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26話 ライガVSカイル

 初戦の6回戦全てが終わり、次の試合の呼び出しがかかる。今度は俺の番だ。相手は虎族のライガ。A組内でも屈指の身体能力を誇るやつだ。


「……ついに来たか。」


 深呼吸しながら立ち上がり、杖を握り直す。観客席から飛んでくる声が耳に入る。


「カイル、気をつけろよ!兄ちゃんはめちゃくちゃ強いからな!」


「ライガも頑張れー!!」


 軽い茶化しや応援が混じる声の中、俺はライガを見据えた。戦場の中央に立つ彼は、いつものように軽い笑顔を浮かべていた。


「よお、カイル!待ちくたびれたぜ。今日は全力でいくから、泣くなよ?」


「泣くのはそっちですよ。俺だって簡単には負けません!」


 互いに軽口を叩きながらも、視線の奥では探り合っている。審判が二人の準備を確認し、静かに腕を上げる。そして、試合開始を告げる声が響いた。


「……始め!!」


 開始の合図と同時に、ライガが地を蹴った。


(速い……!)


 虎のように駆け抜けるライガが一直線に突っ込んでくる。反応する暇もない速度だが――。


疾風(スウィフト・ウィンド)!」


 風魔法で一気に後退し、距離を取る。その瞬間、観客席から驚きの声が上がった。


「え!?なんでカイルが風元素を使えるの!?」


 驚いて叫ぶノア。その理由は昨日に遡る――。



 ※※※



 ライガとジャンガの退屈な試合を眺めながら、俺は考えていた。今日の試合を見て、学園支給の魔具以外にも私物の魔具を使っているやつが多かったことに気づいたのだ。


「学外から持ち込んだ魔具もアリなのか……じゃあ俺も――。」


 そう思った俺は魔具を新調しようとしたが、市販品の値段があまりに高く断念した。しかし、そこで諦めなかった。


(高いなら、自分で作ればいい。)


 魔具の構造は意外と単純だった。

 ブレスレット型なら、魔石をはめる溝と放出口を作ればいい。まぁ粗悪品より粗悪品だが、ちゃんと機能してくれれば十分だ。

 問題は魔石の入手だったが――これは運良く解決できた。魔獣を倒すとまれに”光る魔石”が体内から出てくるという情報をゲットしたのだ。


 俺は深夜にこっそり街を出て、魔獣を狩り続けること数時間、計3つの魔石を手に入れた。その魔石に風元素やその他元素の魔力を注ぎ込むことで、属性持ちの魔石を作ることができる。

 作業は、寝る間も惜しんで続けられた。


(中級魔法まで使えるようにしたいからな……できるだけ魔力を注いでおこう。)


 その結果、体感で半分以上の魔力を使い果たしてしまったが、なんとか完成した。この自作の魔具や魔石たちは、今の俺にとって頼れる武器だ――。



 ※※※



 風元素魔法で距離を取ったものの、ライガの猛攻は止まらない。


「逃がさねぇぞ、カイル!」


 その鋭い拳が迫る中、俺は即座に魔具にはめられてある魔石を付け替え、手を地面に突き立てて魔法を唱える。


地縛(アース・バインド)!」


 地面から伸びた無数の蔦がライガの動きを拘束した。


「決めるぞ……!」


 魔法を発動するために詠唱を続ける。


土槍(アース・ランス)!」


 土の槍がライガを目標に一直線に放たれる。しかし――。


「下級魔法!?だが!こんなもんで俺が止まると思うか!」


 ライガは信じられない腕力で蔦を引きちぎり、岩の槍をギリギリでかわしてみせた。

 ライガの動きに衰えは見られない。俺は対抗策を考えながら距離を取る。


砂滑走(サンド・スライド)!」


 地面に流砂を作り出しそれに乗り交代する。そして隙を見てカウンターの準備を整える。ライガも真っ直ぐ突っ込んでくるばかりではなく、こちらの動きを読んでいる。


「さあ、カイル、もっと楽しもうぜ!」


「もちろん……!」


 ライガの猛攻は止まらない。俺はそれを躱しながら、時折カウンターを放ち応戦していたが、戦局は依然として均衡を保ったままだった。


(このままじゃ埒が明かないな……。)


 丁寧に戦うのはいいが、これではいつまで経っても勝負がつかない。もし昨日の双子の試合のような持久戦に持ち込まれたら、傷の癒えていない俺はいずれ負けてしまうだろう。


 ライガの拳をギリギリでかわしながら、俺は考えを巡らせる。


(ライガの弱点を見つけないと……。)


「おらおら、どうしたカイル!!避けてばっかりか!!?」


 目の前で挑発してくるライガ。しかし、その意図は見え透いている。


 ライガ――いや、肉食動物由来の獣族全般に言えることだが、彼らは本能や力任せで戦う傾向が強い。そのため、戦闘中にあまり細かい戦術を使うことはない。


(だが、そこがライガたちの厄介なところでもある。本能で最善の行動を無意識に取ってくるから、弱点を狙いずらい……。)


 俺は前世で、敵の弱点を的確に突く戦術を多用してきたが、ライガやジャンガのようなタイプにはかなり分が悪い。


(なら、別のやり方でいくしかないが……疲れるけど、仕方ない。)


 ライガの攻撃が一瞬止んだ隙を突き、俺は身につけていた魔具をすべて地面に放り捨てた。


「ふぅ……重かった。」


 その謎の行動に観客席がざわめき立つ。ライガもそれに気づき、驚いた顔を見せた。


「なんのマネだ、カイル。まさか降参か?」


「違います……肉弾戦を、と思って。」


 俺の言葉を聞いたライガは一瞬の沈黙の後、牙を見せて笑った。


「だっはっは!おっもしれぇ!いいぜ!やろうじゃねえか、肉弾戦!」


(よし、狙い通り乗ってきたな。あとはどれだけ俺のパンチが通用するかだ……。)


 ライガも籠手を外した。

 拳を握り直し、構えを取る。俺も構えながら、呼吸を整えた。


(獣族相手に無茶にもほどがあるけど……勝つためにはこれしかない!)


 一気に勝負を決めるしかない。

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