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声には出さなかったが、心の中で大いに舌打ちをしたフィーネは、これからどう対処するかを一考し始める。
経験則から、ここまで痛めつけても口を割らない相手は実際に腕を折ったとしても口を割らない確率が極めて高い。
暗殺任務中であれば情報を吐かない相手など殺して捨て置くだけだが、旅仲間である彼を殺すわけにはいかない。
だからと言って明らかに何か知っている相手を解放していては情報は永遠に集まらない。
今回は妙な雰囲気のままでいるレイヴァンとマリアンの二人をどうにかしたくて動いているのだ。
是が非でも情報を聞き出す。
痛めつけても吐かない相手をどう懐柔するか。
そんなのは決まっている。
押してダメなら引いてみろ。
その応用だ。
「これ以上痛めつけても無駄みたいだから尋問は止めるわ」
「尋問って言うか、もはや拷問の域だけどな」
「腕を折る程度のことは私の中では十分に尋問の範囲内よ。 むしろ、これからすることがあなたにとっては拷問になるかもしれないわね」
「こ、今度は何をするつもりなんだよ……」
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。 あなたに簡単な取引を提案するわ。 レイとマリアン、二人の調子が悪い理由を知っているのなら話してくれないかしら? 御礼にあなたが大好きな、とっても気持ち良い事をしてあげるわ」




