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「朝から説教だなんて無駄に元気よねぇ……」
ブライトに雷を落とすマリアンに声をかけたのは少し癖のある黒髪が特徴的なフィーネだった。
彼女は明らかに気分が乗らない様子で、挨拶を返すマリアンを無視すると「私は朝が苦手だっていうのに、こんな早い時間に集合だなんて」と呟きながら二人に近づく。
そして頭を下げていたブライトに対して「あなたはあなたで大衆の面前で修道女の胸を揉むとか、どれだけ欲求不満なのよ。 あなたには昨晩私がたっぷりと気持ち良い事をしてあげたでしょうに」と嘆息した。
声をかけたことで存在に気がついた彼は「あんな中途半端なとこで止められて満足できるか! ……って言うか、俺は不満解消のためにマリアンちゃんの胸を揉んだ訳じゃない!」とすぐに言い返してきたが、彼女にとっては想定通りの答えである。
間髪を容れず「ならどうして揉んだのよ」と気怠く尋ねると、彼は「それは言えない」と口を噤んだ。
「話したら昨日の続きをしてあげるわよ?」
「もうその手には乗らない!」
「それは残念ね。 続きともなれば昨日のより数倍気持ち良いのに」
「昨日よりも数倍気持ち良い……」
「あなただと三秒持たないかも」
指先で唇に触れながら艶やかな声で誘うと、ブライトは思わず唾を飲み込む。
相変わらず揶揄い甲斐のある馬鹿な男だと思っていると、彼の背後ではマリアンが物凄い怒気を発していた。
気がついたブライトは謝罪の言葉を述べようとしたが、それよりも早く彼女が「どうして、そこまで分かっていて誘惑に流されるんですか!」と怒鳴り、慌てる彼の様子にフィーネは腹を抱えた。




