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3話 魔法との出会い


 

 この世界に転生して、何日か経過した。


 ……本当、赤ちゃんってやることねぇ。

 クソして、おっぱい吸って、またクソして寝る。

 中身が17歳の男子からすれば退屈極まりない日常だ。

 しかも、異世界だからなのか、やたらホコリっぽい。

 楽しめるものと言えば、自分の周りに転がっている人形の山。

 そういえば、この部屋のデザインは何とかならないものだろうか?

 ファンシーなデザインの壁紙。それに混じって、謎な幾何学的な模様が張り付いている。

 何か、魔方陣のようなデザインだ。丸い円に、そこの中心には五芳星。その周りに理解出来ない謎な文字が描かれている。

 何か気味の悪いデザインだが、どこをみようがこの模様は目に付く。


 とりあえず、退屈なので、窓の外に眼を向ける。

 そこにあるのは、二つの月。

 寝てばかりだから日にちの感覚は無いが、どうやら夜らしい。

 最初見た時は、驚いたがここ数日で日常の光景として受け入れている。


 それにしてもお腹が空いた。

 ぶっちゃけ、かなり限界に近い。

 泣けば、すぐ両親が飛んでくるが、最近、夜中呼び出すたびに憔悴していく母親を見ているとそれをやるのは申し訳ない。

 それに、なんつーか、男たる俺が『泣く』なんて格好が悪すぎる。


 しかし、それでも空腹感は半端ないわけで、しかも、おしめの中が気持ち悪い。うん、すみません、漏らしました。

 ……なんつーか、男としての尊厳がガリガリと削られていく。


 だから、仕方が無い。赤ちゃんだから仕方が無い。

 自分で自分をごまかし、大きな声で泣く。


 そうして、しばらくすると、困った顔で顔を出す母親とメイド。

 こうしてみると、二人とも美人だ。

 母親は、黒髪に、切れ目な瞳。地球よりの見方をすれば、スペイン系の美人か。

 胸は大きい癖に、引っ込む所は引っ込んでいる。

 メイドは、金髪碧眼のスレンダー系の美少女。胸は将来に期待といったところ。

 さっきまで気づかなかったが、何か耳尖ってないか?


 そんな二人が俺の元に来て抱き上げる。

「ふむ、子供の夜鳴きとはすごいものじゃの」

 顔には疲れが出ているがどこか嬉しそうな母親。

「いえ、お嬢様はかなり大人しいほうかと……」

 そういっててきぱきと、おしめを変えるメイド。

「まぁ、夜鳴きは赤ちゃんの特権じゃ。ほーれ、クリスや。ご飯の時間だぞ」

 そういって、服をはだけると、巨大なたわわが目の前に現れる。

 なんとなく、眼をそらす。うん、実の母親の胸だが、まぁ、なんつーか、精神年齢は17歳。

 どうしても気恥ずかしくなる。


「お? この子てれてるのかえ?」

「まさか、赤ちゃんですよ? お腹一杯なのかもしれません」

「しかし、むっすりしているのう。そうじゃ、ほれクリスや。ほれほれ」

 そういって、熊の人形を手に持つと、ぴくりと人形が動き出す。

(おおおおお!)

 思わず、眼を見開いてその光景を見入ってしまう。

 てくてく、と歩く人形。そして、綺麗に一礼する。

「もう一匹」

 きゃっきゃ、笑う俺を見て気を良くしたのか、更にさらにもう一体に力を込める。

 するとウサギの人形が動き出し、二対の人形が格闘を開始する。

 熊の人形がパンチをするとウサギの人形が避ける。

 ウサギの人形がキックをすると熊の人形がその足を持ち、地面に倒れこむ。

 ウサギが必死に、熊を殴り、その手を熊の眼へ……

「お、オリビア様、ちょっと人形劇にしてはえげつなさ過ぎです」

「ふむ、すまぬのう。どうも、ガサツでの。こういったことには向いておらぬ。サーシャよ。頼む」

「はぁ、わかりました」

 そういって、メイドが眼を閉じる。

「ゲート、オープン」

 そういうと、サーシャの手から光るふわふわとした物体が飛び出してくる。

『呼んだ?』

『呼ばれて』『出てきて』『ばばんばーん』


 一匹、二匹、三匹とどんどんあふれ出す。光の玉。

 よく見ると、それぞれにつぶらな瞳とおまけ程度の小さな手が生えている。

 それらが俺の周りをふわふわ浮かんでいる。

『赤ちゃん?』『人間のあかちゃん?』『かわいい?かわいいの?』

 その現実離れした光景にぽかん、としてしまう。


 そうだ、女神が言っていたではないか。自分が飛ばされるのは、魔物が闊歩する剣と魔法の世界だと。

 つまり、これが、魔法。


 自分は不良だ。拳での喧嘩に思い入れがある。

 しかし、しかしだ。この光景を見て何も感じない程、枯れ果ててなどいない。


「ふむ、やはり主の召還魔術は赤ん坊にも有効か」

「女子供に好かれるだけしか脳がありませんけど、これしか召還出来ませんし」

「それでも立派な魔術じゃ。自信持ち」

「……一軍と真っ向から戦えるオリビア様に言われる余計へこみますよ」

 一軍って……すげぇ、そうだ。そうだよな?

 折角、異世界に来たんだ。魔法の一つくらい使えないとな!


 ともあれ、当面の目標ははっきりした。

 魔法を覚える、これだけだ!






 ……ところで、俺のご飯。どこ?





書き溜めはあるのですが、修正しないといけない点に気づきまして。

もしかしたら、更新土曜になるかもです^^;

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