~ 41 ~
「それは……」
質問に答えようとするノアは横目で妹を見た。
彼女を意識している仕草であることは一目瞭然である。
ブライトは疑問に思い「どうかしたのか」と尋ねようとするが、彼はそれよりも早く続きを口にする。
「ラヴァワームの封印です」
「……ラヴァワーム? 封印ということは悪魔か? それは、いったいどんな悪魔なんだ?」
ブライトが首を傾げている間に近くでは次々と驚愕の声が沸き上がった。
「ラヴァワームですって!? そんなのお兄ちゃんが相手にできるわけないじゃない! 無理よ、絶対に無理! 無茶にも程があるわ!」と妹のリノが切り出すと、後ろに控えるシンディは「最低限、水の精霊術が使えませんと退治することは難しいと考えます」と、丁寧な口調で続ける。
もう一人の少女アーシェは「何たって全身が溶岩に覆われているから、めちゃくちゃ熱いもんな。 あたいでも素手で殴るのは躊躇うよ」と頷いている。
「ワームってことは、ミミズってことだろ? ミミズがそんなに脅威なのか?」
聞き覚えのない悪魔の名前にブライトが疑問を口にすると、リノは兄に向けていた鋭い視線を移して質問者を見据える。
「まさかとは思うけど、あなたハンター紛いの旅人のくせにラヴァワームを知らないとか言うつもりじゃないでしょうね!」
その語気は強く、明らかに侮蔑の感情が垣間見えたが、ブライトはどこ吹く風で「おっ、察しが良いな。 そのとおりだ」と呑気に笑った。
「信じられない! それで最上級悪魔を討とうとだなんて…… あなたたちは愚者だったみたいね。 道中は十二分に注意して進むことね」
「心配どうも。 でも、こう見えて俺たちはそれなりに経験を積んでるんだぜ? そのワームのことは知らないけど、たぶん何とかやれる。 ってことで、ノア。 俺たちが協力してやるから、そのワームを封印しに行こうぜ」




