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「何だかんだ言うけれど、そういうことに興味がない訳ではないのでしょう? 今だって艶っぽい声を出していたじゃない」
「な、な、何をおっしゃっているのですか!」
「今更隠そうとしても無駄よ。 事情は全部ブライトから聞いたから」
「ブライトさんが!? ……そ、そんな!」
顔面を蒼白にし動揺するマリアンに向かってフィーネは一つ息を吐いてから続ける。
「正確に言うと私がブライトを脅して聞き出したの。 だから、彼を責めるのは間違いよ。 誰だって死にたくはないもの。 他人の情報一つで助かるなら安い取引でしょう?」
「ブライトさんを脅迫したのですか!? 何て酷い! 信じられません!」
「酷くて結構よ。 私は皆と仲良しこよしで居たい訳ではないもの。 何ならこのまま嫌ってくれて構わないわ」
「別にそこまでは……」
「あら、そう。 なら、続けていいかしら? その話を聞いて、最近あなたが悩んでいる事や、レイヴァンとの関係が余所余所しい理由が解ったの。 修道女ってのは本当に面倒臭い生き物ね。 せっかく良い身体しているんだし、やりたいのなら、とっととやっちゃえば良いのよ」
「だ、男女の関係はそのような軽い気持ちで決めることではありません! ましてや女神様に仕える者が他人と交わるなど絶対に許されません!」
「でも、あなたはそれを破ろうとした」
「そ、それは……」
彼が余りにも悲しそうな表情を浮かべたから。
マリアンは続けようとした言葉を咄嗟に飲み込んだ。
何を言ったとしてもそれは言い訳に過ぎない。
修道女として彼の力になれる方法は他にもあったはずなのだ。
全ては自分の弱い心の所為。
彼女は「その通りです」と頷いた。




