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12話 忘れられない夜(ダンガガ視点)

 夜とは、自分にとって特別な時間だ。

 ダンガガは一人、考える。

 ゴーストの出る亡者の森で震えながら一夜明かした新人時代。

 ベテランと呼ばれるようになっても、夜中に銀狼の群れに囲まれた時は死を覚悟したものだ。


 思い出は冒険中だけではない。

 後輩がレッサードラゴンを倒した時は酒を持って祝福し、古い仲間が死んだと聞いた時は一人飲んだくれた記憶がある。


 冒険者を辞めて肉屋となり、朝型の生活となってそういった経験はないに等しかったが、普段では寝付いているこの時間。様々な感情をもって二人の前に酒を飲んでいる。


「ふむ、では、私達の子の成長は順調であると」

 そう、静かに言うのはアルト=ウェストロード男爵。

 オリビア様の旦那であり、ウェストロード家最強と名高い男だ。

 兄であるオルド=ウェストロード伯爵との確執により、軍部には入れなかったが、それでもその武勇はこの耳にも届いている。

 こうして平民である自分に酒を振る舞うというのもどうかと思うが、その姿勢から彼が平民や亜人だからと言って軽視しないことが良く分かる。

 まぁ、この国の良さはこんなところだ。

 いろんな大陸を旅したことあるが、亜人=魔物と同じと考える国さえある中、この国は多少の差別はあるが暮らしていけない程ではない。


「オルトや。そんなしかめ面だとダンガガが萎縮してしまう。彼はああ見えて繊細なんじゃ」 

 そうコロコロ笑うのは妖艶な雰囲気を纏うオリビア様。

「む、そうか。それはすまない」

「いえ、そう気にはなさらずに、オリビア様、人を勝手に繊細だと決めつけるのはやめてください」

 結構、自分は神経が図太いとは思っている。出なければ、貴族様と食事してがはっはと笑えるはずがない。

 だが、さっきの和気藹々とした場と違って、少々この空気は重い。と、いうかピリピリしているというべきか?

 警戒するのは当たり前のことだろう。


「ふむ、西の山から魔物の群が攻め寄せた時仲間を鼓舞しようとして、噛んだのは誰かの?そうそう、あの時、影でこっそり胃薬を飲んでいたのも知っておるぞ?」

 そんな俺の警戒を知らずか、上機嫌にオリビア様は笑っている。

 まぁ、この女、歳を重ねている為か、騙しあいは得意だ。こう笑って腹の中で何を考えているかわかったもんじゃない。

 そんなオリビアの言葉にアルドは小さく頷く。


「そうか、ならダンガガは優秀な指揮官になる素質があるな」

 確かに、勇敢な指揮官は成果を上げるかもしれないが、それ以上に損害を出す。

 まぁ、下で働くのであれば臆病な指揮官の下で働きたいものだ。


「話を戻そうか。実際、私の娘はどうだ?君の武術をものに出来そうか」

「才能はありますな。正直、天才と言っても過言ではないでしょう。自衛のレベルでしたら、すでに十分なレベルです」

 これは、正直な本音だ。決して、男爵へのおべっかではない。

 まだ、体が出来上がっていないのか、動きはまだ鈍いが、魔力抜きにして考えれば、中堅どころの冒険者並の力量はある。やはり血は争えないということか。

 そう考えオリビア様を見る。

 オリビア=ウェストロード。

 『暴食』の魔王に対する『節制』の勇者。

 魔王を倒さなければ寿命で死ぬことは無いという勇者の特性ゆえ、二百年とこの国を守り続けた生きた英雄。

 長らく冒険者として活躍した彼女だがここ数年はアルトと結婚し、男爵夫人としてこの家に留まっている。


 俺を含むこの国に住む亜人にとって、オリビアに対し複雑な心境を抱いている。

 人間の迫害を受けやすい亜人は、魔王側につくことも多かった。

 だが、その魔王にとって天敵である彼女は、この国からすれば英雄であり、それはこの国に生まれ育った俺にとっても変わらない。


「そうそう、お嬢様ですが無意識ではありますが魔術を使いましたぞ」

「ほう、それはどのような?」

「この手を見てください」

 隠していた左手を見せる。

 太い引き締まった腕、その先にある手のひらは、虹色に輝く水晶のような物体に覆われている。

 魔石化。魔法を使う者に宿るとされるこの力は、空気に触れるとこうして魔石化する。

 魔術として具現化すれば魔石にならない。ゆえに、こうして体の一部が魔石化するということは使い手が未熟か身の程を超えた魔術を使おうとして制    御に失敗した場合だ。

「制御に失敗は、主に限ってはなさそうだの」

「ええ、お嬢様の棍を左手で受け止めたらこうなりました」

 そう、訓練の時、お嬢の攻撃を弾いたら、手がこうなったのだ。

 自慢じゃないが俺は元がつくがベテランの冒険者だ。素人のするようなミスはしないし、子供相手に制御を誤るような魔術を使おうとは思わない。

 つまりはあの子が、俺の魔力を僅かながら暴走させるよう何かをやったのだ。

 飯が食べにくくてたまらなかったが、この事実に俺の頬は自然と緩まる。


 これは、喜ばしいことだ。

 人、亜人問わず、使える魔術は『固有魔術』と『特性魔術』の二種類に限られる。

 『汎用魔術』は、決まった手順で魔術を発動させれば誰でも同じ効果を得られる魔術。

 『固有魔術』は、生まれ持った才能に左右される魔術だ。


 それぞれ、利点と欠点がはっきりしている。

 例えば、汎用魔術は誰でも使えるというのが利点ではあるが、その分、効果は薄く、また発動させるのに手間がかかる。

 『固有魔術』は、生まれ持った才能に左右される為、出来ることは少ないが、『汎用魔術』に比べると効果も早さは桁違いだ


 自分は固有魔術として体内のエネルギーを消費し身体能力を増加させる『ヒートボディ』というスキルを持っているが、オリビア様はこの特性を持っていない。

 『汎用魔術』で似たような効果を生み出すことは出来るが、効果は段違いだ。『汎用魔術』で似た効果を生み出すことは可能かもしれないが、例え、勇者として名高い彼女であっても正面から、同じ魔術で戦えば自分が圧勝するだろう。逆もまた然り、つーか、オリビア様の魔術と正面から戦うなんて考えたくもねぇ

 まぁ、そんな訳で『汎用魔術』は、戦闘においてはサポート程度の効果しか生み出せない。


 基本、『固有魔術』の系統は親から子へ受け継がれる。

 だが、稀に親とは全く違う系統を覚える場合がある。それは祖先が持っていた系統のこともあるし突然変異の場合もある。彼女は間違いなく後者だ。

 人を魔石化する系統など聞いたことがない。


 ふん、と力を込めて腕を封じていた魔石を破壊する。

 魔石は硬い。力自慢の、しかもその中でも鍛え上げられた自分だからこそ、こうして簡単に破壊できるがただの人間にはそうはいかない。

 恐らく魔石化は、彼女の魔術系統のほんの一角にしか過ぎないだろう。


 例え突然変異であっても、血によってその力は受け継がれる。この血をウェストロードに取り込めれば、多大な力になることは間違いない。


 そうだというのに……

「あの、自分変なこといいましたか?」

 ウェストロード夫妻の表情は暗い。

「いや、ダンガガよ。ありがとう。娘が特別な力を持っているというのは父として喜ばしいことだ」

 口を開いた時には、先程まで穏やかに話していたウェストロード男爵だ。

 だが、その表情はどこか硬い。

「自分としては男爵家の、そして貴重な魔術の使い手です。自分の身を守れるくらいには鍛えたいと思っていますがこれからも訓練を続けたほうがよろしいでしょうか?」

 貴重な魔術の使い手だ。確かに悪い奴らに捕まればどうなるかわからない。

 恐らく、彼はそれを心配しているのではないのだろうか?

 そう考えればさっきの反応も良く分かる。自分にも子供がいる。逆の立場として子供が特殊な魔術を使えるとなれば、親としては心配だろう。


「ああ、それもそうじゃが、ダンガガよ。もしよかったら彼に冒険者としての知識を教えてやって貰えんか?無論、それ相応の礼はする」

 だが、彼らの言葉は彼の予想を超えた内容だ。

「そりゃ、自分も新人冒険者の育成とかやりやしたし、一日二日なら店を開けても大丈夫ですがそんなのお嬢様には必要ないのでは?」

 冒険者の知識とは、サバイバル知識や素材の選定、または古代遺跡の知識などだ。貴族の令嬢には必要ないものでそんなもの教えて何になるというのだ?

「なに、あの子は冒険者というものに憧れているようでな。現実を知ればもうちっと令嬢らしくなるかの、と思っての」

 違う。納得出来る内容だが自分の勘がそうではないも告げている。


 一体、なにがこの違和感は?このウェストロード家は何を隠している?


 そして思い出す。

 アルト=ウェストロード。その兄のとある噂に


「ああ、気づいてしまったか」

 表情に出ていただろうか?ダンガガを見てアルトが小さく苦笑する。

 それを見て、自分の予想があっていたことを理解する。


 礼儀とか考えず酒杯に入った酒を一気飲みする。

 ウェストロード伯爵の噂。

 最近力を伸ばしている隣国の帝国。


 俺の頭の中でパズルが組み上がっていく。

 だが、まだパーツが足りない。

 突然変異のお嬢様。それは貴重なものだが、しかし、そのカードが本当の効果発揮するのは数代後の話。俺の予想の裏付けとしては弱すぎる。


「ふむ、ここまで知ってしまったのなら、巻き込むしかないのう。いいか、彼女は」

 彼女の色っぽい唇が開かれる。

 それは、堕落に誘う悪魔のように、

 或いは、信者にお告げを告げる女神のように

 彼に知りたくない真実を打ち明ける。


「彼女は、本当は男の子で、そして勇者じゃ」


 その一言で、パズルのピースがすべて埋まる。


 その出来上がった絵に


 そこから、連想される未来に


 体が勝手に震え出す。


 ワインのボトルを手に取りそのまま口をつける。


 ああ、くそ。くそくそ。

 やばい、確かにそれはやばい。


 解ってしまった。

 男である彼が、この男爵家にとって待望の男子をわざわざ女装させているか。



 これは御家騒動どころじゃない。

 これが明るみになれば間違いなく国は乱れる。


「てめえ!オリビア、俺を巻き込むつもりだったな!」

 不敬罪?知ったことか!

 男爵夫人であり勇者であるオリビアに悪態を吐き捨てる。

「何、気づかなければそのままにしておくつもりじゃったよ。だが、まあ、巻き込むとしたら主しかいないと思っての」

「で?君はどうする?彼を殺すか?」

 殺す?ああ、確かに一番いい解決方法だ。

 自分はこのくそったれな男爵夫妻には殺されるだろうが、この国を思えばそれが一番いいに違いない。

 しかし、同時に思い出す。ダンガガ、ダンガガと笑顔で呼ぶ彼の姿を……

 生意気で時々張り倒したくなるが、それでも可愛い弟子なのは変わりない。


「いや、やめときます。自分を上等な人間だと思ったことはねぇが、あんないい子を殺すような外道には落ちたくない」

「ふむ、繊細だの」

「紳士的と言ってください」

 嵌めらた怒りはあるが、同時に理解できる部分もある。

 勇者たるオリビアであろうとも、この先、彼を守り続けることが出来るかは解らない。

 卑怯なことをしてでも我が子を守りたいと思う気持ちは理解できるのだ。


「では、何か褒美を渡さなくてはの。何がいい?」

 そうですな、と一息おいて、答える。

「いざとなったら俺の家族が逃げられるよう手配を、後は……」


「前金として、酒をくだせえ。さっきの話が忘れられるくらい。たらふくに」




ここから先、急展開があります。

……正直、迷ってます。なろうの友人に見せた処、恐らく「なろう」受けはしないよ?とのこと。

プロットを作り直してテンプレで行くか

思う存分、書きたいのを書くか。まだ、迷い中


とりあえず、次回で、その急展開に当たる一端を登場させようと思います。

周りの反応を見てから決めていきたいと思います(汗

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