子ども…。
俺が痛かった場所は…
どこだろうか。
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本当は殺しておくべきだっただろう。
そりゃそうだ。
顔を見られたんだから。
俺はいつもの森で登っていく太陽を見ながら、昨晩の事を思い出していた。
あの後、彼女とはすぐに別れた。
俺は名前をつけてもらい、名前をつけた彼女は満足そうだった。
だが、彼女に「 どうしてここにいるの? 」と改まった風に聞かれた。
やばいと思った。
そして、俺は何も言えずに去ってしまった。
もう、無様に。
尻尾を巻いて逃げたのだ。
そして、昨晩はそのこともあり、何も盗めなかった。
空腹に襲われながら森の中の川に向かって歩く。
森の中のけもの道を歩いていると、一匹の野ウサギが横切り、勢いよく茂みに飛び込んでいった。
そのウサギが走っていったった方を覗いてみると、一匹だけではなく、何匹もそのウサギの子供と思われる小さなウサギたちがいた。
餌を欲しているのか、それとも親に会えてうれしいのか、とにかく子どものウサギたちは興奮しているようだった。
子供は一人では生きていけない。
俺には昔、母親がいた。
今はほとんど記憶にはないが、恐らくあの人は母親という関係であっていると思う。
その人は、怒ると怖かった。
殴ったり、刃物を向けられたりもした。
今ではもう街の人達に向けられ慣れたが、その時は本当に怖かったし、悲しかったのを覚えている。
そしてその人は、たまに家に帰ってきては食べ物を置いてすぐに出て行ったり、
いろいろな知らない男の人を連れてきたりした。
知らない男の人が来る時はいつもより長い時間、家にいる。
その時は、俺は部屋に入れられ「この部屋から出てはいけない。声を出してはいけない。」と強く言われていた。
その部屋は、当時の自分の身長よりも何倍も大きな本棚に囲まれた部屋だった。
俺は、普段からその部屋にいて一日中、本を読んでいた。
それが、楽しかった。
だから、どうしてあんな事をしたのか、今でも疑問に思う。
何をしたのか…
一度だけ、外に出てしまった。
男の人がいる時に。
普通ならそんなこと気にしないのだろうが、その人にとってはとても重要で嫌な事だったのだろう。
その次の日に、俺は捨てられた。
眠っている時に無理やり起こされ、まだ暗い中、もっと真っ暗で自分達の足音以外の音が聞こえない静かで不気味なところへ連れていかれた。
そして、もう二度とその人とも沢山の本とも出会う事はなかった。
主人公の過去を少し覗いてみました。
今年もあと少しで終わってしまいますね。
やり残した事や、したい事がたくさんあります。




