~ 92 ~
「私はどうしてこんなにもダメな人間なのでしょう。 私はブライトさんが羨ましい」
「ちょ、ちょっと、待って。 突然羨ましいとか言われても何の事だか分からないよ」
「ごめんなさい。 ブライトさんはこうして朝一番に謝りに来てくださったのに、私は先日の一件以来ずっと悩んでいて色んな人を裏切っているのに謝罪も懺悔もせず、ただ一人勝手に落ち込んで…… それでいて、のうのうと生きているなんて。 私の方がブライトさんより最低な人間です」
「それは流石に言い過ぎじゃ」
小さく首を振ったマリアンは指で涙を拭うとブライトに対して笑顔を見せた。
「私、ブライトさんのお陰で、今ようやく分かったんです。 心に何が引っかかっていたのか。 これから私はどうするべきなのか」
その表情を見たブライトは反射的に手を伸ばすと彼女の豊かな左胸を鷲掴んでいた。
その瞬間、辺りにはマリアンの悲鳴が響き、次の瞬間には破裂音と言っても過言ではない大音量の平手打ちの音が響く。
「い、いきなり、何て事を!」
顔を真っ赤にしながら怒るマリアンに向かって、同じく頬を真っ赤にしたブライトは真面目な顔で言葉を返した。
「今、自ら命を捨てるとか言い出しそうな雰囲気だったからさ。 悪いけど命の恩人の口からそんな言葉は聞きたくないと思ってね。 無理やり止めさせてもらった」
「そんな事言いませんよ!」
「いやいや、どう見たって悲壮感漂う覚悟を決めた顔をしてたって」
「確かにある覚悟を決めましたけど、自ら命を捨てるとか絶対にありえませんから!」
「……ってことは、俺の早とちり?」
「そうです! そもそも話を止める方法はいくらでもあるのに胸を揉むことで止めるなんて非常識過ぎます! 破廉恥です!」
真剣に怒るマリアンの表情を見たブライトは気まずそうに短髪の頭を数回掻いた。




