~ 73 ~
レイヴァンは夢を見ていた。
最近頻繁に見るようになった忌々しい過去の夢。
白を基調とした騎士の服を身に纏い、剣の師から受け継いだ『守護者』の名を持つ剣を腰に携えた自分が王宮の階段を駆け上がる。
辿り着いた謁見の間の重たい扉を開くと、そこには惨事が待っている。
多くの衛兵たちが既に事切れており、本来なら生気に満ちた広間には血で出来た湖が凪の日の水面のような静けさで広がっている。
抜剣した上で誰の仕業だと叫び周囲に気を配っていると背後に漆黒の悪魔が飛来する。
黒い羽根を持つ相手が軽やかに着地するや否や、こちらから一気に間合いを詰めて斬撃を繰り出す。
レイヴァンはこの夢を何度も見てきた。
結末も知っている。
最後まで見せてくれるなと何度も願った。
だが、途中でやめる事が如何しても出来なかった。
悪魔は不適な笑みを浮かべながら宙を舞い攻撃を軽々とかわした。
一呼吸おいて悪魔の真紅の眼が見開き、黒い剣をかざして襲いかかってくる。
互いの剣は幾度となく激しくぶつかり合った。
互角の勝負かと思われたが、突然自分の剣は大きく弾かれ回転しながら床に突き刺さった。
怯むことなく呪文を詠唱すると、新たな剣が手に生み出される。
悪魔はその光景を見て大いに笑い、納得したように頷くと一層激しく攻め立ててきた。
何度か攻撃を防いでいたが、急に一人の女性が視界に入り、その一瞬の隙を突かれ再び剣を弾かれる。
次の瞬間には悪魔の攻撃目標が女性へと切り替わっていた。
慌てて悪魔を追いかけるが間に合わない。
精一杯手を伸ばし護ろうとするが、悪魔の振るった黒い剣は容赦無く彼女の胸に突き刺さった。
その場に崩れる女性は自分を見つめ必死に口を動かし愛の言葉を伝えようとしている。
自分の叫び声が、彼女の名前が、大広間に響いた。




