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早々にパンを食べ終えたリノは出会ったハンターたちを、まるで初見の悪魔を観察するかのような目で見つめた。
容姿が良いのに腹黒い青年の仲間たちは、彼と同じく見れば見るほど奇抜で一癖ある面々に思えてくる。
まずは長い緑髪の女性。
笑顔でマリアンと名乗った彼女は白を基調とした装束を身につけており、見間違うこと無く修道女だと判る。
悪魔が頻繁に出現する山林に、見るからに戦闘能力のない修道女。
この時点で十分に変な修道女だ。
サウスローの街にも教会はあるし、修道院もある。
そこに居る修道士や修道女たちは皆慎ましく街と院の中で生活を送っている。
遣いに出たとしても安全な街道を使っていることだろう。
まともな道がない山林に修道女がいるだけで驚きなのに、彼女は我々の前で更に驚愕の行動を起こした。
大男の負傷した右手を自らの両手で挟み込むと小声で何やら言葉を呟き、瞬く間に怪我を治してしまったのだ。
それは使い手が極めて少ないとされる治癒術だった。
精霊術の中にも傷を癒す術はあり、それを学校の師が使っているところを見た事がある。
それは実に物々しく儀式と言っても過言ではない内容だった。
対して精霊の力を借りずに発動できる純粋な治癒術というのは何と呆気ないことか。
力の源は何なのか、発動する条件があったりするのかなど精霊術を学ぶ者として実に興味深い。
またとない機会にアーシェとシンディの二人はすぐに彼女の下へと詰め寄り、矢継ぎ早に質問を並べていた。
これが腹黒い青年の仲間でなければ自分も話の輪に加わるのだが……




