その頃、村では(ダンガガ視点)
今回は短めです
戦いは順調だった。
ここは、村の広場。村人が監禁されている倉庫からちょいと離れたそこは暴れるにはもってこいの場所だった。
「はぁっ!」
俺が腕を振るう度に、馬鹿どもが面白いくらいに宙を舞う。
相手は、冒険者、傭兵、兵士の混合部隊。
粒はそれなりに揃っているが、精々、Cランク。一人前といわれるレベルに毛が生えた程度。まだ、一流というには程遠いレベルだ。
しかし、元A級冒険者とはいえ、怪我で引退した身、これほどの相手と戦うのは本来ならかなりきつい。
そう、本来ならば、だ。彼らは連携が取れていない。
連携が取れている集団とは厄介だ。個々で戦うより、二倍、三倍へと厄介さを
増しやがる。
だが、目の前の連中は、連携が取れていない。それも当然、冒険者、傭兵、兵士。この三種は戦い方が違いすぎる。
冒険者は、基本ダンジョンに潜ることが多いことから、少数での連携、それも魔物との闘いを得意とし、
傭兵は、ともかく対人戦闘を得意とし主に生き残ることに赴きを置かれている。ゆえに劣勢になると逃走を開始する傾向があり、
兵士は、対人、対魔物戦を双方をこなし、指揮官の命令を忠実にこなすことに赴きを置いている。
対人戦で、劣勢な現状、それに追加し優秀な指揮官が不在な状況下。
それぞれが浮足立ち。お互いに足を引っ張り始めている。
連携もクソもなく、ただ、お互いに足を引っ張り合っている。これなら、順番に一対一で戦ったほうが勝機がある。
そうすりゃ、俺もへばって最後には打ち取られるだろう。まぁ、そんな無様な展開にはさせないが……
「お、おい傭兵ども!前へ!前へ出ろ!」
「誰があんな化け物の前に、どう見ても、B級、いや、A級クラスの奴だぞ! なんで、こんなチンケな田舎町にこんな化け物がいるんだよ!」
小綺麗な恰好をした男が喚き散らしている。
ああ、こいつが指揮官か。経験が浅いのだろう。傭兵達の使い方がなっちゃあいない。
あいつらは命を大事にするが、同時に金にも煩い。嘘でも大金を支払うといえば、何人かはやる気を出すだろうが……
兵士達は指揮官の命を受け、震えながらも槍を構える。だが、この程度の壁。いくらでも突破出来る。
「泥沼」
息を吐き、そして魔術を発動。固有魔術ではない。
汎用魔術。足元を沼地にする程度の魔術だ。
元々、こういった魔術は苦手な俺だ。精々、足元を不安定にさせる程度の魔術。
「ひっ!」
「足が、足がっ!」
しかし、相手が浮足立っている状況下。足が少し沈む沈む程度の魔術でも動揺を誘うには十分だ。
動揺が解ける前に、俺は前へ出て、斧を振るう。
そこらで拾った薪を切る為の斧が、兵士の首を綺麗に跳ね飛ばす。
そのまま前へ。ついでに、兵士の手に持った量産型の槍を奪い取る。
俺の狙いがわかったのだろう。指揮官の男が声を張り上げる。
「ま、まて、こちらには人質がいるのだぞ!」
その言葉に、俺はぽかん、とする。
「は?」
「だから、人質だ! この村の住民100人。俺の命があれば、奴らの命は無いのだぞ!」
その言葉におれは苦笑する。
「ああ、いや、その人質さ。どこにいるのさ」
「何を言って! この先にある倉庫に!」
「おかしいと思わないか? こんだけ俺が暴れているんだぜ? 気の利いた奴が村人を連れてきてもおかしくないはずだが」
俺がそういうと共に、指揮官の指さした倉庫のほうから、巨大な水柱が上がる。
「-----------------っ!!」
言葉にならない叫び声をあげているのはその水柱。次第に、その柱は形を変えていき、巨大な竜の形となる。
遠目で見えにくいが、その竜の中心には、緑色の人影が見えている。
「おっそろしいな。おい」
おそらく、あれはダダが作り出した竜なのだろう。
リザードマンは魔術を使うのを不得手とすると言われているがそれは間違いだ。
彼らは常に魔術を使っている。トカゲに似た性質を持つ彼らだが、彼らは水辺を縄張りとすることが多い。
水の中でも問題なく活動し、川魚をとって生計を立てている。
その気になれば、一日中でも水の中で生活出来る彼ら。当然、トカゲにはそんな機能は存在しない。
では、何故、リザードマンは水中で活動出来るのか?簡単だ。彼らは、水の精霊に働きかける魔術を使えるからだ。
水の精霊に働きかけ、水中に酸素を持ち込む魔術。地味ではあるが、彼らの生態からすれば、必須の魔術とも言えるだろう。
最も、一般的なリザードマンは、精々、水中に酸素を持ち込む程度の力しかない。が、ごく稀に、水の精霊に愛される存在が生まれることがあるという。彼らはシャーマンと呼ばれ、群れの中で指導者的な立場になるのが通例である。
水の精霊に愛され、それゆえに強い戦闘能力を持つシャーマン。ダダは間違いなくシャーマンだ。
(それがなんで、こんな片田舎で執事なんてやってることやら)
基本的にリザードマンは排他的だ。
群れの中で生き、群れの中で死んでいく。個人の感情よりも群れの意思を優先し、それゆえに強い団結力を保ち続ける。それがリザードマンだ。
ぶっちゃけ、下手な騎士団より、リザードマンの戦士隊のほうが連携の取れた動きをする。それは、自分の命より自分の所属する群れを選ぶことのできる習性ゆえだろう。
そのせいか、群れから出て活動するリザードマンなど滅多にいない。
俺もダダを含め、数回しか群れの外で活動するリザードマンとあったことがない。シャーマンクラスのリザードマンが群れから出て活動しているなど、話にも聞いたことがない。出ようとしても、監禁しても止めるだろう。
水と共に生きるリザードマンにとって、水の精霊と会話出来るシャーマンはそれほど貴重な存在なのだ。
ま、そんなことは今は関係ないか。
「ば、ばか、な」
呆然と、その水龍を見上げている指揮官。まぁ、あんなのを生み出せる存在があの納屋んとこにいるのが解ったのだ。
そこにいる兵士達がどうなっているか、想像するのは容易い。
「ま、解っただろう? つーわけで」
「ま、まて! 金はいくらでも払う! 俺の元に――」
「断る」
つーか、隣の村には奥さんと息子がいるんだ。侵略者側につくなどありえない。
「くっ! 密集隊形!」
肉の壁を構築しようとする指揮官。しかし、死ねという命令にさすがの兵士達の動きは鈍く。
「遅い」
そういって、手に持った槍を投げようとして――
どんっ!
丘の上にある屋敷から、爆発音が響き渡った。
正月休みに入りました!
これで更新できる!かつる!




