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集合場所に辿り着いた後も精霊の泉に関して話題の絶えないリルと女学生三人。
彼女らの口論とも言える会話に年上の三人が辟易し始めた頃「皆さん、お待たせしました!」と若い男の声が響いた。
皆が一斉に顔を向けると視線の先には青髪頭に眼鏡をかけた少年が立っていた。
彼は屈託のない笑顔で挨拶をしながら近づいてくる。
彼に対し一番最初に開口したのは彼の妹であるリノだった。
「お兄ちゃん、遅いじゃない!何してたのよ!」とこめかみに青筋を浮かべながら強い口調で問うと、彼は落ち着いた様子で「集合時間には間に合っているだろう?」と村の入り口に立つ大きな日時計を指差しながら答える。
「そういう問題じゃないわよ! 今日はお兄ちゃんの課題を達成するために行動するんだから、迷惑をかけるお兄ちゃんがせめて一番最初に集合場所に居るべきでしょう!」
「確かに、それはそうかもしれないけど…… リノは僕の課題を手伝ってくれるのかい?」
「べ、別に手伝うとは言ってないでしょう! 私はこの人たちがお兄ちゃんの手助けをして、お兄ちゃんが失格にならないように見張るためについて行くだけなんだから!」
突然指を差されたブライトは戸惑った後、ぎこちない態度で「あ、安心してくれ。 今日の俺たちはノアの事なんて一切無視するからよ」と答え、下手な口笛を吹いてみせた。
それに対してノアが「ありがとうございます」と続けるものだから、紛れもない虚言と認識したリノは再び青筋を浮かべた。




