表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔天創記 (五)  作者: ちゃすけ丸
第3章
9/107

~ 8 ~

 静かな山中にレイヴァンの深いため息が響く。



「つまりマリアンが、俺のことを名前で呼べば俺が喜ぶと言ったんだな?」



「そうです! だからリルはご主人様に喜んでもらいたくて名前で呼ぶです! 解ってくれたですか?」



「理解した。 十分に理解したから答えるが、それは認められないな」



「な、何でですか!? 嬉しくないですか?」



「そうだな。 正直に言ってしまえば、何と呼ばれようが嬉しくも悲しくもない。 だが今更お前から名前で呼ばれると違和感があって、どうも調子が狂う。 だから認められない」



「そんな……」



 がっくりと肩を落としたリルは主人に背を向け「リル、マリーさんに嘘を教えられたです」と呟きながら重い足取りで洞穴へと向かい始める。



 うなだれる彼女の背中にレイヴァンは慌てて声をかけた。



 最後の一言を聞いて、このまま帰してしまえば明朝からマリアンを巻き込んで面倒な口論が起こることは容易に想像ができた。



 ただでさえ今は彼女と気まずい雰囲気なのだ。



 余計な厄介事は避けねばならない。



「何ですか、ご主人様」



 振り返るリルにレイヴァンは「言い直そう」と切り出した。



「マリアンの言うとおり名前で呼ばれれば嬉しく思うかもしれない。 だから俺のことを名前で呼んでくれて構わない。 だが、お前は本当にそれで良いのか?」



 首を傾げるリルに向かって彼は続ける。



「解っていないから言い出したのだろうが、俺を主人と呼べるのは広い世の中で唯一お前だけだ。 それを自ら止めると言うのか?」



「……リルだけ、ですか?」



「そうだ。 ブライトやマリアン、フィーネだって俺のことは名前で呼んでいるだろう?」



「確かにです」



「だが、お前だけは特別な呼び方で俺を呼べるわけだ」



「特別……」



「しかし、それも今日までだな。 明日からはお前も皆と同じだ」



「ちょ、ちょっと待って欲しいです! リル、もう少しご主人様を何て呼ぶか考えたいです!」



「そうか…… それなら、ゆっくりと考えれば良いさ。 俺は何と呼ばれようが構わないからな。 お前の意志に任せる」



「解ったです」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ