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「なんでノアだけお咎め無しなんだよ! あいつだってフィーネの身体にある黒子の数が知りたいって言っていたんだぞ!」
一目散にこの場を去っていったノアの存在が気に食わないブライトは押さえつけられたまま声を荒げたが、フィーネは至って冷静に「睨んだだけで逃げ出すような子が、そんな事を考えるなんて甚だ怪しいわ。 どうせ、あなたの意見でしょう」と返した。
その答えが余りにも的確だったので彼は沈黙し、その様子にほくそ笑んだ彼女は「さて、ここからはどう懲らしめてあげましょうか」と続けた。
「充分謝ったし罰も受けたから、ここらで俺も解放ってことで……」
「確かに罰は与えたわね。 それなら、ここからは楽しい楽しい尋問の時間にしましょうか。 腕を折られたくなかったら正直に答えなさい」
「何でそうなるんだよ! もう十分だろ!?」
半ば開き直った様子で再び声を上げるブライトに対してフィーネはあからさまに不機嫌な調子で「それは被害者である私が決めることよ」と答え、嘆息を漏らしながら掴んでいる腕を強く捻り上げる。
するとブライトは痛みに耐え切れず「ちょっ、これマジで痛いやつ!」と叫び散らした。
「だから、折るって言っているでしょう? こんなのコツさえ掴んでいれば大して力なんか要らないのよ」
「いやいやいや、それは勘弁!」
「だったら大人しく質問に答えなさい」
「わ、わかった! わかりました! だから、これ以上は!」
「最初からそうすれば良いのに。 時間かけさせないで」
「……すんません」
捻り上げられる力が弱まるのと同時に痛みが無くなり安堵しているブライトに向かってフィーネは「昨夕の件について解ったことを話してくれるかしら?」と尋ねた。




