「認めてないんだから」
ドロップ魔法学園、四年D組の教室前。
キョーマは扉の前で立ち止まっていた。
シャルルルカの計らいにより、キョーマは今日からD組の一員となった。
シャルルルカはキョーマを受け入れてくれた。
しかし、彼の生徒はどうだろうか?
彼女達を散々『落ちこぼれ』と馬鹿にしてきたのだ。
キョーマがクラスメイトになることを、受け入れられるとは思えない。
──また、除け者にされたら……。
マジョアンヌとの一戦以降、C組の生徒の視線が痛かった。
あんな思いはもうしたくない。
「私ならば、お前を強くしてやれるぞ」
「黙って、私の生徒になれ」
シャルルルカの言葉を思い出して、キョーマは深呼吸する。
──怖気付くな。俺はあの人に学びに来ただけ。他の奴らの言うことには耳を貸すな。
キョーマは意を決して、D組の教室の扉を開いた。
「──ようこそ、キョーマくん! D組へ!」
「……へ?」
意外にも、キョーマを出迎えたのはレイの笑顔だった。
キョーマはぽかんと口を開けたまま、その場に立ち尽くした。
「ほら、入って入って!」
レイがキョーマの手を引いて、彼を教室に招き入れた。
「れ、レイはん、何しとん?」
エイダンが尋ねる。
「これから仲間になるんですから、歓迎しないと!」
「仲間、だと……?」
キョーマが尋ねると、レイは大きく頷いた。
「はい! 打倒シャルルルカ先生の仲間です!」
「──へえ。私を倒すつもりなのか」
「ひょっ!? しゃ、シャルル先生!?」
突然、背後に現れたシャルルルカにレイは飛び退いた。
「た、倒すとかじゃなくてですね。如何に先生にサボらせず、授業をさせるかどうかを一緒に考えるって意味で……」
「ふーん? まあ、精々頑張りたまえ」
「あんたに一番頑張って欲しいんですけども!?」
キョーマはシャルルルカの前に出た。
「か、神様……! 今日からよろしくお願いします!」
そう言って、深々と頭を下げる。
シャルルルカは眉を顰めた。
「その呼び方は止めろ。私の名はシャルルルカだ」
「シャルルルカ神」
「先生だ」
「シャルルルカ先生……様」
「……もう、それで良い」
シャルルルカはため息混じりにそう言い、さっさと教卓へ向かった。
「さ、ホームルームを始めようか」
「──ちょっと待ってよ」
ブリリアントはガタッと立ち上がった。
そして、頬を膨らませながら、不満そうに言う。
「本当にキョーマくんをD組に入れるの?」
「『入れるの?』じゃない。もう入れたんだ」
「リリはまだ認めてないんだから! だってその子、リリ達に嫌がらせしたのよ! そんな子と一緒に授業なんて絶対嫌!」
「そうか。それで?」
「え? ええと……」
ブリリアントは困ったように目をきょろきょろさせる。
ハッと何かを思いつくと、シャルルルカを睨みつけた。
「……リリ、授業に出ない!」
その言葉に、隣に座っていたジュードがため息をついた。
「リリちゃん、またボイコット?」
「ジュードくんも来るの!」
「え。いや、僕は授業出る……」
「良いから一緒にボイコットするのー!」
「ああ……」
ブリリアントはジュードを引き摺りながら、教室を出て行った。
「リリさん……」
レイはしゅんとして、それを見送った。
「まあ、あれが普通の反応だろ。歓迎するお前が変」
キョーマはそう悪態をつきながら、端の席に腰掛けた。
「変じゃないです! あたしはキョーマくんと仲良くしたいだけですー!」
「物好きだな……」
口ではそう言いつつも、キョーマは嬉しそうに口元を歪ませた。
「なんか……穏やかになりましたね。ずっとイライラしてたのに」
「まあ……。本当の格上を見つけちまったからなあ」
キョーマは熱い視線をシャルルルカに向ける。
──シャルル先生を『本当の格上』として見てて良いのかな……。でもまあ、キョーマくんが穏やかに過ごせるなら良いか。
「でも、リリさんはなんであんなにボイコットするんでしょう? 授業受けなくて困るのはリリさん自身じゃないですか」
レイは疑問を口にする。
「……おそらく、先生を信用してないんですわぁ」
マジョアンヌが悲しげな顔で答えた。
「そりゃまあ、シャルル先生は信用出来ないでしょうけど。それだけじゃないような」
「前の担任の先生のこともありますからぁ……」
「前の担任の先生……。そういえば、全く話に出ないですよね」
「……話したくないからでしょうねぇ」
「話したくないって……」
マジョアンヌはちらりと、エイダンの顔を伺う。
「……話したってもええんちゃう? 別に隠すことでもないやろ」
「そう……ですわねぇ」
マジョアンヌは下を向き、少し悩んだ後、顔を上げた。
「お話ししますわぁ。リリちゃんと前の担任の先生の間で、何があったのか……」




