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恥ずかしさからくる動悸は未だ収まりそうにないが、扉を閉めたことで少しだけ安堵の息を吐くことが出来たマリアン。
彼女に次の問題が降りかかったのは、それからわずか数秒後の事だった。
その事実に気がついたのは部屋に戻るために着替えようとした時だ。
用意されていた底の浅い籠の中に綺麗に畳んでおいた修道の装束。
その下に隠すように重ねて置いておいた下着が見つからない。
紛失することなどあり得ないはずなのにと籠の下や辺りを見渡すが、整理された屋内でそれらしき物は何一つ見つからなかった。
育った環境の所以か盗難という発想には至らず、小屋から忽然と消えた下着をどう見つけたら良いのか頭を抱えたマリアンは、長考の末に物を粗末にしてはいけないという教えに背き上着だけを着て部屋へ戻る決意をした。
周りに誰もいないことを確認すると濡れた浴衣着を脱ぎ、踝まで隠れるスカートを手にする彼女。
彼女が足を通そうとした時、スカートの中から黒い布がハラリと床に落ちた。
装束の裏地も白い綿布で統一してある。
だとしたら、この黒い布は何だろうと手に取り目の前で広げて見ると、その正体はすぐに分かった。
同時に下着が消失した理由に見当がつきマリアンは思わず容疑者の名を叫んでいた。




