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監視兼護衛報告書



 初めての他者視点です。

 書いていて楽しいのですが、いつもよりだいぶだいぶ少なめになってしまいました。


 ご容赦願いたいです。


 この話は2/3です。



sideブリード11世国王


「新しい書類、こちらに置いておきます」

「うむ。ご苦労」


 見慣れない見慣れた(何処にでもいる顔の)文官が、我の執務室に書類の束を抱えて入って来た。

 それを区切りにふと時計を見てみると、時刻は深夜2時に及ぼうとしていた。


 なんて事だ。普段より2時間多く仕事をしていたとは。どおりで体が重くなるわけだ。


「皆よ、本日は終わりとしよう」


 そう告げると、比較的若輩の特務文官たちの表情が『ホッ』としたのがわかった。

 長く勤めてくれてるベテランや、リック(宰相)は流石に涼しい顔のままだ。


 本日は終わりにすると言っても、すぐに終われる訳ではないためにルールを設けた。

 終わりと言ってから、新たな書類を3枚処理した者から上がって良いと言う事にしてある。

 でないと、国王たる我に遠慮して仕事を続けていたからだ。勿論、このルールは我自身にも適応されるため、3枚きっかり片付ける。


 1枚


「それでは私はこれにて失礼致します」

「うむ。今日もご苦労だった。明日もまた頼む」

「はい。おやすみなさいませ」

「其方こそゆっくりと休むが良い」


 ここに配属される者は皆、優秀である事は疑いようもない。その中でも早く帰っていくのは、ベテランの特務文官たちだ。

 2枚……む。これは終われぬな。


 2枚目を片づけ終えてから3枚目を手に取って目を通した瞬間、我は徹夜を確信した。


「諸君、仕事だ」


 分かるが、そう顔に出すな。


「今やっている書類を終え次第、隣国ギルバラの対応に入れ。大臣たちを呼ぶのも忘れるなよ」


 優秀な者たちだから忘れるはずもないが。


「それから、3グループに分かれて睡眠を取れ。睡眠時間は1時間半とする」


 1グループが寝てる間に2と3のグループで仕事を進め、1と2が交代して2が睡眠に入る。

 3が1に情報共有をして…今度は2と3が交代する。少しでも寝ればミスを犯しにくくなる。


 さて、我はさっきの者が運んできた書類を読むとしよう。あの者は我が国の暗部を纏める影狼(かげろう)の部下だろう。


【監視兼護衛報告書 

 対象ーシヴィ・ダンシャク


 監視兼護衛担当者

 本名 ■■■■■■ 別名 双牙(そうが) 偽名 ドゥ


 以下本文


 監視対象(以下対象)宛に隣国ギルバラから秘密の使者(以下黒煙)が現れた。

 話の内容は、既に■■■(以下影狼)も知っていると思われる隣国国王と第一王子が臥せった事と関連する。

 日付が変わってまもない時間に対象が寝室を兼ねる自室に入ってきた。


 入ってすぐにドゥ(以下|左牙)と会話をし、黒煙をすぐに看破した。

 対象と黒煙が話を始め、本題に入ったすぐの時に侵入があった。


 敵の攻撃を防いだ。対象は無傷。


 窓から1人(以下()虫)が入ってきたため、対象と■虫の間に位置取る。黒煙は退路を断つ窓前に位置取った。


 一瞬の膠着状態の後、対象の背後となるドアから1人(以下■■(馬鹿)鼠)が侵入してきた為に、昼のドゥ(以下右牙)が対象と■■鼠の間に位置取った。


 対象は、室内を土足で踏み込まれた挙句に血で汚れたり荒らされたりするのを憂慮して、対象がスキルを5回連続で発動した。

 スキルによって量産された物は堅木製のクローゼット。

 それによって窓を塞がれた為に、物理的に退路を断たれた■虫が一瞬動揺したのがわかった。


 その一瞬の間に対象が■虫を気絶させた。その腕は、影狼に匹敵し得るものであった。

 これは双牙も黒煙も同意見である。


 ■■鼠の方は、部屋に入る前から気配断ちが甘く、ドアの音鳴り仕掛けにも引っかかっていて未熟であった。何を考えての人選か知らないが、■■鼠に敷地内の防衛を潜り抜けられるとは思えないことから、恐らく■虫の侵入時に幾人か殺されたものと考察する。


 ■■鼠の方には双牙と黒煙の3人がかりで瞬時に身柄を拘束し、■虫と一緒に右牙が拷問にかけて情報を絞り出した。


 ギルバラ王国の王家失墜を企んだ貴族による襲撃依頼であり、対象と黒煙の排除が命令であったようだ。


 その後、黒煙の話に同意した。


 細かいところは直接報告する。


追伸


 対象の最大魔力量は、対象の住む屋敷の内装ごと複製出来る量であると判明した。

 エリクサーで言えば3つ分だと。


報告以上】


 ふう。

 いったい彼は何者なんだ?影狼と同程度の腕を持つなど普通じゃない。

 影狼は国1番の腕利きだぞ?

 10歳の子供が……おかしい。市井での話を聞いてから生家を調べさせたが至って普通だ。

 何処にでもある中流階級のそこそこ繁盛してる商家、そこの後継ではない次男。裏なぞなかった筈だ。ミスか?突然変異か?神告か?


 もう一度、冒頭から読み直した後に報告書を宰相に渡す。


 いや、神告は有り得ぬな。

 もしそうだとしたら、教会の連中が気付かないわけがない。その、奴らが騒いでいないという事は神告では無いという事になる。


 突然変異も……考え難い。有り得ぬとは言わんが、限りなく無い。そもそも聞いたこともない。


 ミス…なら理解できる。辻褄が合う。合致する。

 ミスと言っても、調査した人間のミスではなかろう。誰か知り得ない存在に邪魔、撹乱、誘導などをされたのだろう。

 恐らく、シヴィ・ダンシャクの師となる人物からな。いや、間違いない。


 齢10歳にして、我が国1番の影狼に肩を並べるほどの者だ。天賦の才を持っていたとしても、それを育てる者で生き死にが決まると言っても過言ではなかろう。

 影狼を超える者か…。敵に回らなければ良いのだが…。



 それよりも、僅かに黒塗りされてた部分は何て書いてあるのだ?

 影狼の事だから、関係ない部分ではあると思うが…。


「いつでも抜け出せて、何処にでも入れ、瞬時に無力化することができ、エリクサー3つ分を量産できる魔力量を持ち、未だ成長途上…手に負えませんな」

「厄介な…」

「そう言えば、ルー姫さまが入り浸っており、仲は良好だと伺っておりますが?」


 む?宰相は遠回しに、ルーをシヴィに嫁がせろと言っておるのか?

 うぅーむ、政略結婚と言っても過言ではないが、それも有りだろう。

 ルーを手元に置いておけると言っても過言ではないし、シヴィをこの国に留めておける…いや違うな、ここに留めておける事にも利がある。


 ふむ、この話を表面化させるのは今少しだけ早いが、いざという時はすぐに行動できるよう準備だけはさせておこう。


 一流に育てられた裏の人間が、情に絆されるとは思い難いが…万に一つでも可能性があるならば考慮するのが我の仕事だ。


 だがまずは、判断能力を鈍らせないようにする為にも少し寝なければならぬな。


「さて、我も取り敢えず寝る。リック、何かあれば起こせ」

「はい。おやすみなさいませ」


 いったい、どれくらい寝れるのか…。

 1時間は通しで寝たいものだな。

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