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閑話 『白い魔導書(上)』のとあるページ「アグラヴァーン・エルデンストールの偉業」

『白い魔導書』とは、アグラヴァーン・エルデンストールの死後、その弟子たちが執筆した最初の魔導書であり、上中下巻の3つ存在する。この魔導書には「魔法使いの階級」、「初級・下級・中級までの四大元素魔法」、「アグラヴァーン・エルデンストールが成した偉業」が記されている。

 遥か4000年前――それは、人々が魔獣と呼ばれる恐ろしい生物たちに怯えながら暮らしていた時代。

 人類はまだ鉄器すら十分に扱えず、集落は点在し、力のあるものだけが生き残る弱肉強食の世界だった。

 空には『魔獣』が舞い、地には恐ろしい足音が響く。夜になれば誰もが祈りを捧げ、明日が来ることを願った。


 『魔獣』とは、主に 魔力を持った動物のことを指す。狼や兎、蛇などの動物が魔力を得て進化した存在。知能が高いものもおり、個体によっては人間と意思疎通ができる場合もある。

 基本的に生物であり、本能的に動くことが多い。


さらに、『魔物』というのも存在しており、『魔物』とは、魔力を持った無機物のこと。石像や鎧、霧や炎など、本来は”生命”を持たないものが魔力によって動くようになった存在。

 

 そして、そんな危険が存在が世界を脅かす中、ある村に奇妙な子どもが生まれた――その子どもの名は、アグラヴァーン・エルデンストール、その名を後世に刻む偉人である。


 アグラヴァーンは生まれつき、他の子どもたちとは異なっていた。

 彼は話し始めるのが早く、周囲の自然や星空に興味を示し、まだ幼い頃から村で最も賢いとされる長老すら手を焼くほどの質問を投げかけた。


「なぜ炎は燃えるのか?」


「なぜ月は形を変えるのか?」


 そういった問いは、大人たちにとって答えようもないものであった。


 彼の奇抜な行動は時に村人たちの恐れを招いた。


 アグラヴァーンが落雷の跡を観察し、焼け焦げた地面に触れ、力を感じたと呟いた時、誰もが彼を不気味な子供だと噂した。

 しかし、母親だけは彼を信じ、アグラヴァーンはきっといつかこの村を救う存在になると信じ続けた。



 青年となったアグラヴァーンは、村を離れ旅に出た。その目的は、魔獣に立ち向かう術を見つけることだった。

 彼は山奥に籠り、風の流れや雷鳴を観察し、まず火を操ることを試みた。そしてついに、ある日、彼は『火の力』を意図的に生み出し、操ることに成功する。

 火打ち石でも薪でもない、手のひらから直接現れる赤――これが後に『魔法』と呼ばれる技術の始まりであった。


 だが、火を操れるようになったことで、彼の苦悩は終わらなかった。力を恐れる人々、そして魔法を奪おうとする他の集落の襲撃。

 アグラヴァーンはその火を使い、自らを守りながらもこの力を人類のために役立てるべきだという信念を深めていく。


 アグラヴァーンがその真価を発揮したのは、彼の故郷の村が巨大な魔獣に襲われた時だった。

 その魔獣は、これまで誰も倒したことのない存在であり、村人たちは恐怖におののき、逃げることしかできなかった。しかし、アグラヴァーンは逃げなかった。


『火』はただの破壊ではない。生命を守る力にもなり得る。

 彼は村人たちを避難させ、自らの力で魔獣に立ち向かった。幾度も打ちのめされながら、ついに彼は魔獣をその火で打ち倒す。初めて魔獣が敗北する瞬間を目撃した村人たちは、彼を『英雄』と称えた。



 アグラヴァーンはその後も旅を続け、様々な魔獣と戦いながら魔法の研究を重ねた。

 やがて、彼は自らの技術を他者に教え始めた。多くの弟子が彼のもとに集まり、魔法は次第に体系化されていった。

 アグラヴァーンはその生涯を魔法の普及と研究、魔獣に怯えない世界を作ることに捧げた。


 彼の死後、人々は彼の業績を称え、その教えを礎として文明を発展させていった。


 アグラヴァーンの名は、魔法の始祖として、後の世まで語り継がれることとなる。

 彼が生まれた時代は『暗黒の時代』と呼ばれたが、彼の存在がその闇を照らす光となった。


 アグラヴァーン・エルデンストールが初めて魔獣を倒した日――それは、単なる勝利の記念日ではなく、人類の歴史そのものを変える瞬間であった。

 彼の故郷の村を襲った魔獣を打ち倒したその日は、周辺の集落に希望の光をもたらし、同時に『魔法』という概念の真価を世に示した象徴でもあった。


 この出来事を境に、人類は魔獣の恐怖から逃げ隠れるだけの存在ではなく、彼らに立ち向かう力を持つ文明へと歩み始める。

 アグラヴァーンの偉業を称えるため、彼の死後、各地の代表者たちが集い、大会議が開かれた。その場で、「魔獣討伐の日」を新たな時代の始まりとして記録することが決定された。


 これが、黎明暦(れいめいれき)の誕生である。


『黎明』は、夜明けを意味する言葉であり、長きにわたる魔獣の支配という闇の時代が終わり、新たな希望と繁栄の時代が始まることを表している。

 この暦の元年は、アグラヴァーンが魔法の力をもって初めて魔獣を討伐した日であり、彼の信念と行動が人類全体の未来を切り開いた象徴の日である。


 黎明暦はただ過去の偉業を称えるためのものではない。それは、これからも人類が恐れを乗り越え、光の指し示す方向へ進んでいく決意を刻むものである。

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