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お見合い写真にプランクトンが写っていました

作者: 佐々雪
掲載日:2019/06/04

「おい、引きこもりニート。おまえの大好きな、小さい女の子をみつけてきてやったぞ。だからそろそろ、二次元とかロリコンとか、そういうのはもう卒業しような。はやく身をかためような。というわけでほら、これ。お相手のお嬢さんのお見合い写真」


 といって、親戚のおっさんがお見合い写真を手渡してくる。みると、毛のはえた緑色のプランクトンが一匹、水の中を元気に泳いでいる。


 さすがになにかの冗談かとおもい、おっさんの顔を見てみる。しかし、ドヤ顔である。もう一度写真に視線を落とすと、そこにはやはり一匹のプランクトンがいる。彼女はおそらく、ミドリムシという種類のプランクトンだろう。理科の教科書で見たことがある。


「確かに小さいですね」


「おお、そうだよ。かわいいだろ」


「まあ見ようによっては、かわいいのかもしれません。いや、かわいいのでしょう。しかし彼女は、人間ではなくプランクトンです」


「そうだよ。だから何なんだよ」


「お見合いを成立させるには、種族の壁を何段階か越えないとです」


「はあ。種族の壁ねえ。そんなもん、越えりゃあいいじゃねえか。少なくとも二次元の女の子と結婚するよりは、めちゃくちゃ現実的だろ?」


「まあ、それはそうですが……」


「だよなあ? 次元の壁を越えるのは不可能だろ? でも、種族の壁なら、気の持ちようで越えられるじゃん。完全にお前の気持ち一つ」


「うーん……」


「ってことで、お見合いセッティングしとくわ」


「いや、待ってくださいよ。私にそんなつもりはありませんよ」


「はあ? 何が嫌なんだよ! いい子だよ。ほら。プロフィールみてみろよ。写真の裏側に書いてあるやつ」


「プロフィール……」


 写真を裏返すと、たしかにそこには手書きのプロフィールが記されている。おっさんはそれを一つづつ、読み上げる。


「はい、まず名前ね。夕宮ゆうぐうレナちゃん」


夕宮ゆうぐうレナ……ゆうぐうれな……ユーグレナ……。なるほど、ミドリムシの別名ですね」


「そう。それから趣味ね。光合成。うーん……これはまあ、なんかファッションメンヘラっぽいけどさ。そこがまたグッとくるだろ。こないか。いや、こいよ。贅沢いってんじゃねえぞ、このクソニートが!!」


「私は何も言ってないですよ……」


「でも、思ってただろう? いいじゃないか、趣味、光合成」


「趣味というか、生命活動ですよね」


「そういう捉え方もできる。食費もかからないし、いいことだよな。あ、それから彼女はスペックも高いぞ」


「プランクトンにもスペックがあるんですね」


「あるある。実はな。彼女は動物性プランクトンでありながら、植物性プランクトンでもあるんだよ。だから自力移動もできるし、光合成もできるフゥー!!」


「はあ……それってすごいんですか?」


「いや、すごいだろ。 RPGでいうところの、賢者とか赤魔道士みたいなもんだぞ、これ。回復魔法も攻撃魔法も使える系のレアキャラ。ただし成長度、低、みたいな」


「意味がわかりません」


「じゃあ次。特技は、鞭毛べんもうを使って、動き回ること」


鞭毛べんもう?」


「ほら。身体からアホ毛みたいなの出てるじゃん」


 おっさんは、写真のプランクトンから生えている毛を指差す。


「ああ、これか。確かに、そんな名前だった気がします。しかし、明らかに重要な器官っぽいですよね。これをアホ毛といってしまうのは、なんか気が引けますが」


「まあ、それもそうだな。それは置いといて、お前さ、引きこもりだから動くの嫌いだろ? 一緒にいたら、動き回るの楽しくなると思うぜ」


「いやしかし、やはりプランクトンはちょっと。私には素敵すぎる方なので、今回は辞退させて頂きたく……」


「というと思ってな。実は今日はもう、呼んでいるんだ。というわけで、夕宮レナちゃん、カモン!!」


 とおっさんが言うやいなや。

 緑色の物体が、高速で私の方に飛び込んでくる。


 危ない!

 とっさに身をかわそうとするが、かわしきれず乗りかかられてしまう。


 自分にのしかかる物体にあらためて目をやると、そこには緑色の髪に、赤い眼をした女の子がいる。


「わーい!! お兄ちゃん、会いたかったよーー!!」


 のしかかられながら、ぎゅーっと抱きしめられる。


「え、なになに。誰!?」


 びっくりした私は、思わず彼女をはねのける。

 そして対峙する。

 彼女が、夕宮レナさん……??


「あなたが、夕宮レナさん……??」


「そうだのー! ボクだよー! ってか、覚えてないのーー!? ひどいーー!! あっ、そうだ!! この写真見たら思い出すかな?」


 彼女は胸元から写真を取り出してみせる。一匹のミドリムシの周りを、五匹のミジンコが取り囲んでいる。


「いや、自分の人生にこういうシチュエーションの記憶はないです」


「ひっどーい!! 乙女心盗んでおいて、知らぬ存ぜぬ省みぬかよ!!」


「いや、盗んでないですよ。というか、これはなんのシーンですか?」


「ボクがミジンコにボコられかけてたところを、お兄ちゃんが助けてくれたの!!」


「……うーん? やっぱり身に覚えがないなあ」


「うー……お兄ちゃんあのとき、小学生だったからなあ。学校帰りに水たまりを、棒で引っかき回してくれたの。あのときに水たまりの中にいたのが、ボクだったの!!」


「知らない間に善行をつんでいたんですね」


「ボクね。種族の壁を越えて、お兄ちゃんに会いにきたの! お嫁さんになるの!! がんばってかわいいお嫁さんになるの!!」


「いやいや、ちょっとまって。レナさんは種族の壁をどうやって超えたの? プランクトンなんだよね? どう見ても人間の女の子なんだけど」


「えへへ、ボクね。転生を繰り返したんだよ!! それで今は人間に生まれ変わることができたの!! お兄ちゃんのこと忘れなかったボクをほめて!!」


「うーん。にわかに信じがたいです。前世、そのプランクトンだった証拠はありますか?」


「それな。ボクはこのアホ毛に、若干の名残りがあるとにらんでいる」


「アホ毛言うな。重要な器官でしょ。というか、証拠として薄いなあ。他にはないの?」


「あるよ!! ボクね、光合成できるの!! 光合成って超便利だよ!! お兄ちゃんもマスターすれば、死ぬまでひきこもれるよ!!!」


「え、ほんと? 死ぬまで働かずに、部屋の中でシャドーボクシングしてても大丈夫?」


 にわかに心がときめきはじめる。


「大丈夫だよ。お兄ちゃんが望むなら、世界は何だって可能なんだよ。人が思うことなんて、大抵は実現可能なんだから」


「私に光合成を教えて下さい……!!」



 そうして私は結婚を決断した。


 それから三年が経ち、私は光合成を完全にマスターした。


 日々、部屋の中でシャドーボクシングを繰り返している。少なくとも、光合成さえしていれば、食べるものには困らない。就職などしなくて、本当に良かったと思う。


 日課であるシャドーボクシングを終えると、かわいい女の子が、笑顔でタオルを渡してくれる。夕宮レナさんだ。


「おつかれさま、だんなさま! お風呂にする? 光合成にする? それとも……」


「ごくり」


「光、合、成?」


「光合成、二回出てきた」


「大切なことなので」


「そうですね。これからも二人で、ずっと光合成できたらいいですね」


 タオルで汗をふきおえる。


 すると彼女は、ゆっくりと大きく息を吸い込む。


「んーん。二人じゃないの。あのね、ボクね……」




─ 完 ─



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― 新着の感想 ―
[良い点] 奇抜なアイデアだけは良かったかなと思います。 [気になる点] すごい無粋なことを書いてすみません。 1.人間に転生してミドリムシの名残がある、というのは設定としてわかります。 2.ですが、…
2019/06/06 02:29 退会済み
管理
[一言] 良い話だったマルw
[一言] ナメック星人・・・。 いや良いんだけど。
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