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101話 轟音、閃光

 アルクたちがレグナの注意を引きつけてくれている中、俺は残った魔力のすべてを絞り出し、今撃てる最強の魔法の準備をしていた。


 しかし、レグナは俺に魔力を練る隙を与えてくれることはなく、無造作に放たれたかに思えた奴の魔法は適格に俺を狙う。それをアルクたちが防いでくれているが、彼らとの連携は以前のようにはいっていなかった。


 レグナの封印を解いてしまった俺への不信感。無意識とはいえ、俺が奴の復活に加担してしまった事実は皆の心に重くのしかかっているのだろう。


 だが、そんなことを考えている暇はない。奴の背後に浮かぶ巨大な魔法が完全に完成する前に、奴を倒さなければならない。

 そのためには、レグナを一瞬で仕留めるような魔法を放つしかない。しかし、問題はそこだ。魔力を練り始めた瞬間、レグナは正確にその気配を感知し、即座に攻撃を仕掛けてくる。


「どうした!その程度の力で私に勝てると思っているのか!」


 レグナの声が響き渡る。奴は確信に満ちた表情で俺たちを見下している。


「おい!まだかよ!!」


 ルカが俺のそばに駆け寄り、焦りを隠せない様子で叫んだ。


「す、すみません…邪魔が入って魔力が練れないんです…!」


 俺の言葉に、ルカは舌打ちをして踵を返す。


「なんだよ!俺たちのせいだってか!?早くしろ!もうあいつの魔法が完成しちまうぞ!」


 そう言い捨てて、ルカは再び戦闘に戻っていった。俺は焦りを感じながらも再び魔力を練ろうとするが、やはりレグナの攻撃に阻まれてしまう。次第に俺への攻撃が防がれることはなくなり、アルクたちも限界が近いのが見て取れた。


 ついには、レグナの攻撃が俺の近くで爆発し、その爆風で俺は吹き飛ばされる。


「ぐっ…!」


 地面に叩きつけられ、立ち上がろうとしたその瞬間だった。俺の腕甲に装飾された魔石が光っているのに気づいた。


「これは…吸魔の魔石が光っている?」


 その光景に、一瞬驚きと困惑が入り混じったが、俺はすぐに魔石に手を伸ばして触れてみた。すると、驚くべきことが起きた。魔石を触れた腕から身体を通り、杖へと魔力が流れ出す感覚が伝わってきた。


「まさか…!」


 俺はもう片方の腕甲にも手を伸ばし、そこに装備された魔石にも触れる。同時に、魔石に蓄えられていた莫大な魔力が、俺の身体を通じて杖に注ぎ込まれていった。その魔力量は絶大で、俺自身が持つ魔力量を軽く上回るほどだ。


「そうか…今までレグナの魔法を吸収できなかったのは、魔石の限界を超える量だったから…でも、それが今、俺に力を貸してくれるのか!」


 俺は希望を見出した。その嬉しい誤算が、俺にもう一度立ち上がる勇気を与えてくれる。


「よし…いける!」


 吸魔の魔石が解放した魔力を杖に集約し、すべてを解き放つ準備に入る。レグナの攻撃が再び俺を狙ってくるが、今は怖くない。この力で、奴を一瞬で葬る。


「待っていろ、レグナ…これで終わらせる!」


 杖に蓄えられた全ての魔力が、俺の意思に応じて形を成していく。周囲に強烈な光が放たれ、その眩しさがすべてを飲み込もうとしていた。


「準備が整いました!避けてください!」


 俺の声が戦場に響く。レグナと激しく渡り合っていたアルクたちは、その言葉を聞くや否や瞬時に散開した。その動きの速さに、彼らの信頼と状況判断の鋭さを感じる。


 目の前には一直線上にレグナが立っている。その姿は禍々しくも堂々としていて、まるで勝利を確信しているかのようだ。そして、奴は薄ら笑いを浮かべ、こう言った。


「一歩…遅かったな。」


 その言葉と同時に、レグナが指をクイッと動かす。奴の背後に佇んでいた巨大な魔法が一気に輝きを増し、空間全体が不気味な音とともに震え始めた。


「――!!」


 その瞬間、巨大な魔力の塊がゆっくりと俺たちに向かって動き出す。それはただの魔法ではない。周囲に散らばる瓦礫や建物を飲み込みながら、さらなる大きさと威圧感を増していく。


「完成してたの…!?」


 ミラが絶望の声を上げ、頭を抱える。


「カイル!撃て!」


 アルクが怒号に近い声で叫ぶ。その声にハッとした俺は、迷いを振り払うように杖を構え、一気に魔力を解放した。


「うおおおおおお!!!」


 杖の先から放たれたのは、ただただ純粋な魔力の塊。それは練り込まれた形状や属性などを持たないが、その分、圧倒的なエネルギーそのものが暴力的な力を持っていた。軌道上にあるものすべてを一瞬で砂に変えるほどの破壊力を秘め、神々しい光を纏いながら一直線に走る。


 目の前に迫るレグナの魔法。空間そのものを飲み込み、崩壊させようとするその魔法に、俺の放った魔力の塊が激突する。


 二つの魔法がぶつかり合った瞬間、世界が裂けたかのような衝撃が辺りを襲う。耳が聞こえなくなるほどの轟音が響き、視界は純白に包まれた。その場にいる誰もが、その光景を直視できず、ただ身を伏せるしかなかった。


「……カイル!!!」


 誰かの叫び声が聞こえる。だが、俺の意識はその言葉を完全には拾えなかった。


 俺が放った魔法は、間違いなくレグナの魔法を削り取っている。しかし、それでも完全に押し切るには足りなかった。二つの魔力が拮抗し、まるで天地を引き裂くかのようなエネルギーの奔流が空間を歪ませる。


「まだだ…!」


 俺は限界を超える魔力をさらに絞り出し、再び杖を掲げた。吸魔の魔石が微かに震え、また新たな魔力を提供してくれる。しかし、それすらもレグナの魔法には足りないかもしれない――そう思った瞬間、声が聞こえた。


「カイル!君は一人じゃない!」


 アルクの声だ。俺が振り返ると、彼が剣を掲げ、魔力を集中させているのが見えた。


「僕たちの力を使え!ここまで来たのは、君一人の力じゃないだろう!」


 続いて、ルカやミラ、アンも魔力を杖や手に集中させ、それぞれの力を俺に向けて送り出してくる。その魔力の流れを感じた瞬間、俺の中に熱いものが込み上げてきた。


(そうだ…俺たちは、仲間だ!)


 俺は彼らの魔力を受け取り、杖に集中させる。今度こそ、全員の力を込めた一撃で、レグナを打倒する。


「これで終わりだ…!」


 俺たちの放つ魔法の光が、さらに輝きを増し、レグナの魔法を飲み込んでいく――。

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