2-2: 違和感
調査の最中、声をかけてくれた女性と出会い、そして家に招かれる。そこで彼女の正体が少し分かるのだが。、
閑静な住宅街で出会った、桜井カノ。
彼女はすらっとした細身で、腰まであるような長い髪を後ろで一つにしており、さながらモデルさんと言ってももいいぐらいの妖艶な美女だ。
「今日は暑いですね。汗を拭くタオルはいかが?」
部屋に招待されて入った部屋は、なんとも女子らしい白とピンクをメインの可愛い装飾。私の彼女へのイメージが、シンプルでミニマリストだっただけに、違和感を感じた。
「ちらかっててごめんなさい。最近訪問者がいなくて。」
彼女のいう散らかってる定義が何かすごく気になるところだが、それよりもまずこの地域の情報を得ねばならない。
汗を拭くためのタオルをもらい、すっと出された氷入りの水を飲み干す。カノと名乗った彼女は、私のその仕草を見て、にこっと無垢な笑顔になった。私はなんとなく恥ずかしくなって、モジモジと下を向く。
「何から何まですみません。とても冷えました。ところで」
その先を話そうとした刹那、カノが突然泣き出したのだ。
ポロポロお涙を落とし、私の方へと近寄る。
「ねぇ、私たちお友達になりましょう。この辺では私のお友達がいないの。。お願いよ。。」
話を聞くと、主婦同士の嫌がらせをうけて孤立してると言うのだ。女同士いろいろあるのだろうが、私にはあまり関心のない話である。が、何故かこの女性に流されてる私もいて、自分でも信じられない一言が口をついて出てきた。
「い、いいですよ。私もこの辺のこと知りたかったので、是非お友達になってください。」
桜井カノは、涙をそのままに笑顔となる。美女が泣く姿にどうも弱い私は、なんとなく彼女に寄り添うこととなった。
その言葉を聞いた桜井カノは、ぱっと表情が変わる。
「良かった、じゃあこれでお友達な印、あげます。」
泣いてたはずの彼女の顔がなぜか歪んで見えた。目を擦り、ふと見上げると、桜井カノが私の手をぎゅっと握ってくる。
彼女は口角を上げて、よろしくねと耳元で囁いた。
「痛…っ…」
私は思わず声を上げる。彼女の握手がかなり強かった、だけではなく、何かチクッとした痛みがあったのだ。
「あ、ごめんなさい。つい。」
すぐ手を離してくれたおかげで先ほどの痛みはもうない。
自分の手を見ても何も変化がないので、手荒れか何かが当たったのだろうとその場はやり過ごす。
いや、そうせざる得ない状況ともいう、彼女の強引なスタイルが私には少し苦手なのだ。そして、満面の笑みで彼女はこう告げる。
「これで、貴女も仲間ね。ようこそ、イルマナ教へ。」
おもむろに、桜井カノは部屋の右奥を指さした。
そこにはさらに部屋が続いており、うっすらと何かが光っている。黄色?いや、黄金のような輝きが何らかの明かりで揺らめいているのだ。
「仏壇…?」
「あら、もうその中が見えたのね。才能あるわ。」
嬉しそうにそう言うと、桜井カノは、私の背後に回る。
そして、またチクっと背中で痛みが走った。
「気にしないで、ちょっとしたおまじないよ。」
またもやその痛みはすぐに消える。何が何だかわからないが、その声で私は我に返った。
「今日はそろそろ失礼します。もう夕方近いので帰らないと。また、遊びにきますね。」
何の情報も得てない。なのでまたここを拠点に次は色々話を聞きくればいいから、そんな言い訳が頭に浮かんだ。
1つ分かったことは、この桜井カノは謎ということ。
何かの宗教の信者のようだが、私はその辺に全く興味がない。宗教はキリスト教だけでいいと言う考えなのだ。クリスマスのケーキがあれば別にいいや、という安易な考えである。
そんな私を、にこにこ笑顔で見送る彼女に、変な違和感をさらに感じていたのだった。
つづく