表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/34

2-5: 繋がり

 今回のミッションは、簡単だ。まずは、臓器売買の窓口とされている主婦の桜井カノをマークして、売買ルートの大元を割り出す。ただ、それだけだ。

……ウシザキは、そう言っていたのを思い出す。

「いやいやいやいやっ!」

皿洗いをしながら1人ツッコミをする私を、家族が不思議そうに覗き込んできた。

「大丈夫?最近ママってば忙しそう…。」

一人娘がつまらなそさうに目を伏せる。しかしあっという間に機嫌が良くなり、猫なで声で話し出した。

「最近流行ってる、匂い袋が欲しいんだけど〜。」

匂い袋?この令和の時代に?

「神秘的な匂いがするんだって。人によってはその匂いで落ち着いたり、眠れたり?よく知らないけど。」

子供達の間で流行るくらいだから、そんなに危険ではないのかもしれない。しかし、野生の勘と言うべきか分からないが、二つ返事でOKとは言えなかった。

「匂い袋の原料って分かるの?」

娘は首を横に振る。その問いにふと悟ったような顔で娘が口を開いた。

「ダメ、なんだよね。ママってば、質問に質問で答える時はそうだしー。」

「うーん、中の物が分かればいいけどね。」

賢い子に育ってくれている。娘の成長を嬉しく思うその奥で妙な胸騒ぎがした。

「ね、その臭い袋はどこで買えるの?」

娘はキョトンとした顔で答える。

「近い場所だよ。ほら、坂の上のメゾンパークで。」

それを聞いた私はきっと顔面蒼白になっていたは違いない。

娘が心配して顔を覗き込んできたくらい、呆然としていたようだ。

メゾンパーク。それは、あの桜井カノが住んでいる住宅街なのだ。しかし、桜井カノがこの匂い袋の件に絡んでるかは不明である。そんな私の頭の中に確信が生まれた。

ーーあの時、彼女の部屋に入った時の違和感、あれは確かにお香のような匂い!繋がった。

「今夜は早めにバー巡り行くけど、大丈夫?」

家族への不安はないが、匂い件で早く解決にしなければ、という別の不安が沸き起こった。そんな私を見て、娘はにこっと笑う。

「いいよ、私ももう高校だよ。気にしすぎ!」

反抗期が過ぎたせいか、とても穏やかなこの子の笑顔は本当に癒される。本当に、必殺仕事人の気分だ。

「鍵ちゃんとかけてね。友達と夜出かけるならしっかり目的地を…。」

「わかってるって!早く行きなよー。」

娘の後押しにより、まだBARが開いてるかわからない時間だが、私は裏の住人御用達のBARへと急ぐ。

まずは、この匂い袋の話を共有して、桜井カノへの対策を練ることが必要だ。桜井カノを警戒しすぎなのも分かっている。だが、それよりも背中を伝う汗が止まらないのだ。


「おや?早いね、ルカ。」

BARの店主が軽い口調で言う。

このBARは、裏の住人が情報交換などをするのに利用しており、店主もそこを理解して私を微笑んで迎えた。

「ウシザキはいつ来る?急ぎの話があるんだけど。」

額に汗をかく私を見て、店主は静かに答える。

「いつ来るかは分からないよ。でも伝言は預かるから。」

たしかに、ここに来る予定など不明であり、私を含めほぼ全員そうなのだ。裏の住人あるある、である。

なるべく直に分かってること。伝えて、一緒にきて欲しかったが、いつ来るかわからない奴を待つほど余裕なかった。

「マスター、行ってきます。」

「いってらっしゃい。くれぐれも気をつけるんだよ。」

白髪混じりのロマンスグレイな紳士、それがこの店のバーテンダーだ。オーナーでもある彼は、みんなからマスターと呼ばれている。バーテンダーのスキルも超一流で、世界大会も出たことがあるとかなんとか。そんなマスターが少し眉を顰めて不安そうな顔をしたこなど私が知るはずなく、急いでメゾンパークへと赴くのだった。


つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ