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「封印の楔を解放した後どうするかだって?」
銀髪の悪魔ベルゼビュートに尋ねられた黒髪の悪魔メフィストフェレス。
彼はその鋭い瞳で質問者を睨みつける。
長い銀髪がかかる切れ長の目は微動だにせず、真意を探ろうとしているのか視線を外そうとする素振りを見せない。
「正確に問うならば、何を企んでいるのかとなるかな」
「そんな話がベルゼさんにとって宝となるのかい?」
「私の考えが正しければね。 だから、君が答えてくれるのなら、こちらとしても封印の楔に関する情報を話そうじゃないか」
「そうだねぇ……」
メフィストフェレスは腕を組み些か誇張した動きで唸ってみせる。
左右に頭を捻ってようやく結論が出たのか組んだ腕を解くと胸の前でポンと手を合わせた。
表情は一変し無邪気な笑顔を見せている。
「別にどうもしないよ。 僕はただ殺戮が楽しいから、そのついでに封印の楔を解放しようとしているだけだもの。 その後のことは蘇った王様にでも聞くよ」
「……なるほど」
「さぁ、僕は質問に答えたよ。 だから、今度はベルゼさんが情報を話す番だ。 封印の楔について知っていることを教えてくれないかな?」
「勿論だとも」
快諾したベルゼビュートは一口酒を飲んでから話し始める。
「フェレス君は人間が嫌いだと言うけれど、彼らの生態は実に興味深いんだ」
「僕は時間が無いって言っているでしょ。 要点だけ話してくれないかな。 それに、さっきから僕の呼び方をあれこれ変えないでくれる? 気分が悪いよ」
「君の名前は長いから何て呼ぼうか悩ましくてね」
「名前のことは良いから、早く話して」
「名前について語り合うのも一興だと思うのだけれど?」
「全く思わない」
「それは実に残念だ。 なら続きを話そうか。 人間の面白い生態の一つに彼らは非常に熱心に記録を残すことが挙げられる」
「それ本当に封印の楔に関する話なの?」
「当然さ。 取り敢えず一言話す度に横槍を入れるのを止めてもらえるかな? 都度話の腰を折られていては進まないよ。 反論があるなら最後にまとめて聞こうじゃないか」
「確かに、それはそうだ」
頷いたメフィストフェレスは椅子に背を預けると口を閉じた。




