死肉漁り
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ポタ、ポタと血がゆっくりと流れ出る。
脇腹から流れ出る赤い血。
痛みがズキズキ、と訴えてくる。
急所はうまく外れたようだ。
本来であれば、死んでいただろうが咄嗟に作り出した反射の盾がうまく急所をずらしたようだ。
「ははっ」
笑いがこみ上げてくる。
本来であられば、傷さえ追わないはずだった。
今でこそ、父は帝銃騎と呼ばれているがその前は帝盾騎と呼ばれていた。
守りに特化した魔術、それが我が家系の魔術だった。その魔術が一撃で破られた。それが悔しくて、どうしようもなくうれしくて仕方がない。
「ははははっ!何ですかこの人。
他人の魔力を操り、しかも大気中の魔力を取り込んで、しかもこんな一撃を放つことが出来るなんて」
大気中の魔力は汚染されている。
古の魔術師達は大気中の魔力を取り込み、今の魔術師とは比べものにならないくらいの奇跡を起こしてきたとされる。
しかし、今はそれが出来ない。理由は一つ。古の魔術師と戦ったとされる。邪神……月の女神が原因だ。
古の魔術師によって大地の底に封印されているという月の女神。彼女の流した流血が、龍脈を通して、大気中の魔力を汚染し石化させ、塵のように細かく大気中を漂い続けている。
この魔力を使いこなそうとしたものは、私も何人か見てきた。
自分と対峙し追い詰められた異国の騎士が、更なる力を求めた魔術師が大気中の魔力を取り込み、そしてその体を石化させていった。
大気中の魔力を取り込むということは、汚染された空気も取り込むということ。
それは、自身の体内の魔力を石化させてるという行為だ。
通常であればその場で石化するか、魔術の使えない体になるかのどちらかだ。
しかし、彼女にはその傾向が見られない。
気を失っているが、一瞬の間、その力を操ってみせた。
これがどれだけ素晴らしいことか、恐らく彼女は汚染された魔力を扱う何かがある。
この力を我が血脈に通りこむことが出来たら、そう考えると笑いが止まらなくなる。
「ああ、姫。あなたは素晴らしい。あなたの力は私達、グランイット家が有効に活用させて……むっ!」
カン、と何かが反射の盾に当たる。
それは、矢。魔力も何も乗っていなさそうなごく普通の矢だ。
「ああ、そういえば、ネズミが一匹いましたね」
振り向くと、そこには怒りをあらわにした汚らしいエルフが目に入る。
「お嬢様に触れるな!」
男装をしたそのエルフが怒りの感情をこちらにぶつけてくる。
不愉快だ。私は強者には敬意を払う。それが亜人であろうがなかろうが、だ。
しかし、目の前にいるのはエルフは力もないただの亜人。虫けら同然の存在だ。
「不愉快だ」
だから、潰そう。彼女は我が妻に取りつく寄生虫にしか過ぎない。
害虫は殺すべし
妻が目を覚ましたら怒るだろうが、じっくり説明すれば理解してくるはずだ。
そう思い、彼女に向けて銃を構え、そして……
『いや~、彼女を殺すのはまだ早いんじゃないですかねぇ』
嫌な声がした。
「貴様、来ていたのか」
『おやおや、アルフレッド様口の利き方がなっていませんね。お父上の教育はどうなっているのですかねぇ』
声がするのは、ガルドの遺体のほうからだ。
ガルドの遺体が痙攣し、ゆっくりと溶け出す。そして、生まれるのは肉の沼。
そして、その沼から二本の手が這い出る。
手が地面を掴み、そしてその沼からゆっくりと這い出てくる。
手が、頭が、体が、そして足が……
「ふう……」
肉の沼は、消えている。
当たり前だ。目の前の男は、その肉によって作られている操り人形。奴が、材料を無駄にすることはまずない。
ガルドと瓜二つの男。しかし、中身が違うのか顔に浮かぶのは軽薄そうな笑みだ。
アドガスト・フェンルート。
『百貌』『禁忌の錬金術師』『疫病』『死肉漁り』いくつもの二つ名を持っている魔術師だ。
帝国の暗部に属し、五帝騎に匹敵する力を持ちながらも、その術の悍ましさから五帝騎に選ばれなかった異端ともいえる存在。
「な、何です。あなたは!」
エルフが、男に向けて矢を放つ。
その矢は、男の頭に突き刺さり、しかし、男は気にした様子もなく、その矢を引き抜く。
「やれやれ。お転婆ですねぇ~」
アドガストが手を、エルフに向ける。そして、ぼとりと地面に落ちる男の手。
男の手が、ぐにゃりと形を変える。それは、肌色の狼。
狼は、疾走しエルフに体当たりをする。
「きゃっ!」
可愛らしい悲鳴を上げながら、壁に叩きつけられる。
そして、狼が再び形を変える。今度はスライム。そのまま女に纏わりつき、壁へ固定する。
「この!離せ! 離せ!」
エルフが何か叫んでいる。
「あ~、お嬢さん。そこでじーっとしていてください。っと、少し肉が足りませんね」
そう言って、倒れているもう一人の傭兵に近づく。
「うーん、男の肉はまずいのですがしかたないですねぇ~」
そう言って、男の腕を掴み、その手を自分の口へと突っ込む。
不自然にまで開く男の口、それが傭兵の体をばりばりと齧って食べていく。
ガリ、ボキ、グチュ……
骨の砕ける音、肉がつぶれる音。気分の悪くなる音が耳に響く。
目をそむけたくなるような光景。奴は解ってやっている。
そもそも、奴はこうして食べる必要はないのだ。傭兵の体を溶かして取り込めばいいこと。
ただ、こうして自身の口で食べているのは、エルフの女を怯えさせる為。
悪趣味だ。しかし、こんな奴でも皇帝に忠誠を誓う仲間なのは違いない。
「やあやあ、お久しぶりです。アルフレッド様」
くっ、と唇をかみしめながら、膝を折る。
それは、目上の存在への敬意を示す礼。
目の前の男は気に食わないが、それでも帝国において、五帝騎に匹敵する地位と力を有している。
たかだか、五帝騎の息子程度の存在が対等に話せる相手ではないのだ。
「お久しぶり、です。アドガスト様」
吐き出すように、言葉を連ねる。
「あなたが来るとは聞いていませんでしたが……」
勇者奪取の命令は、皇帝じきじきに自分に命じられた使命だったはずだ。
この男がついてくるとは聞いていない。
「ええ、ええ。うまくいくのなら私が出てくる予定はありませんでした。保険ですよ。保険」
つまりは皇帝は自分が失敗する可能性を加味しこの男をひっそりとつけさせていたのだ。
確かにこの作戦、失敗すると帝国にとって大打撃になりかねない。
何しろ、失敗することは同時に勇者を敵に回すのと同意となる。
勇者を敵に回せば、帝国に住む民達にとって悪感情を抱かせる可能性もあるし、周辺諸国や属国に与える影響がでかい。
それ程、勇者の名前は強力なのだ。
「それより、このエルフですが殺すのはまずいですよぉ~。この令嬢、力で屈するような柔な女ではありませんからねぇ。なら、搦め手でいかないと~」
つまり、令嬢との取引条件に使うと、アドガストは言っているのだ。
いけ好かない男であるが、こういったことにはこの男は頭は回る。なら、この男の言う通りにすべきだ。
「わかりました。アドガスト様。では後は、この令嬢を帝国までお連れすれば……」
「ああ、そうですね。ですが、困りましたねぇ~」
くっくっく、とアドガストが笑う。
「村にいる傭兵ども、もうすべて捕まってしまいましたし、根の森にいる我が帝国の精鋭共もすでに壊滅状態。さてさて、どうすればいいでしょうかねぇ?」
ねっとりとした目でこちらを見てくるアドガスト。
その言葉に冷や汗があふれ出る。
予想外だ。村には戦闘が出来る者はいない。そう考えていたのだ。
なのに、村の傭兵達は壊滅状態?そこそこの腕を持った傭兵を集めたはずだ。恩赦で釣って傭兵どもの士気も十分。万が一にも失敗するとは思っていなかったのに!
いや、問題は根の森のほうだ。あちらは皇帝閣下からお借りした兵。しかも、普通の兵ではなく、精鋭達だ。彼らを失ったとなれば、俺に下る罰は……
皇帝は、公明正大な人物だ。成果を上げた者には、それ相応の恩赦を与えるし、失敗には、それ相応の罰を与える。
今回の任務は、帝国にとっても重要な作戦だ。それを失敗したとなれば……
「アドガスト様。私に力をお貸しください」
怒りで肩が震える。しかし、ここで膝を折らなければ、俺に待っているのは破滅だ。
「ええ、ええ。他ならぬアルフレッド様の頼みですからねぇ。それに、貴方の身に何かあったら、お父上も悲しむでしょう。後は私にお任せを」
つまりは、奴は父と私に貸しを作ったということ。
後で何をさせられるかわかったものではない。しかし、それでも……
「よろしくお願いします」
俺は、そうとしか言いようがなく、ただ怒りを堪え頭を下げた。
ステータス異常専門職大好きです。
つまりはカースメーカー大好きです。
主人公の能力は、カースメーカーにファフニール、あとFFのものまね師を追加した感じ?




