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窓から室内に視線を移すと、卓上にある水差しを見つけた。
近づき手に取るとカップを使わず、そのまま口をつけて水を飲む。
一息つくと思考は自然と明朝の事を考え始めた。
明日はノアの目的を達成するため炭鉱を目指す。
彼の都合上、直接的な関与は出来ないが危険が迫るようなら迷わず助けるつもりだ。
妹は騒ぎ出すだろうが、自分の行為に対しては屁理屈を並べて誤魔化したり言いくるめる自信がある。
問題は第三者の関与してきた時だ。
夕方訪ねたギルドで聞いた話によると、トロールを討伐するためにサウスローからやって来ていたハンターたちが小さな部隊を組み、根城とされる炭鉱に向かったらしい。
彼らがトロール討伐のついでにノアが封印を目指すラヴァワームまで根刮ぎ封じてしまっては、或いは援助されてしまっては、彼は目的を達成できなくなってしまう。
ハンターたちを蹴散らすという外道な方法があるにはあるが、自分たちもハンターの端くれとしてギルドを利用する以上、バレた時の代償が大きすぎる。
同業を襲った事が明るみになったら、あっという間にお尋ね者の仲間入りだ。
出来れば都合良く彼らと出会わずに目的を達成したい。
ただ心配事はそれだけではない。
情報を聞いた時、妙な違和感を感じた。
ギルドに勤める者たちが話す事だから信憑性の問題ではない。
だが、何かが引っかかる。
戦士としての勘が警戒しろと言っている。
明日は万全の状態で臨まなければならない。
そう考えると、今夜の宿は実に御誂え向きではないだろうか。
験を担ぐ行為が好きな訳ではないが、精霊の泉には浸かっておくとしよう。




