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命の使い道(ダンガガ視点)

『まず、二手に分かれましょう』

 あの時、お嬢はそう言った。

『私とサーシャは、この屋敷に残りガルドを迎え撃ちます。恐らく、こちらに来るのは、ガルドをあわせて6人程度だと思います。ダンガガ、あなたは街にいる爺と合流し、残りの傭兵達を殲滅。村人を解放してください』

『ちょっとまったお嬢』

 彼女の言葉に、俺は待ったをかける。

『何でこっちに来るのが6人程度だと思ったんだ?普通に考えて、もっと多くの傭兵を遣すんじゃないか?』

『ここに来た傭兵の数を考えてください。来たのは8人。難民の皆さんは大体、50人程度。村人を一箇所に閉じ込め監視するにしても、10人もいれば十分のはず。なのに、最初にこちらに来たのは8人です。だとすれば、大人数を遣すことが出来ない状況なのではないでしょうか?例えば、村で爺が暴れている、とか』

 成る程、それはありえる話だ。あの爺さんは今、この場には居ない。

 村が襲われた時、村に出かけていたそうだ。

 一体どこで何をやってんだか、と考えていたが成る程、それは十分に考えられる可能性だ。

 あの爺さん、実際どのようなスタイルか知らないがかなりのツワモノであるのは解っている。

 俺も、実をいうと村の中には入っていない。隣の村にある俺の店からお嬢の家へ肉を輸送している最中にあの騒ぎが始まった。

 慌てて村に侵入しようとしたところで、銃で撃たれたお嬢を見つけ、この屋敷に戻った訳だ。

 しかし、と俺は考える。お嬢が話しているのは可能性の話だ。希望的観測は身を滅ぼす。

 乗っているチップは自分の命だ。賭けに出るにしても、もう少し情報が欲しい。

『勿論、これは可能性の話です。もしかしたら、令嬢一人ぐらい、あれくらいの人数で十分と考えたのかもしれません。しかし、戦力が少ないこの状況下。それに賭けるしかありません』

『そりゃ、ごもっとも。しかし、こっちで村人開放するとして、そっちはどうするんです。お嬢、こっちに来るのは精鋭だろうよ。どう対抗するんです?』

 あのガルドって奴。B級冒険者と言っていたが、成る程それに見合う力の持ち主であるのは見て取れる。

 B級冒険者ほどとなれば、一流といっても過言ではない。

 40人近くの雑兵程度なら負ける気はしないが、その中に奴が混じっていたら話は別だ。

 かつての俺なら兎も角、怪我を負った状態では、苦戦することは間違いない。

 そして、それはお嬢も一緒だ。いや、俺よりも状況は悪い。

 才能溢れているとはいえ、彼女はまだ幼い。固有魔術も使えない状況では間違いなく負けるだろう。

 しかし、そんな俺の予想を覆すようにお嬢は朗らかに笑う。


『ああ、それならご心配なく。固有魔術なら、もう使えます』



◇■◇■


 だから、俺は一人、夜道を駆けている。

 矢を食らった膝が痛みを訴えるが、今は無視。

 じくじくと痛む膝。あまり表には出さないが、痛みはどうも苦手だ。戦士であった以上、我慢は出来るが、それでも慢性的に来るこの痛みは今になってもなれることは出来ない。

 元々戦士には向いていないのだろう。だから、膝に大怪我を負った時、俺は、今まで積み上げてきたものをあっさりと投げ捨てて嫁の実家の肉屋を継いだのだ。

 坂を上っていく一行を見かける。お嬢の予測通り6人。

 彼らに見つからないよう草むらに隠れ、彼らが去ると同時に、再び坂を駆け下りる。


「ククク」

 痛い。痛い。ああ、本当に痛い。ここ最近、食べ過ぎのせいか体重が増えた。膝の負担も前より酷い。

 全く、割が合わない。これが終わったらしばらく休養を取ろう。

 隣町に住む家族には文句言われるかもしれないが、これだけは譲れない。

 普段であればやる気が削げている状況。何に頬が自然とつり上がる。

 実をいうと無理な作戦だったらお嬢をつれて逃げるつもりだった。

 村人には悪いが、正直彼らを救える可能性は低い。なら、幼い命だけでも救いたいと思うのが俺の考えだ。

 しかし、作戦決行前に見せたお嬢の魔術。そして、その策は奴らに通用する可能性はある。

 そう、可能性がある。その程度だ。お嬢の固有魔術。あれは確かに魔術師にとって致命的な性質を持っているがお嬢には戦闘経験が圧倒的に足りていない。俺のほうも、ガルド以外に強力な魔術師が混じっていればあっさり負ける可能性がある。

 しかし、それでも、賭けてみたいと思ったのだ。彼の可能性というやつに。


「ならば、命を賭けるのには十分」

 俺は別に戦闘狂という訳ではない。ミートメーカーをか言われ恐れられているが根本的な部分では臆病だ。

 臆病で、痛みに弱く、ついでに面倒くさがり。こうして書き出してみると自分の駄目さ具合がよく解る。

 だが、それでもそんな俺でも命の賭けどころは十分に承知している。

 

「サスガ、ダンガガ様、デス」

 突如として声が生まれる。それは、村の脇を通る川の中から

 ザバッ、と音を立てて姿を現すのは、ウェストロード家の執事ダダの姿。

「おや、執事殿。今までどこに?」

「……少々、ムラで雑用ヲ」

 成る程、お嬢の読みは当たっていたということか。

 ならば、すべきは一つ。

「では、私もその雑用、手伝わせて貰えませんかね?」

 解り難いリザードマンの顔がにやり、と笑うように顔を歪める。

「さてと、さっさと終わらせますか」

「フタリデヤレバ、スグデスヨ」

「ははは、違いない」

 いつも通りの雑談をしながら、俺達は戦場へと足を踏み入れた。

 


三週連続土曜出勤に車両荒らしの後処理、執筆用のPCの故障によるデータの消失。後は世界樹の迷宮3を……げふげふ。色々とドタバタしましたが何とか更新……来週も出勤ですが何とかします。


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