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「さて、皆が揃った事だし、これ以上何もなければ早速出発するとしよう」
リノが黙ったのを見計らい、レイヴァンは周りの面々に視線を送りながら一人ずつ確認を取る。
すると、修道女のマリアンが申し訳なさそうに一歩前に踏み出した。
従順な彼女がこういった場で声を上げる事は珍しく、尋ねた本人であるレイヴァンをはじめ彼女と仲の良いリルやブライトも不思議そうに彼女の顔を覗き込む。
「あ、あの! 今言うべき事ではないのかもしれませんが、どうしても聞いて頂きたい事がありまして。 ……よろしいでしょうか?」
不安そうに尋ねるマリアンに向かって、レイヴァンが「遠慮無く言ってくれ」と答えると、その返事に胸を撫で下ろしたマリアンは「ありがとうございます」と短く礼を述べてから話し始める。
「実は行きたい所がありまして、今日のノアさんの一件が終わったら、連れて行っていただけないでしょうか?」
「行きたい所だと?」
「旅に同行したいと頼んでおきながら、勝手な事を言っていると十分理解しています。 ですから、無理にとは言いません」
思わず頭を掻くレイヴァンは「何処に行きたいのか?」と尋ねた。
「実は聖ミカエリス大教会に行きたいと思っております」
一呼吸おいてマリアンは凛とした表情で答えた。
聖ミカエリス大教会は、その名のとおり光の女神であるミカエリスを祀った教会で、信者たちにとって総本山となる場所である。
女神の教えを守り生活をしてきた修道女のマリアンが参拝したいと思うのは当然のことだ。
しかしながら、彼女の顔には決意のようなものが滲み出ており、単純な信仰心で行きたいと願い出た訳ではないと誰もが感じていた。
その理由を声に出して尋ねたのはリルだった。




