私の目的、それは
彼の決意は固いみたいだ。
復讐なんて何も生まない、とは考えないけれど過去を振り返るよりも、今この瞬間をどう生きるかを考える、そのほうが故人も浮かばれるでしょう。
私には理解できないな。
だけどもしも本当に再興出来たならば、シエルはいずれ王になるはずだ。
そして、魔族差別のない国を造るのだろう。
差別も時には必要な時代が在るのだろう。
だが、現代日本には差別なんて必要なかったのだ。
目に見える差別などしなくても、皆が生きていける時代だった。
イジメはあったけれどね。
だが、この時代には必要なことなのだろう。
彼の言うことを鵜呑みにするなら、差別はあったが奴隷は居なかったみたい。
王族様の言うことだから信用はできないけれど。
話を聞いた限り、彼の人生は魔国の王宮と、王国での出来事で完結しているのだから。
でも、彼の憎悪は本物だった。
まだ成人もしていないであろう魔族の少年は、自らを縛っている。
自分が今はただの一人の魔族になっているというのに。
ただの魔族としての幸せを享受することを良しとしていない。
自分の事よりも他人のことを考えてしまう。
多分それが、シエル・シュバルハイツにとっては普通なんだろう。
他人の事を考えることの出来る者は、愚王か、賢王か。
「そうか、君は復讐をするんだな。それが今の君には必要なことなのか。それならば、私は君に協力しよう。シエル、君がそれを必要とする限り」
この世界でも、地位は重要だ。
だから、シエルが本当に王国の再興が出来たならば、私を要職に就かせてほしい。
今の私は、ただの身寄りのない魔族だから。
シエルは困惑した顔をして私に問うてきた。
「なぜ貴女は、受け入れる?こんな血塗れた道を歩もうとする男に。しかも会ったばかりの俺に」
「おっと、勘違いしては駄目だよ。私は受け入れるのではなく、利用するんだ。私は君の国での地位が欲しい。故に君を利用するよ。私は君の復讐に協力する。どうだい、win-winの関係だ」
具体的な協力の方向性は決まってないけれど。
私には地位が必要だから。
手を差し伸べる。
シエルはその手をとった。
よし、これで言質は取れた。
「俺の復讐は、何を犠牲にしてでも、例え元国民を犠牲にしてでも成し遂げなければならない。それが皆の望みのはずだから。皆の望みを叶えるために、俺に力を貸してくれ、エトランゼ」
初めて私の名前を呼んでくれた。
協力するに値すると認められたようだ。
なんとなく嬉しくなった。
でも、哀れな人だと思う。
必死で笑いを堪えた。
心の中で嗤いながら私は答えた。
「ええ、よろしくね、シエル・シュバルハイツ」