2-1 : 出会い
ウシザキからきた依頼の場所は、閑静な住宅街。
そこで足がかりになる物を見つけようとしたが。。
ウシザキが持ってきた仕事はいつも面倒だ。
今回は、新しくできたであろう、臓器売買のルート探る。
それだけではなく、そのルートの窓口が主婦だと言うではないか。ウシザキの言った通り、これは私案件かもしれない。
「ウシザキめ。。」
苦虫を噛んだような表情で、車から降りた。外には小学生らしい子供がいたが、私の険しい顔を見るやいなや、大慌で逃げ出してしまう。そんな怖い顔してたかな。。
ちょっと悲しい。そういえば、最近いつもと違うことが多くなってきた。
街を歩けば、明らかに闇の人間がふらっと話しかけてくるなんてことが最近増えたのである。それだけならまだいいが、、主婦仲間と歩いてる時は特に困るのだ。
同じ匂いを嗅ぎ付けてるのか、そんな気もしなくもない、
【裏は表になり得ない。表は簡単に裏になる】
昔読んだ本にそんなこと書いてあった覚えがある。
まさに今の私なのだろうか。もう裏の住人からはさくっと戻れる気がしないのだ。その反面、戻れるともまだ期待している。私は、どうしたいのだろう。。
さらに険しい顔になって悩む私の周りには人が全くいなくなっていた。やってしまった。。これでは仕事が捗らない。
「あのぅ、何かお困りですか?」
意気消沈していた私に、ほんのり甘い香りを漂わせる女性が声をかけてきた。大袈裟ではなく、天使に見える!
「あ、この辺に引っ越してきまして。皆さんと仲良くなりたいと思い悩んでたら、皆さんに逃げ…避けられてしまってさらに悩んでました。」
非常に説明めいた言葉を混ぜつつ、私可哀想でしょう?という表情で、声を震わせる。
「あら、それはお可哀想に。よければ、私の家においでなさいな。お茶をご馳走しますから。」
にこっと優しい笑みを讃える女性。ありがたいと思うその心は警戒心がはっきり生まれる。あのBARスサノオの女に化けたバーテンダーもその笑い方だったのだ。
初めての仕事で、しっかり痛い目を食らったあの悔しさは、今も忘れていない。とはいえ、目の前の女性は一般人かモもしれないし、、難しいところだ。
「裏の住人の特徴?そりゃ、1発でわかるぞ。」
ずいぶん前に、そうこの世界に足を突っ込んだあたりで、ウシザキに聞いたことがある。裏の住人とそうでない人の特徴は何か、と。ウシザキは屈託のない笑顔でこう言った。
「なんとなく、だよ。だが、すぐ分かる。それの発している空気みたいなもんが明らかに歪んでんだ。分かるか?」
….全くわからない。今も分からない。
またもや悶々と考えていると、いつままにか声かけてくれた女性の家に着いたようだ。
女性の家は、小さいアパートタイプで、珍しいことにかなり戸数の少ない平屋である。長屋?とも違うそれは、とてもモダンな若者が好きそうな外観だった。
「すみません、気づいたら着いてきてしまいました。」
悩んでたとはいえ、そこそこ警戒心の強い私が何も考えずに誘導されてしまったことに驚いていると、女性ははっと手を自分の口元にもっていって、慌てて喋り出す。
「そうよね、いきなり連れてきてごめんなさい。でもあまりにお悩みだったからつい。。」
そして、女性は凛とした表情に代わり、静かに続けた。
「私は、桜井カノ。ここらで主婦してます。」
さくらい、かな。そう名乗る女性は40歳もいかない、いやもっと若い感じの美人であった。微笑を讃える美しき桜井カノの本当の姿は、意外にも早々に分かることとなる。
つづく