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3話 目標

 先日の魔物との戦いから一週間が経った。黒装束の男――エルドリックに助けられた後、家に帰還した俺は両親にこっぴどく叱られた。


 最初はたった一日帰らなかっただけで大袈裟だなと思ったが、よく考えれば俺はまだ六歳。親が心配するのも当然のことだ。反省しなければならない。


 そして、俺はあの日を境に、エルドリックの家に通うようになった。


 彼に助けられた翌日、俺は彼に魔法を教えてくれと頼み込んだ。彼のあの力は、きっと”夢”に役立つ。この機会を、見逃すわけにはいかない。

 誰よりも強くなりたい。絶対に負けない力が欲しい。

 そのために、魔法を知りたい。


 ――そう思った。


 エルドリックの家に着くまでの間に考えていた説得、文言――すべてを吐き出すように叫んだ。

 断られても、了承を得るまでは足に噛みついてでも頼むつもりだった。


 しかし――エルドリックは呆気なく了承してくれた。


「……いいだろう」


 そのあまりにも葛藤の無い言葉に、俺は一瞬困惑した。

 しかし、エルドリックは続けてこう言った。


「君が魔法に興味を持つことは……”分かっていた”」


 今や、彼の言葉の真意は分からないが、最強を目指す俺にとって、”この世界に存在する未知の力”を学べるのは願ってもないこと。

 期待に胸が高鳴る。


「今日は何を教えてくれるんですか?」


「これからは魔法を使えるように鍛えてやろうと思っている。」


(来た……! 魔法の訓練がついに!)


「願ってもないことです! よろしくお願いします!」


 俺たちはエルドリックの家を出て、すぐ近くの広場へと移動する。


「まず、今まで教えた魔法の”基礎”を簡潔に言ってみなさい。知識の確認だ」


「はい!魔法の種類には大きく分けて火・水・風・土の四大元素があり、それらを操る魔法を四大魔法と呼びます。

 そして四大元素はこの世界を維持するために欠かせない『絶対存在』です」


 俺の言葉に、エルドリックは無言で頷く。


「さらに、四大元素とは異なる『特殊元素』が存在し、それには元々あるものと、個人しか扱えない唯一の元素『唯一元素』に分類されます。」


「これらの魔法を発見・開発したのが、約四千年前に存在した人物、アグラヴァーン・エルデンストール。

 彼は『大魔法使い』や『大賢者』と称され、その偉業を後世に伝えるため、弟子たちが『魔導書』を執筆しました」


 俺は言い終わると、ふぅと息を吐きエルドリックを見据える。


「一言一句……教えた通りだな。六歳とは思えない学習力と知識欲だ……。よし、それでは次に君の現時点での魔力量を測る。その結果を見て授業内容を決めよう。」


「はい!」


 魔力量――つまり、俺が今宿している魔力の量を測るということか。


 もし少なかったら、魔法が使えないなんてこともあるのか?

 いや、大丈夫なはずだ。俺は転生者だ。そこらの子供よりは多いに決まってる! 多分……。


 エルドリックは懐から小さな正方形の石板を取り出し、地面に置いた。

 石板には、半円のメーターのようなものが着いており、針は左下を指している。


「これは……?」


 俺が聞くと、エルドリックが淡々を説明を続ける。


「この石板に手を置くと、その者の魔力量によってメーターの針が動く。君は優秀だ。針がメーターの半分も行けば及第点だろう」


「へぇ……どういう仕組みなんでしょうかね……」


「簡単なものだ。この石板は特殊な石を加工して作られている。その特殊な石が、掌からその者の体内に宿る魔力量を計り、その量に値して針が動くという仕組みだ。

 ちなみに、首都の王城にはこの石板よりもさらに正確に魔力量を計ることのできる上質な測定器がある。いずれ行ってみるといい」


 エルドリックはそう言いながら俺に石板を差し出す。


「では、試してみなさい」


「はい」


 俺が石板に手をかざすと、しばらくした後、針がキリキリと音をたてながら動き出した。

 しばらくして、針はメーターの半分より少し下で動きを止めた。


「これって……どうなんでしょう?」


 俺はてっきり、針は半分どころか、もっといくと思っていたため、半分よりも手前で止まったことに少し落ち込んでしまった。


「六歳の平均値だ」


 エルドリックが無情にも現実を突きつける。


(平均……平均かぁ。もっとこう、転生者補正とかないんだろうか?まあ、最強への道は簡単じゃないってことか。)


 俺は気を取り直してエルドリックに向き直る。


「それで、この魔力量だと何ができますか?」


「この程度ならば、初級魔法が扱えるだろう」


「初級? 魔法使いには階級があるんですか?」


 俺が首を傾げて言うと、エルドリックは頭を掻きながら驚く。


「おぉ、そうだったま。階級制度について、まだ話していなかったか……では、今教えよう」


 そういうと、エルドリックは咳ばらいをして続けた。


「魔法使いには八つの階級がある。下から初級・下級・中級・上級・聖級・彗級・豪級・神級に分かれる。

 初級から彗級までは、称号持ちの人数が多く、大半の者は彗級までを目指す。」


 エルドリックの言葉に、俺は首を傾げた。


「……? 彗級以上を目指さないのですか?」


 そう問うと、エルドリックは難しそうな表情をして呟いた。


「彗級までが人間でいられる”最終地点”だからだ。豪級以上の称号を持つ者は、人間ではない。それほどの化け物しか手にできない階級なのだ。」


 エルドリックの語りに、俺は自然と鳥肌が立った。


(なるほど。つまり、神級ともなると誰も太刀打ちできないほどの……”最強の力”を持つということか)


 俺は無意識に口を開いた。


「……ちなみに、神級ってどのくらい強いんですか?」


 するとエルドリックはふっと笑って言った。


「神級の称号保有者は皆一様に『世界最強』と謳われている。力が膨大すぎて、誰もその実力を測ることすらできないのだ」


(……そんなに強いのか、神級って。)


 そして、俺はある決意を固めた。


(――決めた)


 俺はその、神級魔法使いになる。

 魔法を極めて、この世界の誰よりも強い力を手に入れる。

 そして、既にいる神級を超えて、最強の魔法使いになってやる。


 白井の夢を……魔法を利用して、叶えるんだ。


 俺は拳を握って、エルドリックを見た。


「分かりました、ありがとうございます。では早速、授業を受けさせてください!」


 俺の頭は、もう魔法のことしか考えられなかった。

 すると、エルドリックが何かを察したように俺の肩に手を置いた。


「……ブラックウッド、君の目指す道はとてつもなく険しいものになる。それでも魔法を極めることを諦めないか?」


 エルドリックは俺の覚悟を見据えたように、そして試すように問うた。


 だが、俺はもう決めた。誰にも止められない。


「はい。もう決めたことです」


 俺がそう答えると、エルドリックは笑った。そして、俺の肩を叩いて呟いた。


「……分かった。ならば私も微力ながら力を貸そう。君がその険しい道を歩けるように……」


 エルドリックの言葉に、俺は力強く頷いた。

 こうして、俺の大魔法使いへの道が始まった――。

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― 新着の感想 ―
そもそも6歳の子供に頼まれて魔法を教えるってなりますか? 間のやり取りがなさすぎて意味がわからない
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