接敵!隣の国の暗殺者!
ストックの話ですが、なんだか主人公とメイさんが暴走してて筆が走ってます。
早くそこまで投稿したいので、本日は3話同時投稿×3です。
この話は1/3です。
「寝る前にコーヒーを飲まれますと、目が冴えて寝付き難くなってしまいますよ?」
「そ、そうだね。うん。飲むのは明日にするよ」
「ふふっ、そうなさってください」
「おやすみ、ネレ」
「おやすみなさいませ」
もうすぐで今日も終わるけど、今日は珍しくメイド長のウィーとメイド副長のメイジュさんがおやすみだったんだ。
だから、今日はネレディーナ・フラーさんが代わりに僕付きになってくれてたんだ。
ふぁああ……眠い…。
「眠そうにしてるところ悪いが、お知らせだ」
「やあ、ドゥ。僕の前に姿を見せる(見えてないけど)ってことは、相当な事なのかな?」
「ああ」
「それは、ベッドの下に居る人に関係した話?」
「ああ」
はぁ。僕もう寝たいんだけど…仕方ないか。
相変わらず影にいて姿が見えないや。
「で、御用向きは?」
「ベッドの下に居る奴は、隣国の暗部に所属している人間だ。何やらアンタに頼みがあるそうだ」
「ふぅーん」
頼みがあるそうだ…って言ってるけど、絶対にドゥも話を聞いているよね。その上で、僕に話を通しても問題ないって思ったから、こうして僕と接触させたんじゃないかな。
僕ならそうするから。
にしても、隣国の暗部の方ね…。
何か悪い予感がするのは僕だけなのかな?
暗部と一口に言っても、その中でも色々と部署が分かれてると思うんだよね。
例えば、情報収集を専門にする諜報部、集まった情報の精査をする情報管理部、闇に葬る暗殺部、他国のスパイを見つけて排除する防諜部、国王や賓客などを守る要人警護部。
まあ、ざっと上げるだけでこんなもんで、本当はもっと色々とあるだろうけどね。
「話しても良いぞ」
「事前に連絡もせずにいきなり接触した事を、先ずはお詫びします」
「あ、はい」
これまた中性的なお声ですね…。やっぱり、国の暗い部分に居る人物の上の方の人間は、特徴がない人が多いんだね。
それにしても、やけに丁寧だなぁ。
公式な訪問じゃないわけだから、記録になんて残ることもないし…普通なら情報伝達を優先するから単調な口調になるはずなんだけど。
やっぱりコーヒーを用意して貰えばよかった。
それも、最近は少し飲めるようになって来た苦目のを。
「それで?」
「我が国の国王陛下と第一王子殿下が、ほぼ同時にーーー」
ドスッ…ドサッ
暗い部屋の中に、何かが何かに刺さった音がして、瞬き2回くらいの間に何かが落ちる音がした。
部屋の暗がりにも目が慣れてたから何が起こったのか分かるけど。
僕が考案した音鳴り窓から無音で侵入してきた影が投擲したナイフのような物に、ドゥがいる方向から分厚い木の板?の様なものが飛んできて、それにナイフの様なものが深く刺さったんだ。
で、ナイフの慣性と木の板の慣性によって、僕の左斜め前方に落下した。
なるほど、これなら攻撃を防げるし、得物が刺さっているわけだから落ちてるものを再利用されることのまずない…実に合理的な方法だね。
難点は、こっちも相手の武器を再利用することが出来ない所と、持ち歩くには嵩張るし重いって所、弾くわけではなく刺さらせる為だから習熟が必要な所…かな。
「まさかここまで侵入してくる奴がいるとは…。いや違うな。ここまで侵入してこれる奴が居るとは…だな」
うんうん。僕のトラップも作動しなかったし。
「でも、間が悪かったね」
僕は起きてるしドゥも居る。お客さんの腕も相当立つみたいだし。
「何者だ?」
ドゥは僕の前に立って、お客さんは敵の背後に回って退路を断つ位置取りをする。
ん?僕の背後にドゥの気配がするけど…え?
「そのまま前向いていろ。俺は昼のドゥだ。本来なら昼の警護担当だが、そうも言ってられないだろ?」
え?マジですか?一卵性双生児ですか?ってくらいに気配とか仕草とか一緒なんだけど…。
あー…もう一つ知らない気配が背後から…。
ぎぃいい……
「お、仕掛けが上手く作動したっ」
「その前に、気配の断ち方がなってない。だが、確かにこの仕掛けは有用だと証明されたな」
「ちょっと待って?侵入してきた人たち土足じゃない!?」
土足文化でも、家の中で靴を脱ぐ人も居るみたいだけど…侵入者がご丁寧に靴を脱いでくれるとは思えないんだよね。
となると…文字通り土足で踏み荒らされてる事になるのか。うん。怒髪天を衝く心情だよね。
「仕方ないな。『量産』『量産』『量産』『量産』『量産』」
スキルを多発して家具を量産して窓を塞いだ。
「1人確保」
初めて見る光景に、さすがの暗殺者さんも口をあんぐりと開けてる。ように感じる。
だって覆面みたいなの被ってるから、表情が全く分からないんだもん。雰囲気で感じたんだよ。
だから、容易く無力化できた。
頸動脈を特別な抑え方をする事で、一瞬…時間にしたら約0.2秒位かな?
少なく見ても400年は続く雲隠流の技術、とくと味わうが良い!!
味わう余地もなく気絶しちゃうんだけどね?
「くっ!…ぐっ…があ!」
「Two down. All clear」
ドアから入って来た方は、昼ドゥと夜ドゥとお客さんの3人を相手に瞬殺されてた。
瞬殺って言っても、殺したわけじゃなくて無力化ね?
「見事な手腕だったが、護衛対象がやる事じゃないぞ?」
「僕の部屋を汚されたくないからね。土足ですら嫌なのに、血とか流れたら絶叫ものだよ」
「潔癖なのか?」
「その癖の鱗片はあるけど、そこまで酷くはないとおもうよ。みんなも、ベッドを土足で汚されたくないでしょ?」
「だとしても…だ」
外で何を踏んだのか分からない靴で汚されたら嫌でしょ。これは日本人の気質なのかもしれないけどね?
何にせよ、カーペットが土足で汚された以外の被害は無かったのが、1番の朗報だね!2番目は勿論、侵入者を両方とも無力化できた事だね。
これで情報を入手出来るようになるからね。
「それじゃあ、俺はコイツらから情報を搾ってくる」
「お願い、昼ドゥ。さて、お話の続きを聞かせてくれないかな?」
「はいーーー」
「なるほど…」
要約すると、お隣のギルバラ王国の国王様と嫡男の第一王子様がほぼ同時に病に臥したって事で、相当な難病らしく、それを治す特効薬は無いらしい。
唯一の治療方法は万能神薬と言われるエリクサーだけらしいんだって…。ファンタジーだね。
まあ、僕が異世界たるここに居る事も、万能神薬たるエリクサーがある事も、全てファンタジーじゃないんだけどね?
話を戻すけど、エリクサーの作り方って言うのは各国で異なるらしい。材料や製法、掛かる時間とか。一つ作るのに、最短で5年、最長で8年。
でも、効果は全部同じなんだって。不思議。
それで、ギルバラ王国にはタイミングが悪いことにエリクサーが一つしかないんだって。
あと半年もすれば一つできるらしいんだけど、進行が早い病気だからそこまで保たないと。
そこで、隣国であるこの国の僕の話を聞いてやって来たそうです。
「うぅーん…協力したいのは山々なんだけど、僕は自分のためにしか力を使っちゃいけないことになってるんだ」
王さまに、いいよーって言われたら協力してあげられるけど、王さまに話は行ってるよね?
公式な使者も向かってるらしいけど、念玉による連絡と、非公式な使者からの手紙の2通りで連絡がついてるはず。
僕のところに来てるってことは、多分協力しても良いって事になってるとは思う。
「国王陛下からの許可は得ている。自国のエリクサーを他国に渡すのは了承できないが、他国のエリクサーが分裂することはどうする事もできない…と」
「ははっ、そうだね!エリクサーが分裂して同じ効果を発揮できるなんてことは、摩訶不思議な事だから誰にも止められないよね!」
「と言う事は…」
「お引き受けします」
「非公式ながら、主人に変わり深くお礼申し上げます」
打算が無いわけじゃないし、僕からしたら大した労力でもないから無問題!
それよりどうやって運んでくるんだろう。
「予定通りに使者が進めていれば、こちらに着くのは明日の夕方頃になります。一つお聞きしたいのは、どの位の物まで量産が可能なのかと言う事ですが…」
「それは国家機密に該当する。代わりに俺が聞いて、可能かどうか判断する」
「わかった」
ギィと音を立てて開いたドアから暗部の方が出ていくのを見送ってから、夜ドゥと話をする。
「それで?限界はどこだ?」
「んー…多分、このお屋敷くらいかな?」
「は?それは……内装も含めてか?」
「そうだね」
「なら、余裕だな。何なら3つくらいは量産できるんじゃないのか?」
3歳から毎日使ってたからね。成長期だから魔力量の伸びも良いのさ!
でも、エリクサーもとんでもない物だね。このお屋敷の内装物ごと量産(複製って言った方が合ってるけど)できる魔力量で、3つくらいしか作る事が出来ないんだから。
内包する魔力がどれだけの物か……。
ん?そう考えたら…人も……いやいやいや!ダメダメ!この思考は危険すぎる!
クローンって言って良いのか、それとも他の何かになるのかは分からないけど、流石に禁忌だ!
はぁ…取り敢えず、僕はもう寝ても良いかな?
部屋を汚されて、魔力を使って家具を増やして、犯人の1人も無力化したんだよ?
10歳の僕はもうお眠だよ。
さて、増やした家具はどうしよう…。
「おやすみ」
明日の…もう日付的には今日だけど、取り敢えず何時間後かの僕に投げよう。
頑張ってね、未来の僕。