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苛立つ彼女はその表情を隠そうともせず「それで、今まで何をしていたの?」と兄に尋ねると、問われた彼は「実はこれを入手してきたんだ」と自分の腰に視線を落とした。
そこには肩掛けの小さな袋があった。
袋は小さいが中身はぎっしりと詰まっているようでパンパンに膨れている。
「何よ、その袋」
「見ての通り道具袋だよ?」
「そんなの分かってるわよ! どうして無一文だったお兄ちゃんが一夜にして、そんなに沢山の道具を調達できるのかって聞いてるの!」
「実は今朝レイヴァンさんに貰ったお金で買ったんだ。 学校を出る時に持っていた荷物が昨日全て無くなってしまったからラヴァワームの封印に必要な道具一式を再び揃えることができて本当に助かったよ」
「何ですって!? そんなのダメに決まってるじゃない! それは部外者から援助を受けたことになるから、その状態で課題を解決したとしても失格になっちゃうわ!」
「そうなの!?」
「そうなのって…… 何で把握していないのよ! 試験期間中は金品の援助を受ける事も一切禁止なんだから! 今ならまだ出発していないから大丈夫。 その道具は今すぐあの腹黒青年に返してきて!」
強く言われ残念そうに道具袋を見つめているノアの背後から「ちょっと良いか?」と声が上がった。
見れば黒いコートに身を包み剣を携える金髪の青年が立っていた。




