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沼地へ(ダンガガ視点)

来週土日仕事ゆえ、更新休みます。

 

 家々の間からのっそのっそと姿を現す化物達。

 それぞれ、形が違っている。

 イモムシに人間の手足を生やしたもの。巨大な顔に蜘蛛の足を生やしたもの。トーテムポールにように縦に並ぶ人の顔。

 どれ一つとしてまともな形は存在しない。それらが炎の作り出す陰影によって揺らめくその様はまるでこの世の地獄のよう。


 俺のすべきことはこの地獄をお嬢達を抱えたまま脱出すること。

 しかし、まぁ……

「どうすりゃ、いいだか。こりゃ……」


 そう呟きながらも足を止めない。

 周囲の状況確認も怠らず、だ。

 足を止めようもんなら、後ろから迫ってくるゲテモノにパクリと喰われちまう。

 戦場で死ぬのはまだいいが、こんな死に様はご遠慮願いたい。


 だから、頭を働かす。

 戦う?駄目だ。まず相手の強さが全く検討つかねぇ。

 そんな状態で、二人を守りながらなど、無茶としかいいようがない。


 じゃあ、逃げるか?

 しかし、村を出れば、あるのは真っ平らな平原だ。

 隠れるものや障害物があればいいが、そんなものあそこには存在しない。

 何しろ、お肉お化け共は、俺より数段大きいのだ。大きいということはそれだけで、メリットとなる。

 

 巨大な奴はどんくさい、とかいう奴は自分より大きいやつと戦ったことのないモグリだ。

 図体が大きければ一歩ごとの歩幅が大きくなる。つまり、それだけ早く、そして体力の消費を少なく移動出来るということだ。


 隠れる場所もない、となれば隣町まで逃げるしかないが、一時間以上全力疾走するなど俺には不可能だ。

 運良く隣町にたどり着いたとしても、あそこの兵力でこの意味不明な連中とまともに戦えるか微妙だ。


 しかし、そうなると……


「……沼地」


 風に混じってお嬢の声が聞こえてくる。

「ダンガガ、沼地へ行こう」

「何を言っていやがる。自殺願望でもあるのか?」

 沼地は足場が悪いわ。俺と相性の悪いゴースト系の魔物が出るわで。正直あんな場所にいくなんて正気の沙汰ではない。

「ちげぇよ!奴の足音聞け!」

 足音って? ドス、ドス五月蝿いとしか。あとは、歩くリズムが乱れているくらい……

「って、そういうことか!冴えてるなお嬢!」

 ならば、向かう場所はこっちじゃない。

 俺は、走る方向を変える。急に動きを変えたせいか速度が落ちたようだ。

 やばい!と思った矢先に……


「ふっ!」


 俺でも、お嬢様でもない声がする。

 それと共に、化物の悲鳴を上げ、そして僅かに速度が落ちる。


「サーシャ!」

「おお!目が覚めたか!」

 どうやら、サーシャが化物を攻撃したようだ。やつのはスリングと、弓矢の扱いは上手いからなぁ。しかし、担がれた状態だとすると使えるのはスリングだが、よく当てれたなぁ。


「無駄話は後です!」

 ま、そうだわな。

 折角、サーシャが作ってくれた隙だ。僅かながらの隙ではあるが、十分だ。

 俺は、家と家の間の脇道へと入り込む。

 はっ!その図体なら入れないだろうって……おおい!!

「ダンガガ!!」

「解っている!!」

 やつは、家を破壊しながら俺達を追いかけてくる。

 ガリガリと、建物を削りながら、進む肉塊君。何やら汁やら赤い液体とか吹き出していて気持ち悪い。

 だが、そんなの無視。ただ、脇道を抜けることだけを考えて足を動かす。

 

 脇道を通りすぎると村の外壁部。

 村の周りに張り巡らされた木の柵をそのまま体当たりで破壊する。

 その先にあるのはガウス沼地。だが、そこにたどり着くには森を抜けなければならない。


 夜の森に足を踏み入れる。夜の森には様々な生き物が存在する。

 ましてやそこはガウス沼地に通ずる森。まともな森ではない。


 木がレイラインの影響で魔物化したトレント。

 森から出てくることはないが、しかし同時に森に入るモノには容赦しない魔物だ。



 木に張り付いた苦悶した人の顔。

 枝を手にその手を伸ばしてくるが……

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 相手をしている暇はない。囲まれる前に、動きがとろいトレンドの間を走り抜ける。


 肉塊達の足音が少しづつ遠ざかっていく。

 何しろ、木々が邪魔するわ。森の魔物達も邪魔するわでまともに動けるはずがないのだ。


 しかし、そんな中、一体だけ離れずについてくる音がある。

「おい!何が付いてきている!」

「蜘蛛!人の顔をした蜘蛛だよ!」


 一体か。予想より上手く進んでいる。

 俺達はそのまま、走り抜き、そして、視界が開ける。


 そこに広がるのは黒々とした沼地。

 沼地といっても深さは様々、底なしの沼もあれば、泥濘程度のものまで、そして俺は何度か来たことがあるから知っている。

 目の前の沼が底なしだってーことを。

 しかし、俺は足を止めない。その底なし沼に向かって走る。

 幅にして15メートル程。小さいっちゃー小さいが立派な底なし沼だ。

 そのまま行ったら、底なし沼に真っ逆さま。

 だから……


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 お嬢の叫び。言われるまでもない

「オーバーヒート!!」


 2人を抱えたまま魔術が発動する。

 緑と沼の境目。そこを踏みしめ、前へと体を押し出す。。

 ドンッ!!と地面が抉れる。両足が地面から離れ、俺の重たい体が空を飛ぶ。


 僅かな滞空。そして、落下。

 勢い余って、前のめりに倒れる。

 お嬢と、サーシャが、投げ飛ばされ、泥を被っている。

 その姿に苦笑しながら振り返る。


 俺達を追いかけて沼に足を踏み入れた異型の蜘蛛は、足をバタバタさせながら沈んでいく。

 所詮は、魔術で作られた異型の生命体。長い年月をかけて、手足の動かし方を覚えた俺らと違い生まれたばかりのそれは、沼から這い出すすべをもっていない。

 

「ざまぁ、みやがれ」


 そうつぶやいて、俺はお嬢とサーシャの元へ歩く。

 ドレスと執事服をどろどろに汚した二人のもとへ、だ。


 さて、素直に怒られるか。


 苦笑しながら、俺は二人に手を差し伸べるのであった。

 

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