好きモノたちの最期
「へへ、気を失っちまった」
にやけながら、男は早くもベルトを解きにかかっていた。
目の前には、衣服を無残に引き裂かれ、半裸のまま仰向けに寝かされた少女が、どこかに頭でも打ったのか、青白い顔で気絶していた。
「どうせ死ぬんだから、今生の名残に情けをかけてやろうってのに、無駄な抵抗しやがって」
少女を押さえつけている男たちの傍らに、また別の男が、ひとり不埒な行為には加わらず、腕を組んで佇んでいた。
その剃頭に薄い眉、髭のない顔。そのくせ見上げるほどの巨漢で、ゆるくまとった長衣がやけに広く見える。
その大男が、
「あんたらも好きよねえ。兵隊ってみんな、どっちもいけるクチ?」
と、野太い声で言った。
「へへ、陣詰めなんかが長引きますとね、どうにも辛抱たまらんってわけで、こういう味も覚えちまうんですよ。あ、ヤゴの旦那もどうっすか?なんからお先に、その……なくならないんでしょ?あっちの欲も」
「まあね。でも、やめとく。こんなところで、はしたないもの」
「こういうのがまた、風情があっていいんですがね」
「何でもいいけど、早く終わらせて部隊に合流してね。あんたが隊長なんだから。それに、あたし等が言うのもなんだけど、このへん物騒だし」
大男はそう言い残して、のっし、のっしと遠ざかっていった。
それを見送りながら、
「へっ。いくら強くっても、大事なところを切り落としちまってるなんて、なんとも気の毒なことだぜ」
とつぶやいて、少女を押さえつけている部下に命じた。
「おい、足を抱えあげろ。受け入れる態勢をとらせるんだ」
「へえへえ、ただいま。しかしまあ、こうしてると、まるで本当に女みたいな……」
「まあ見てろ。その人形みたいな顔を、ひいひい喚く泣き顔にしてやるからよ」
隊長らしき男が股引をずりおろして、お待ちかねのご馳走に生唾をのみ、いよいよのしかかろうと身をかがめたそのとき、
「あ痛ッ!」
と尻をおさえて振り向けば、いつの間に忍び寄ったのか、小柄なぽっちゃり系……スキピオが、慣れた手つきで短剣をくるくるとまわしていた。
その向こうにカトーも見えるが、こちらはかぶった鍋カブトもずれたまま、背負った大刀をまだ抜かず、だらりと両手をぶささげている。
「こんなところで汚ェケツを晒してっからだ。あのな、このへんは物騒なんだぜ」
「な、何者だ!」
「ザコのテンプレかよ。んじゃまァ、こう返そうかい。問われて名乗るもおこがましいが、人呼んで韋駄天のスキピオと発します、とくらァ」
「ワシはカトーじゃ」
「てめェらを殺す者の名前だ。そのうち追っかけてくから、先に行って、あの世で待ってな」