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強化系魔術と仮想精霊

……主人公の魔術もっと前に小出しすべきだったと反省。

「『剣士の心得ソードマンズ・ノーレッジ』を使いましたか。汎用魔術の心得もあるようですね」

 アルフレッドが面白そうにいう。

 ノーレッジシリーズといわれる汎用魔術。これは、身体能力増加系の固有魔術を持たない魔術師にとって必須とも言える魔術だ。

 系統としては身体能力増加系の魔術であり、このノーレッジシリーズが出来る前は、身体能力増加は使いにくい魔術とされていた。

 体の一部を強化しても十分なポテンシャルを発揮できないからだ。

 例えば、早く走ろうと脚部を強化するとする。しかし、実際走るという行為は、腹筋や背筋など様々な筋肉を使って走っている。

 だから、脚だけ強化しても、あまり効果は発揮できないのだ。

 ポテンシャルを発揮できないだけならいい。

 重い武器を振りかぶろうと腕を強化し、背筋、腹筋が足りず腰を痛めたり、矢をよけようと動体視力を上げても体がついてこれず、ハチの巣になったという事例が多く存在していた。

 それらの問題を解決したのがこのノーレッジシリーズといわれる魔術。構成が難しいのですぐには発動出来ないが、目的用途に応じて必要な筋力を強化が出来、その結果、現在は戦う者の中では必須技術とまで言われるようになった。

 『剣士の心得ソードマンズ・ノーレッジ』の効果は、動体視力の増加と脚部を中心とした身体能力の増加だ。


 しかし、俺はそんな魔術を使ってはいない。

 ガルドを倒すときは『道化師の心得クラウンズ・ノーレッジ』を使っていたが、ノーレッジを使えば、数秒のタメが必要になる。

 そんなことをすれば、これから攻撃しますよ?と宣伝するようなものだ。

 

 だから、今回は、全くの魔術を未使用の状態。しかし、銃弾を視覚出来たのは間違いなく身体能力を増加させた状態に違いない。

 銃弾を目で追える程、この体は化け物じみてはいないのだ。

『ふん、『ミーミル』が使っただけだ。いいから動け。まだ、戦いの最中だぞ』

「ちっ!」

 じじいに色々聞きたいが、確かにその余裕は今はない。

 

『おじょうさまー。これ。これ』『持ってきた。えらい?』

 ホウライがふわふわと何かを運んでくる。それは、銃のマガジン二つと、短剣。そして、ポーションが一つ。

「さんきゅー」

 ドレスのスカートを切り、腰に巻く。そこにマガジンと短剣、ポーションを差し込む。

「おやおや、淑女らしからぬ恰好ですね」

「殿方を誘惑するには、いいでしょっと!」

 銃を向けて放つ。しかし、先のように銃弾は弾かれ、明後日の方向に飛ばされる。

『違うぞ! 避けろ!』

 じじいの言葉に、とっさに反応。バックステップで後ろに飛ぶ。

 自分の立っていた場所に火花が散る。

「おや、避けられましたか」

 原理は解らない。しかし、自分の放った銃弾が返されたようだ。


 くそっ!どういった原理か解らないがやはり銃弾は見えないと戦いにならねぇ。

 しかも、この暗闇だ。眼で終えても暗くては銃弾も見えやしない。

 何とか、対策を……


『コマンド確認。

 動体視力増加(強)。夜目を追加。

 脚部を中心に全身の筋力を強化開始』


 ずん、と頭が重くなる。

 同時に魔力がどこかに持っていかれる感覚。

 しかし、それと同時に、周囲が明るくなる。


 アルフレッドが俺の足元を狙って銃を放つ。

 今度は銃弾が見える。早いが、しかし避けられない程ではない。

 重い体を操り、跳ねる。


 銃弾が再び床を削る。

 しかし、空中だ。今度こそ逃げ場がない。

 アルフレッドが俺に向けて再び銃口を向け……


『コマンド確認。

 『エアステップ』発動』


『横に飛べ!』


 無機質な声に混じってじじいの声がする。

 わけもわからず、何もない空間を蹴る。

 床を蹴るような感覚。俺は、真横に吹き飛ぶ。


 再び、アルフレッドの銃は、何もない空間を切り裂く。

 それを見て、アルフレッドの顔が険しくなる。


 俺は、そのまま地面へ着地。

 その後を追うように、銃弾が俺の後を追う。

「くっ!」

 アルフレッドが狙うのは俺の足。だから、俺は横にむけてジャンプ。

 そのまま、壁に激突しながらも柱の影に隠れるのに成功する。


「……いったい何をしました?」

「教える義務はありませんよ」

 アルフレッドの言葉に、俺はそう答える。

 警戒しているのかアルフレッドも何もしてこない。まあ、銃なんて武器を使っていれば銃弾を無駄にすることは出来ないのだろう。

 だが、それはありがたい、こうも時間が取れれば、俺もゆっくりと休むことが出来る。


 実をいうとかなりきつい状況なのだ。息切れが激しい。

 正直、喋るのも苦しい状況だ。

 これでも鍛えている身だ。きつい運動だが、ここまで息切れすることはまずない。

 それと同時に、体全体を包む倦怠感。話で聞く魔力を使いすぎた際の現象によく似ている。


『『ミーミル』が魔術を使ったせいだな。いいか、お前は気付いていないが三つの魔術特性がある。一つは、お前の知っての通り、『魔術の視認。及び操作』。

 もう一つが『仮想精霊作成』だ』

(それっておかんの使っている魔術と同じ?)

『近いが違う。あいつの魔術は、『仮想精霊作成及び固定化』だ。あいつは、人形などに仮想精霊を固定化させることが出来るが、お前は出来ない。いわば欠陥を抱えた魔術特性とも言える』

 欠陥品の魔術特性。しかし、それでも両親から引き継いだ魔術特性とも言える。そのことに、自然と頬が綻ぶ。

 しかし、最後の一つは……

『最後の一つは、お前はまだ知る必要はない。無理に使えば死ぬだけだからな』

 そんな物騒なことを言われる。さすがに死にたくはないがどんなものかだけでも教えてくれても……

『知ってたら使いたくなるだろう? ともあれ、お前に変わって、俺が一つ仮想精霊を作り出した。それが『ミーミル』だ。本当はお前がもう少し成長してからやるつもりだったが仕方がない』

 そうじじいがぼやく。

『こいつの特性は、お前の意思に反応した汎用魔術を使ってくれる。主に身体能力増強がメインだな。

 通常なら、ノーレッジシリーズのようなある程度パックになった魔術を使うのが定番だが、こいつがあればそんなのは必要ない。こいつは状況に応じて勝手に必要な筋力を増強させてくれる』

 そりゃ、便利だ。通常、汎用魔術を使うには、ある程度準備が必要だ。仮想精霊が勝手にやってくれるということは、そのデメリットが解消されたといっても過言ではない。

 しかし、仮想精霊を起動しているということは……

『ああ、お前の魔力を常に使い続けている状態だ。しかも、身体能力増加系の魔術も同時併用になる。今回のような休憩が入らなければ戦えて60秒』

 短いな。まだ、体が出来上がってないから仕方ないか。

 しかし、それでもこれが無ければ、奴と戦いにさえならない。ありがたい話だ。

『お前の知らない汎用魔術も幾つか覚えさせておいた。しかし、俺が知っているということは、お前も無意識では理解しているはずだ。直感に従え』

 毎度毎度思うがこのじじい。一体何ものなのだろうか?

『……とうの昔に死んだ魔術師もどき、だよ。今はお前の内にある仮想精霊にしかすぎん。いいか、俺はしばらく黙るぞ。今のお前には俺と『ミーミル』両方を稼働させるのは相当苦しいはずだ』

(あ、ちょっと……)

『では、健闘を祈る』

 そう言って、じじいの意思が消える。


 ああ、くそ。好き勝手俺の中を弄りやがって。

 しかし、じじいの意識が消えてから、体が少しだけ軽くなった。

 本当にあいつ悪霊かなんかじゃないのか。


 悪態をつくが、状況は変わらず……

 これ以上の時間稼ぎはもう無理だろう。


 ふう、と俺は長い息を吐く。

 仕方がない。ここから先は、俺だけでやるしかない。


 覚悟を決め、ダッ、と柱から躍り出る。

 そこには見たくもない男の姿が両手を広げ待っている。

「ははっ! 休憩は十分ですかっ!」

「ええ、すっかり元気になりましたよ」

「なら、一緒に踊ってもらえますか?」

「上手にリード出来るならいくらでもっ!」

 そういって申し合わせたかのように二人揃って、銃のトリガーを引く。

 ががががががががが、と二人の銃が音を立てる。


 柱が、絵が、壺が音を立てて崩れ落ちる。


『危険察知。『矢よけの加護』を発動』

 

 避けきれなかった銃弾が僅かに軌道を変える。

 僅かに肌を切り裂くが無視。不利なのは相変わらず、こちとら60秒という時間制限があるのに加え、あちらは銃弾は豊富にある。

 こっちはマガジンの予備は一つだけ……


 使い切ったマガジンを取り換える。

 これ以上の無駄使いは出来ない。しかし……


 ばん


 一発だけ奴に向けて銃を放つ。

 その軌道をしっかりと目で追う。

 

 彼に当たる直前に、くいっと銃弾の起動が真上に間借り、そして、その空中で再び方向を変える。

 その弾丸の先にいるのは、俺。


「……っ!」

 

 慌てて、俺は避ける。

 あっぶね。もう少しで当たるところだった。

 だけど、その成果はあった


「何度やっても同じですよ」

 アルフレッドが、再び俺に銃を向け、放つ。

 ばん、ばん、と音は二発。それは、俺の足を狙ったもの。


 しかし、俺は、避けない。


 すう、と息を吐き、魔術を発動させる。

 俺の足に吸い込まれるはずの銃弾は、そのまま向きを変え、真上へ。そして、空中で再び向きを変える。

 その銃弾の向かう先にいるのは、アルフレッド。


「っ!」


 それに気づいたアルフレッド。回避行動に出るが、しかし遅い。

 銃弾の片方がアルフレッドの腕に突き刺さる。


「ぐあああああああああああああ!!」

 

 おお、いい鳴き声を上げてくれるな。

 そのことに、俺は喜悦に頬を緩ませる。


「き、さま! 何をした!」

 怒りで顔を歪ませるアルフレッド。そうだ、その顔だ。

 てめぇには紳士顔は似合わない。

 獣のようなその形相。それこそがお前の本質だ。


 目の前の獣に向けて俺は言う。

「あなたの手品の種は割れました。これからが勝負です」

 俺は、銃を構え、アルフレッドに向けて再び発砲した。



ノーレッジシリーズ説明


剣士の心得:脚部と動体視力をメインに増幅。相手の攻撃を避け、相手を切り裂くカウンター狙いの強化魔術。


道化師の心得:平衡感覚の強化と関節の柔軟化。大道芸師向け。高所で芸をする大道芸師向けの強化魔術。落下に備え、関節も柔軟化している。


重騎士の心得:腕力と脚力を重点に強化。楯で敵の攻撃を耐え抜き、その腕力をもって一撃で敵を仕留めることを重点においた魔術。


傭兵の心得:全体をくまなく強化。しかし強化は弱め。長期戦に備え、ありとあらゆる状況でも対応した魔術。他の心得に比べると効果は薄いが長時間発動できることから様々な業種で使われる。


盗賊の心得:夜目の強化及び、感覚の鋭化。ダンジョン内でのトラップの発見などに役立つ心得。強化部分が少なく魔術的にも身体的にも負担が少ないので長時間の発動が可能。ただ、目がすごく疲れる。目薬必須。猟師の間でも広く使われている。


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