~ 5 ~
「フィーネは何が変だと思う?」
「何って二人が変なんじゃないの? 明らかにお互いを避けているみたいだし」
「……避けている? いやいや、二人は普通に話しているし、戦闘になればレイヴァンは良くマリアンちゃんを庇ってるぞ? あれのどこが避けている状態なんだ?」
「ブライトの言うとおりです! テキトーなことを言うなです!」
「いい加減な事は何一つ言っていないけど? あれに気がつかないなんて、あなたたちって相当ボケているのね」
「ボ、ボケ?」
「とりあえず、私には関係なさそうだし気楽に傍観することにするわ」
「なんだよ、それ。 解ってんなら教えてくれたって良いじゃねぇか」
「あなたたちに教える義理がないから、嫌。 それより、せっかくだから知能の低いバカ二人で仲良く原因を探ってみたら? 次の街に着くまで悪魔退治以外にすること無いんだし、きっと良い暇つぶしになるわよ?」
「……バカ!?」
「リルはバカじゃないです!」
「残念だけど世間的に、あなたはバカ。 バカな猫娘と筋肉バカ」
「フィーネ! 黙って聞いていればバカバカ言い過ぎだ! 確かに俺はバカだけど、そんなに連呼されるほどバカじゃねぇぞ! 流石に頭にきた! 謝ってもらおうか!」
「そんなに怒らないでよ。 ……あ、そうだ。 これ以上何言われても怒らないって約束してくれるなら、この妙な雰囲気をあなたの力だけで払拭できた暁に私がご褒美をあげるってのはどうかしら?」
「……ご褒美? 何くれんだよ」
「それは秘密」
「俺は目の前に人参ぶら下げられないと頑張れない質なの。 くれるったって、どうせ余った精霊石とか大したもんじゃないんだろ? そんなんじゃ、やる気になんてならないね。 とりあえず、まずは俺とリルにきっちりと謝ってもらおうか?」
「しょうがないわねぇ…… 言い直すわ。 これ以上怒らずにこの雰囲気を払拭できたら、私が良いことしてあげる」
「……良いこと?」
「そうよ。 あなたが大好きな、とても良いこと」
「良いこと……」
歩きを止め空を見上げ思案するブライト。
彼の険しい表情は次第に穏やかになっていく。
「フィーネさん。 それって、気持ち的に良いことですか?」
「おそらく肉体的にも良いかもしれないわね」
「肉体的にも! ……解りました、フィーネ様。 男ブライト、そのお約束謹んでお受け致します」
「理解が得られて良かったわ。 それじゃあ、無い脳みそ使って精々頑張りなさいな」
フィーネは醜く崩れた表情をしているブライトの頭を軽く二度叩くと、リルも上手くあしらい二人の下を離れた。
そして先を進むレイヴァンの傍らへと歩み寄る。
「筋肉単純バカに格上げね。 暇つぶしにはもってこいだわ」
突然妙なことを言われ首を傾げる彼に向かって、彼女は野営の準備を提案した。