣のように鋭く、俺の魔法を切り裂こうと迫ってくる。


 激突した二つの魔法が、中央で壮絶なぶつかり合いを始めた。


 火炎と烈風の衝突は激しい轟音を響かせ、衝撃波となって周囲に広がる。

 観客席では悲鳴が上がり、一部の生徒たちはその場に座り込んだ。教師たちも障壁の魔法を張り、何とか制御しようとするが、俺たちの魔法の勢いは止まらない。


「くっ……!」


 俺は歯を食いしばり、魔力をさらに注ぎ込む。白炎の中心をさらに収束させ、風を焼き尽くすほどの熱量を生み出そうとする。


 しかし、フェンリも一歩も引かない。彼の烈風はますます鋭さを増し、あたかも白炎を切り裂き、押し返そうとするかのようだ。


(限界が近い……。でも、ここで負けるわけにはいかない!)



 ※※※



「すごい……!」


 ノアは呆然とその光景を見つめていた。


「これが本当に1年同士の戦いなのか?」


 ライガも同じく唖然としながら呟く。


「バケモンだぜ、あいつら……。このままじゃ修練場が吹っ飛ぶんじゃねぇか?」


「そんなこと言ってる場合じゃないよ!あんなの止めなきゃ――。」


 ノアが駆け出そうとするが、ライガが腕を掴んで静止する。


「今の二人は誰にも止められない……。これが二人の”答え”なんだよ。」


 ライガの目は真剣そのものだった。その言葉に、ノアたちは呆然と立ち尽くすしかなかった。



 ※※※



「くっ、あぁ……!」


 フェンリが叫ぶ。烈風の勢いが限界に達したのか、彼の魔法が少しずつ押し戻され始めている。


「これで終わりです、フェンリ!」


 残った魔力のすべてを白炎に注ぎ込み、さらに勢いを増した白炎は、ついにフェンリの烈風を完全に呑み込み、消し去った。


 その瞬間、静寂がフィールド全体を包む。先ほどまで騒いでいた観客席の生徒たちも言葉を失い、ただ呆然とこちらを見ている。俺は荒い息を整えながら、フェンリの様子を窺った。


 フェンリは座り込んだまま動かず、しばらく何かを考えているようだったが、やがて口を開いた。


「こ、降参します……。」


 その言葉を合図に、場内の審判が声を張り上げる。


「勝者!カイル・ブラックウッド!実技試験1位は、カイル・ブラックウッドです!」


 観客席から再び歓声が沸き起こる。勢いを取り戻した生徒たちは口々に俺の名前を叫び、拍手と喝采が場を埋め尽くす。その中で、俺はふらつく身体を何とか動かし、フェンリのもとへ向かった。


「お疲れ様です、フェンリ。」


 彼は悔しそうな顔をしながらも、どこか満足げな表情で俺を見上げた。


「僕の負けですね……本当にすごかったです、カイル。でも、楽しかったです。」


 その言葉に、自然と笑みがこぼれる。


「俺もです。またやりましょう、フェンリ。」


 俺たちはしっかりと手を握り合った。互いの全力をぶつけ合ったからこそ分かる、この手の温かさが何よりも心地よかった。


 疲労は極限に達していたが、それ以上に達成感と充実感が胸を満たしていた。今日の試合は、ただの実技試験を超えた何か――俺たちにとっての新たな絆を生んだのだ。



 ―――。



 その後、教師たちに支えられて医務室へ行くと、ノアやライガたちが駆け寄ってきた。


「カイル!すごかったよ!あんな炎、どうやったら出せるの!?」


 ノアの目が輝いている。


「えっと……まあ、ちょっと火力をですね……。」


 照れ隠しに軽く返すと、ライガが口を挟む。


「おいおい、ちょっとどころじゃねぇだろ!お前ら、1年の枠超えてんぞ!」


 フィーニャも笑顔で続ける。


「本当に感動した。フェンリの魔法もすごかったし、二人ともお疲れさま。」


 俺は疲れた身体を引きずりながらも、仲間たちの言葉に少しだけ元気を取り戻す。


 その時、ふとフェンリが横から声をかけてきた。


「カイル、次は負けないよ。」


 その真剣な目に、俺も笑いながら答えた。


「その時を楽しみにしてますよ。」


 こうして俺たちの試験は幕を閉じた。



 ―――。



 後日、学園の講堂に全校生徒が集まり、学長による進級試験の総評が行われた。

 各学年の試験は無事に終了し、優秀な成績を収めた生徒たちの表彰が行われる運びとなる。会場にはざわめきが広がっていた。


「これから、進級試験における実技試験、筆記試験の総合評価で見事1位の成績を収めた生徒に、学園より『スター』を贈呈します!」


 学長の声が響き渡ると、会場の緊張感が一層高まる。スターとは、この学園で最も優秀な成績を示す証であり、名誉の象徴だった。誰もが一度は手にしたいと思うが、それに値するのはごくわずかな生徒だけだ。


「では、まず1年生の総合評価1位の発表です。」


 会場が静まり返る中、学長は満足げに笑みを浮かべた。そして、一枚の名簿を確認してから名前を呼び上げる。


「シンフォード・エルステリア!」


 その名が告げられると、会場が一瞬どよめき、すぐに大きな拍手が湧き起こった。


 シンフォード・エルステリア――眉目秀麗で、成績優秀。1年生の中でも一目置かれる存在だ。

 整った顔立ちに、どこか冷たい雰囲気を漂わせた彼は、無表情のまま壇上へと歩み寄る。拍手を受けながらも、その様子に誇らしげな感情は見受けられない。ただ淡々と、まるでそれが当然であるかのようにスターを受け取った。


 壇上でスターを掲げる彼を見て、俺はふと入学当初の彼の姿を思い出していた。


(シンフォードって、最初はこんなに目立つ奴じゃなかったような……。)


 入学したての頃、彼は目立たない存在だった。成績もそこそこ、顔立ちも特に注目を浴びるものではなかった。それが今では、まるで別人のように完璧な姿になっている。


 一時期、「彼は別人なのではないか」という噂が広まったことがあった。それほどまでに短期間で変わりすぎたのだ。しかしその噂も、気がつけば人々の関心から薄れていき、彼は当然のように1年生トップの座を手に入れていた。


「すごいなぁ、シンフォード君。やっぱりS組はレベルが違うよね。」


 ノアが感嘆の声を漏らす。


「ま、あいつが頭いいのは認めるけどよ。正直、勝てる気しねぇ。」


 ライガが少し悔しげに呟く。


 俺は二人の会話を聞きながら、壇上で微動だにしないシンフォードを見つめた。


(別人説なんて、どうでもいい話だ。あいつが努力してトップに立ったんだろう。俺も夢を叶えるために負けてられない。)


 静かに心を燃やしながら、俺は自分の目標を再確認した。

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