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嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる  作者: フオツグ
恋せよタゲツくん!

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「その話好きなの〜?」

「へ~。それでボクに頼りに来たんだ~。ダッサ~い」


 黒髪の女子生徒はクスクスと小馬鹿にしたように笑った。

 エイダンが紹介したのは、同じクラスのマゼンタ・ハイカカオチョコレートという少女であった。

 彼女は艶やかな黒い髪に、名の通り、鮮やかマゼンタ色の瞳を持っている。

 レイとキョーマは彼女の言葉に渋い顔した。


「おい、エイダン。こいつに頼んで大丈夫なのかよ?」


 キョーマがエイダンに小声で尋ねる。


「マゼンタはんは絵や彫刻みたいな美術的なことが得意なんや」


 それを証明するように、制服の至る所に絵の具がついている。


「適任やと思うんやけど、ちょっと口が悪くてな……」

「ま。まあ、先生に比べたら可愛いもんですよ」


 レイはパッと笑顔を作って、マゼンタに話しかける。


「あのそれで、タゲツくんの顔作り、引き受けてくれますか? マゼンタさん」

「ボク、そんなに暇じゃないんだよね~?」

「そこを何とか!」


 レイは手を合わせて、頭を下げる。


「は~? そんなほいほい頭下げるなんて恥ずかしくないの~?」

「う……」

「ってかさ~。ただの的当て用の的でしょ? そこまでしなくて良くな~い? あんたらに何の得もないんだしさ~」

「得はあります! 無機物の恋なんて、まるで『絵の中の少女に恋をした画家』の物語みたいですもん!」


 レイはリュックからサッとその本を取り出す。


「……へ~。あんた、その話好きなの~?」

「大好きです!」

「あはは~。ありがと~」

「なんでお礼なんか……」


 レイはそこまで言って、ハッとした。


「えっ!? もしかして、この話を書いたのって……マゼンタさん!?」

「あ~、違う違う~。その話を書いたネリッシモって人、ボクのパパなんだ~」

「パパさんが!? まさか、授業参観のときに来てたり!?」

「来てないよ~」


 マゼンタはケラケラと笑った。


「ボクのパパ、死んでるから」


 レイはサッと顔を青くさせた。


「あ……。すみません」

「こっちこそ、期待させてごめんね~」

「いえ……」


──でも、あの本、とっくにパブリックドメインだったような?

 ゼリービーンズ王国の法律では、著作者の没後七十年が経過したら、著作物は著作権を失う。

 それをパブリックドメインというのだが……。


「……あれ?」


──マゼンタさんって、あたしと同い年……?

 著作者が著作権を放棄すれば、同じくパブリックドメインになる。

 そっちだったのだろうか。

──でも、あんな素敵な作品の著作権、手放すなんて思えないけどな……。


「タゲツくんの顔作りだっけ~? 今ボク、すっごく機嫌良いから、やってあげてもいいよ~」

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます! 良かったですね、タゲツくん!」

『肯定。感謝 感謝』


 タゲツくんはその場でクルクルと回って、喜びを表す。


「顔をイケメンにするだけで良いの~? 体とかもやったげようか~?」

「良いんですか!? 是非お願いします!」


 □


 こうして、タゲツくんの新しい体が完成した。


「わあ! 本当に人間みたい!」


 レイは出来上がったタゲツくんの新しい体を見て、目を輝かせた。

 パーツの大きさ、手足の長さ、体の曲線は正に人間のそれである。


「顔もかっこいいですね!」

「でしょ~? 目は的のようにぱっちり! この土の量だと体は少し小さめだから、可愛い系イケメンにしてみたの~」


 マゼンタが「えっへん」と胸を張って言った。


「タゲツくん、どうお?」

『素敵 感謝』


 タゲツくんは感謝を述べた。

 レイはマゼンタの両手を掴む。


「こんなに素敵になるなんて! マゼンタさんに頼んで本当に良かったです! ありがとうございます!」

「……そんなに喜ばれると調子狂うな~」


 マゼンタは照れ臭そうにそう笑った。


「さて。ターゲットくんマークII」


 シャルルルカがそう切り出す。


「この体に、お前の魔法石を移す。さすれば、お前は晴れて人間の体が手に入る訳だが……。本当に良いのか?」

『肯定』

「少しは悩め。……まあ、無機物には難しいか」


 シャルルルカはため息をつく。


「では、少しの間、身動きが取れなくなるぞ」


 シャルルルカはタゲツくんに埋め込まれていた魔法石を取り外した。

 タゲツくんの魔法石は水色に輝いている。


「この魔法石の中に、タゲツくんの意識があるんですね」

「ああ。これを土の体に埋め込む」


 シャルルルカは新しい体の左胸に、タゲツくんの魔法石を捩じ込んだ。


「では、皆の衆、教えた呪文を。この体が人間のように動き出すイメージだ」

「はい!」


 レイ達は一斉に息を吸った。


ゴーレム生成(マルシェ・ゴーレム)!」


 子供達の声が図画工作室の中に響き渡る。

 そして、しん、と静まり返り、嫌な空気が流れる。


「……あ、あれ? もしかして、失敗!?」


 レイが慌て出すと、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。


「──感謝」


 タゲツくんの新しい体が、カクカクとしながら動き出す。


「クラスメイト、感謝。ありがとう」

「た、タゲツくんですか!?」

「肯定」


 タゲツくんは頷くように首をガクガクと動かした。


「やったあ!」


 レイ達は飛んで喜んだ。


「早速マジョ子さんに会いに行きましょう!」

「肯定」


 エイダンは「良かったなあ」と笑う。

 

「マジョ子はんなら、まだ図書館におるんやないかな。行ってきぃ」

「はい!」


 レイとタゲツくんは図画工作室を飛び出した。

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