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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第4章 冒険者編 

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109話 この世界で――

 王宮を後にした俺は、振り返ることなく首都ヴァルシオンを発った。


 目指すはフェクーシの街。そこでは旅に必要な足の確保に加えて、数日分の食料と水、それから新しい地図を手に入れようと思う。


 フェクーシまでの旅路は特に問題なく進み、翌日にはフェクーシの街へと戻ってきた。相変わらず人の活気に満ちた街だ。通りには行商人たちが立ち並び、商品を呼び込む声があちこちから響いている。


 俺は街の中を手際よく回り、食料や水を確保し、使い込まれた古い地図の代わりに新しいものを買い求めた。そして、最後に足を確保するために、行商人たちが集う繁華街へ向かうことにした。


 繁華街へ続く道を歩いていると、ふと視界に広場が現れた。その中央には古びた銅像が一つ立っている。剣を掲げ、マントを羽織ったその姿。顔の部分は経年劣化による破損でわからなくなっているが、その堂々たる構えから『勇者』を模しているのだとすぐに察しがついた。


「…これが勇者記念碑か。」


 俺はつぶやき、自然と足が銅像の前へと向かっていた。その横には大きな石板が立ち、びっしりと文字が刻まれている。


 視線を記念碑に向けたまま、俺の中にノアの言葉が蘇る。


『いつかみんなで勇者記念碑を見たいな。』


 ノアがそう言ったのは、まだ俺たちが旅の途中にいた頃だ。遠くを見つめるような目をして、微かに笑いながら話していた。


 …けれど、それはもう叶うことのない願いだ。


 俺は目を伏せ、静かに記念碑を見上げた。剣を掲げる銅像の姿が、どうしてもフェンリやノアに重なって見えてしまう。どれだけ目をそらしても、胸に突き刺さる感情を振り払うことはできなかった。


「ノア…フェンリ。」


 無意識に名前を呼ぶと、喉が詰まり、続く言葉が出てこない。ノアが立ち寄るたびに拾っていた野花の匂いが、記憶の中から蘇る。


 そして、フェンリが一歩後ろに立ちながら、「急がないと日が暮れますよ」と静かに促してくれた場面が脳裏に浮かぶ。


「…ここで止まってる暇はないな。」


 自分にそう言い聞かせ、記念碑の前で立ち止まる足を無理やり前に進める。しかし、その一歩一歩がこれほどまでに重く感じるとは思わなかった――。



 商人の集う繁華街に到着した俺は、まず目当てのものを探し始めた。それは、すでにこの街を発とうとしている行商人だ。

 行商人の多くは他国や他の街から訪れ、珍しい商品や魔具を取り扱っていることが多い。そのため、彼らとの出会いは予想外の有用な情報や道具を手に入れる絶好の機会となる。だが、今回の目的はそれではない。


 俺が目指すのは、ダール国から北東方向に位置するエグザミート国に向かう行商人だ。この街からエグザミート国への直通の馬車など滅多にないが、行商人ならば目的地が一致する可能性がある。

 そんなことを考えながら、周囲を見渡していると、店先の商品を片付けながら馬車に積み込む中年の商人が目に入った。


 その商人は頭にバンダナを巻き、少し太めの体格で、鼻の下に伸ばした長い横ひげを撫でながら作業をしている。俺は迷わずその男に声をかけた。


「すみません、ちょっといいですか?」


 俺の声に反応し、男が振り返る。その軽やかな動きに少し意外性を感じた。


「ん?なんだい?」


 風貌の割に高めの声で軽い調子で返事をしてくる。

 少し驚きつつも、俺は丁寧に話を続けた。


「実は旅の途中なんですが、足が無くて……目的地が同じなら乗せてもらうことってできますか?」


 すると、商人は値踏みするような目つきで俺をじろりと見た。その視線を受けた俺は、ためらうことなく懐から大きな袋を取り出し、中の硬貨をわざと音を立てて鳴らしてみせる。


「お金ならあります。」


 その瞬間、商人の顔は信じられないほどの笑顔に変わり、彼は陽気に笑いながら俺の肩をバンバン叩いた。


「はっはっは!金を払ってくれるならどこでも連れてってあげるよ!どこに行きたいんだい?」


「エグザミート国に行きたいんですけど……大丈夫ですか?」


「エグザミートっていうと……北東のほうにある国かい?」


「えぇ、そこに用事があって。」


 商人は手帳のようなものを広げ、一瞬考えるような仕草を見せたが、すぐに満面の笑みを浮かべて言った。


「おお、私もちょうど北東方面に向かうところさ。連れていってあげるよ。ただし、その袋の中身はしっかり払ってくれるってことでね!」


 その言葉に俺は頷き、笑みを返す。


「もちろんです。」


「じゃあ準備ができたら教えてね。荷物を詰め終わったら出発するからさ。」


 そう言い残し、商人は再び馬車の荷台に積み込む作業に戻る。俺は軽く息を吐き、安心すると同時に、旅の次の一歩が始まったことを実感した。


 エグザミート国――俺がそこを目指す理由は、明確にある。


 それは、ヴァルシオンの街で耳にした噂だ。エグザミートには聖級魔法使いが直々に指導を行う魔法学校があるらしい。噂話にすぎないかもしれないが、それでも試してみる価値はある。


 聖級魔法使い――その存在は、俺にとって新たな目標を与えるものだ。もし彼らに教えを乞うことができれば、俺の力は格段に向上するはずだ。


 俺はそれを必要としている。いや、必要以上に求めているのかもしれない。レグナとの戦いを経て、俺は痛感した。


 俺は弱い。

 ただ魔力量が多いだけの存在だったんだと。仲間がそばにいてくれたから、自分が強いと勘違いしていただけだった。だが、それは誤りだった。魔力量が多くても、その使い方を知らなければ、ただの無用の長物でしかない。仲間がいても、俺が弱ければ、守るべきものを守れない。


 この旅の中で、それを嫌というほど実感させられた。


 だから、俺は強くならなければならない。生きるため、守るため、そして夢を追うために。


 この世界に転生してから、俺は少しずつ変わっていった。最初は、白井の夢を叶えるため、それだけを目的にしていた。最強を目指すことが白井の夢だったから。それが俺の指針だった。


 でも――それだけじゃ、もうダメなんだ。


 俺は、この世界で仲間を得た。友達ができた。ノアやフェンリ――彼らとの時間は、俺にとってかけがえのないものだった。彼らと過ごす中で、俺の考えは変わっていった。俺は彼らに救われた。彼らがいなければ、俺は夢の意味を見失っていた。


「もう、これは白井だけの夢じゃない――俺が叶えたい夢だ。」


 そう気づかせてくれたのは、間違いなくノアとフェンリだ。


 彼らはもういない。それでも、俺に大切なことを教えてくれた。夢を追う意味、強くなる理由を。彼らの思いを無駄にしないためにも、俺は前へ進む。


 俺は自分の拳を握り締める。心に浮かぶのは、ノアの笑顔とフェンリの声。

 目をる瞑ればいつでも思い出せる彼らの姿は、俺に確かな決意をもたせてくれる。


 これから俺が目指すべき道を、そしてその先にある未来を。


 エグザミート国――そこが俺の新たな出発点になる。

 俺は何度でも自分に誓う。この夢は、俺自身の夢だと。そして、その夢を叶えるために、俺は絶対に諦めない。


 俺は、この世界で最強に至る――。

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